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  • 2023/06/30 掲載

大成果の出るAI活用の必須ポイント、「ヤオコー」が発注時間“85%削減”できたワケ

【連載】現役サプライチェイナーが読み解く経済ニュース

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さまざまな実務でAIが活用されていますが、需要予測もその一大領域として、多くの業界でAI活用の取り組みが始まっています。しかしPoC(概念実証)止まりで、なかなか実務活用まで進めないという企業も少なくありません。その理由として、(1)機械学習KPIとビジネスKPIの間にギャップがある、(2)AIにどこまで任せれば良いかわからない、などが挙げられます(図1)。本稿では、埼玉県を中心にスーパーマーケットを展開するヤオコーのAI活用事例を紹介しつつ、需要予測AIを導入する際にPoCの死の谷を越えるためのポイントを解説します。
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図1:なぜAIを活用する際にPoCで取り組みが止まってしまうのか
(出典:筆者作成)

ヤオコーの小売DX、発注業務が「3時間→25分」に激減

 2023年3月に日立グループのWebサイトに掲載された記事で、埼玉県を中心にスーパーマーケットを展開しているヤオコーが取り組むDXの一環として、需要予測活用の「自動発注システム」を導入したと発表がありました。季節や曜日、特売、店舗周辺の環境(おそらくイベントなど)を考慮して需要を予測し、在庫量や廃棄量なども踏まえ、AIが発注推奨量を提示するというものです。

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ヤオコーが発注業務の時間を激減できたAI活用の成果とは
(Photo:A.Sontaya/Shutterstock.com)

 これにより、熟練担当者の暗黙知に依存していた属人的な発注オペレーションが、ある程度標準化され、発注時間も3時間から25分へと約85%短縮。近年、関心が高まっている食品廃棄ロスも5~15%削減するなど、大きな効果を挙げたそうです。

 本連載においても過去に、新潟県を中心に展開しているスーパーマーケット「原信」や、群馬発の「フレッセイ」における需要予測AIの導入効果を取り上げましたが、その事例でも発注時間が半分に短縮されるといった効果がありました。これらの事例から、小売業における需要予測AIの活用メリットは以下の2点が挙げられると思います。

  • 発注業務レベルの標準化
  • 発注の自動化による業務効率化

 これが冒頭に挙げた、ビジネスKPI、つまりはビジネスにおいてどんな価値を創出できるかに該当します。需要予測にAIを活用する際は、こうしたビジネス目線での目的を最初に明確にし、社内で広く合意しておくことが極めて重要です。

PoCではまる落とし穴、成果を出すための「必須ポイント」

 需要予測というと、その精度、つまりは誤差の程度がフォーカスされやすいと感じます。特にAIを使った需要予測は、RMSE(Root Mean Square Error)やMAE(Mean Absolute Error)、MAPE(Mean Absolute Percentage Error)など、誤差の程度を表す指標で評価されるのが一般的です。

 しかし、投資判断を行うマネジメント層に対し、たとえば「RMSEが1000ポイント改善しました」などと報告しても、実務活用にGOサインは出ないでしょう。それがどれだけのビジネス価値を生み出すかが伝わらないからです。

 これが冒頭で機械学習KPIと書いたもので、さきほど例示したビジネスKPIとは異なることがわかるかと思います。需要予測AIをPoCから実務活用に進め、実際に成果を創出するためには、機械学習KPIをビジネスKPIに変換する必要があるのです。

 ここで整理しておくべきなのが、需要予測、在庫計画、発注の違いです。

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次のページでは、需要予測・在庫計画・発注の関係を整理しつつ、AI活用に必須となるAIと人の役割分担などについて解説します
【次ページ】需要予測・在庫計画・発注の違い
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