- 会員限定
- 2018/03/12 掲載
白鶴、キッコーマン、三桜が語る、ノウハウを未来につなげる人財育成の方法
老舗酒造メーカー白鶴の「品質に対するこだわり」
お酒好きなら一度は味わった経験がある日本酒「白鶴」の醸造元である白鶴酒造は、神戸の東灘で1743年に創業した。徳川吉宗の時代から続く、酒造の老舗として知られている。同社の純米大吟醸「天空」はシンボリック商品として技術のすべてを注ぎ込んでいる。そんな同社は知識や技術を伝承し、維持・向上していくために人財(人材)育成制度の一環として、営業員も含めて酒類の知識に関する基礎・初級・中級研修を段階的に実施している。さらにお酒の原料である「お米の田植えや稲刈り」など実技型の教育まで行うという。
「原料であるお米の品質は農産物である以上、毎年変化するのが当たり前で、同じように醸造しても同じお酒はできない。毎年の変化を受け入れて醸造する技術が求められる。そして最終的には目標としたお酒の品質になっていることを『きき酒』で確認する。その後も出来上がったお酒をタンクから別のタンクに移すたびに異常がないかどうかを『きき酒』する。当然、ボトリングの後にも品質に間違いないことを確認する。このように、製品化されるまでには、人による『きき酒』で何度も細かくチェックされている」(櫻井氏)
そして商品を消費者が口にするまでの品質を担保できるように商品の設計を行う。つまり「飲まれる瞬間の品質」が重要なポイントになる。
一方、外部にも目を向け、さまざまなコンテストに参加して他社のお酒と比べることで技術の研鑽をしており、さらに、定期的に市場で入手した自社・他社商品を調査して、市場に現存する商品の品質を確認している。
「生産工程は、醸造とボトリングがメインになる。ボトリングは自動化が進んでいるが、醸造については複雑な要素が多くデータの可視化は難しいため、人の感性が求められる部分がある。微生物相手であり細かさも必要だが、大雑把にとらえることも大切だ」(櫻井氏)
現在、同社には5人の杜氏が在籍しており、すべて社員である。技術屋を育てるためには実地で鍛えることが大事という。専門性を持つことと全体を見ることの「相反する視点」を身に付けることも幹部候補には求めているそうだ。
また、昔の蔵は女人禁制だったが、現在は女性が活躍する場になっている。中には人員の1/4以上が女性という蔵もあるという。また、開発業務や味わいの設計業務においても女性ならではの感性が役立っていると説明した。
キッコーマンの“おいしい記憶”を生み出す力はチャレンジ精神にあり
そのような状況で、「ずっと守り続けるべき品質と、変えなければいけない品質があるという問題意識を持っている」と語るのは、同社 取締役常務執行役員 ドライ営業本部長 兼 プロダクト・マネジャー室長の三宅宏氏だ。
もちろん他社と同様に、同グループもグローバル化の波は避けられない。醤油の生産拠点は国内だけなく、米国、中国、シンガポール、オランダなど、世界に広がっており、グローバル化の進展に伴い、品質の管理と人材の育成をどう進めるべきかという課題もあるそうだ。
【次ページ】三桜工業は設備造りの内製化と検査工程の自動化を推進
関連コンテンツ
関連コンテンツ
PR
PR
PR