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- 2012/12/26 掲載
【ITビジネスと孫氏の兵法(9)】理想の勝利の形は「ノーサプライズ」
民主党 藤末健三・フューチャー・デザイン・ラボ 後藤洋平
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<原文>
古えの所謂善く戦う者は、勝ち易きに勝つ者なり。故に善く戦う者の勝つや、智名も無く、勇功も無し。故に其の戦い勝ちてたがわず。(4.2)
<対訳>
昔の戦いに巧みと言われた人は、普通の人では見分けのつかない勝ちやすい機会をとらえて、そこで打ち勝ったものである。だから、戦いに巧みな人が勝った場合には、知謀優れた名誉もなければ、武勇優れた手柄もない。そこで、彼が戦争をして打ち勝つことは間違いない。
こうした事業成功物語が語られる際に、必ずついて回るものが、華やかな成功者、逆境を乗り越えた武勇伝のイメージだ。伝説の営業マンや感動的な開発秘話、社長の先見の明が、後の大企業を築き上げる、英雄譚は数限りなく語られている。
企業が組織であり、感情を持った人と人が、一緒に事業を創り上げていく以上は、単なる組織的な形だけでなく、精神面、感情面でも共同体を統合することが必要である。そのための共通の物語は必要であり、また苦境にあっても超人的な働きを発揮できないようでは、確かにその組織の成功は難しい。
しかし、このような武勇伝が好まれる背景には、事業を興して成功に導くことが勇気と元気に裏付けられた、マッチョで男性的な、雄々しい冒険行為であるという幻想があることを見逃すわけにはいかない。孫子はこのような武勇伝が残るような勝利は、理想の勝利ではないと断言している。
これまで述べた通り、孫子流の戦略思考の理想は、「成功する目算があるうえで、浪費を最小限に抑える形で計画を立て、必勝の形を考えぬいたうえでの勝利」である。
そのような理想の勝利を実現させるためには誰が見ても明らかに平凡なアイデアや風潮をもとにしての展開では成功はおぼつかない。自ら考え抜いてオリジナリティを追求するべきであるし、誰も気づいていない徴候を察知して成功確率の高さを検証し、人知れず決断することが必要になる。
その結果、創り上げられた事業そのものだけを見ると、あたかも何事も無い成功であったかのごとく展開する、ということが理想形なのである。 好んで苦境の道を選ぶことはまったく必要ないどころか、その道を選ぶということは、往々にして、もはや敗北が目前なのである。むしろ、武勇伝はあとで作られれば十分なのである。
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