- 2010/03/02 掲載
【民主党藤末氏コラム】民主党政策集INDEXの実現へ向けて(1) 「国内CDM」で中小企業も活性化!
連載『ふじすえ健三のビジネス+IT潮流』
実現に至っていない「民主党政策集INDEX2009」
そこで、1)環境、2)イノベーション、3)グローバリゼーション、という3つの観点から、現状と今後の打ち手につき述べさせていただきたい。
CO2排出権取引と中小企業
環境問題については、政権交代直後に鳩山首相が提唱した「温室効果ガスを2020年までに1990年比で25%削減する」という目標達成がとりわけ大きな課題だ。そのことに関連して、「地球温暖化対策基本法」が、3月上旬にも国会で審議されることとなった。その中の項目に、「国内排出権取引制度の創設」というものがあり、実は意外にも中小企業に好影響を及ぼす可能性がある。順を追って説明したい。そもそも、CO2排出権取引については、国外と国内の2つのケースを分けて考える必要がある。まず、国外との関係については、日本のCO2排出抑制は過度に進んでおり、海外との関係で言えば「発展途上国から買うだけ」で日本には特にメリットがないこととなる。次に、国内のみで限定して考えると、大企業が中小企業から排出権を購入することにより、お互いにメリットをもたらす可能性がある。
中小企業等からのCO2排出量は約7,600万トンあり、産業部門全体の約6分の1を占める。また、東京都の調査によると、都内の産業・業務部門から排出されるCO2の6割が中小規模事業所(約69万事業所)からとなっている 。この小口排出者による温暖化対策を促進する手段として期待されるのが「国内CDM」である。
「国内CDM」とは?
CDMとは「Clean Development Mechanism(クリーン開発メカニズム)」の略であり、もともとは、先進国が発展途上国に温暖化対策を行い、それによって効果が出たと認められた際にその効果を自分の国の排出削減目標達成に用いることができる、という仕組みから始まったものだ。わが国では平成20年10月から、国内排出量取引制度として政府の「排出量取引の国内統合市場の試行的実施」が行われている。また、東京都の「温室効果ガス排出総量削減義務と排出量取引制度」が平成22年度から始まる予定である。同制度は、都内で一定以上のエネルギーを消費するすべての企業等に参加を義務づけ、削減義務を課するものであるため、キャップ&トレード方式の排出量取引制度といえる。こうした動きは、削減義務を達成するためのクレジット需要が大口排出者などにおいて今後大幅に増加する可能性を示唆するものである。
具体的なスキーム
中小企業の排出削減を、第3者機関が認証し「国内クレジット」として発行するのがこの制度のキモである。そのクレジットは、大企業が技術・資金を提供する方法で中小企業と共同実施すれば、大企業の貢献分としてもカウントされるのだ。富士経済のレポートによると、CDMなどを使った小口クレジットの国内取引市場は平成20年時点で32.5億円であるが、平成21年には33億円、平成32(2020)年には4倍以上の145億円に拡大すると予想されている 。
国内CDMが解決してくれる中小企業の悩み
なぜ中小企業では、CO2削減が進まないのだろうか。省エネのための2007年1月の政府のアンケート調査によると、「設備投資のための資金調達が難しい」、「情報が乏しく、導入機器にどのようなものがあるかわからない」ことなどが挙げられている。やはり、中小企業の体力では、機動的に資金調達する力、及び設備専門員を置く余力が限られていることが見て取れる。中小企業の排出削減のためには、機器の導入と、そのための技術的・金融的な支援などが重要な要素であることが分かるだろう。こうした支援を大企業等が担い得るスキームとして、国内CDMを利用出来るのだ。
コスト低減が今後の課題に
このように、大きな可能性を秘めている国内CDMだが、課題も多い。仮に小口クレジット100トンを1トンあたり2,000円で売却したとすると、20万円の収入になる。しかし、その認定コストはまず事業計画審査で50~100万円、さらに削減実績審査で10~20万円かかってしまう(注1)。現状では中小企業にとってのメリットが少ないといわざるを得ないのだ。政権交代後、わが国が提唱してきた「温室効果ガスを2020年までに1990年比で25%削減する」という目標を達成するには、中小企業といった小口排出者からの排出削減も重要になってくる。現在わが国は、毎年1,000億円以上かけて海外の排出権を購入している(注2)。こうした莫大な資金を、なんとしても国内に循環させたい。国内CDMについては、まずそのシステム簡素化が最優先の課題であり、早急に着手する所存だ。
イノベーション、グローバリゼーションについてはまた次回以降述べさせていただきたい。
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