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  • 2012/08/29 掲載

【ITビジネスと孫氏の兵法(5)】経営学と孫子の兵法

民主党参議院議員 藤末健三 ・フューチャー・デザイン・ラボ 後藤洋平

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「孫子の兵法」は、「戦略論の教科書」といわれている。「孫子の兵法」以来、人は、最小限の資源投資で戦いに勝つための戦略を研究してきた。

戦略論の進化

 私は、経営学者として高名なドラッカーやマイケル・ポーターの論理のほとんどは、「孫子の兵法」を土台に導かれると考えている。現代の経営戦略の体系は、兵法や軍事の研究を踏まえて築かれたものである。軍事、戦争では、兵を養い、兵器を作り、国と国が領土を奪い合った。ビジネス、経営では、社員を養成し、設備投資を行って、企業と企業が市場を奪い合っている。このように現在は、国と国の戦国時代ではなく、企業と企業の戦国時代だ。

 「兵は国の大事にして・・」とは、孫子の兵法の一番初めに来る言葉で、非常に大きな意義がある。戦争のように命を奪い合う戦いではないが、経営における失敗は、経営者・社員の家族、サービス・商品を必要としている顧客の生活にも負の影響を与える。投資家・株主の期待を裏切ることにもなる。では、経営者がいつも冷静に客観的に深く考えられているかというと、これが意外とできていない。特に、新たな「開戦」を意味する新規事業のスタート時は慎重にならねばならないはずが、直感や流れに任せてしまう。企業経営の難しさだ。

 孫子は、主観的な分析、感情や意地、計画の不足、面子などに経営(戦争)は、影響されてはいけない、と説く。根性論で片付けてはいないだろうか。他人や環境のせいにしたり、夢や名誉といった社会的な評価にばかり、捕らわれていないだろうか。「利に合わざれば而(すなわ)ち止む」という言葉がある。「利益がないことはきちんと止める」という、日本人経営者が最も弱いところを、指摘している。

 戦争は国家を滅亡の危機にさらす危険がある。よって「国を全うするを上と為し、国を破るは之に次ぐ」とし、「戦わずして勝つ」ことが最善であるという。ビジネス(特に新規ビジネス)においては、多くの投資をして競合企業と争うよりも、競合企業を味方につける、もしくは、競合企業のいないマーケットで戦うことが最善であるということだ。競合がおらず争いがない市場、つまり新しい市場を創るべし。「ブルーオーシャン戦略」を示しており、至言である。


 他にも、「己を知り、敵を知れば百戦危うからず」という有名な言葉は、経営戦略においても基本中の基本である。己(自社)と敵(ライバル企業だけでなく、顧客を含む)を知れば、必ず負けない、というのは間違いない。

 私はこれまで色々なベンチャー企業経営者に会ってきたが、敵がどこにいるのかわからないでいる場合が多いように感じる。敵は、突然考えもしないところから出てくることが多い。また、己をきちんと知っている経営者も限りなく少ない。

 私自身、自分を客観的に理解できているかと言われると、自信がない。感覚的に、すべての人は自分や自分の組織を3割アップくらいに過大評価している。逆にいうと自己評価の3割引の力しかないと逆算したうえで行動するのがちょうどいい、そう、私はいつも考えるようにしている。

 また兵法では、「兵は拙速なるを聞くも、いまだ巧久なるを睹ざるなり」とスピード重視の戦争を指摘している箇所があり、現代のスピード重視の経営と重なる。スティーブン・L・ゴールドマン 教授がアジル・コンペティション(迅速な競争)という概念を提示したが、すでに「孫子の兵法」において2500年前に論じられていたのだ。

 「孫子の兵法」が単なる軍事教法ではなく、経営書としても価値を持つのは、特定の目的のために組織を運営するという普遍的な活動に対しての洞察を行っているからであろう。

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