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都市ガス小売りの全面自由化が4月1日にスタートし、一般家庭が購入先を選べるようになって2カ月近くが過ぎた。近畿では関西電力が大阪ガスに価格競争を挑み、競争が激化しているが、他地域では購入先切り替えの動きが鈍く、盛り上がりに欠けている。一般家庭向けの新規参入も電力大手とLP(液化石油)ガス企業にとどまり、大都市圏以外では新規参入企業が1社もない無風状態だ。新たな市場を切り開くはずの都市ガス自由化は、課題を積み残したままのスタートとなった。
関西電力と大阪ガスが激突、近畿だけが大激戦区に
「ガスはもちろん、電気もいっしょに大阪ガス」「関電ガスで暮らしの力になりたい」。年明けから近畿のテレビでは、大阪ガスと関西電力のCMが連日登場し、ガス自由化に向けた激しいPR合戦が繰り広げられた。
関西電力は1年前の電力自由化から1年余りで大阪ガスに32万件の顧客を奪われた。ガス自由化は奪われた顧客を取り返す絶好の機会。大阪ガスより安い料金を打ち出し、一気にスパートをかけている。
販売促進と保安面でLPガス大手の岩谷産業と提携、「関電ガスサポートショップ」を旗艦店となる大阪市中央区の大阪本町店をはじめ、近畿一円に80店開設した。配置されたスタッフは約300人。連日、営業攻勢をかけて顧客奪回に力を入れている。
関西電力は2016年末、ガスと電気のセットなら標準家庭で大阪ガスより年最大8%安くなるプランを発表した。大阪ガスがこれに対抗し、最大7.5%のセット料金引き下げを打ち出すと、今度は最大13%まで下げ幅を拡大している。
初年度目標は、大阪ガスが電力自由化の際に掲げたのと同じ20万件。関西電力は「利用者のニーズを踏まえて料金を見直した」と胸を張る。
これに対し、大阪ガスは料金を引き下げた新プランとともに、給湯器の故障など住まいのトラブルに無料で駆けつける新サービスを始めた。価格競争ではなく、利用者に密着したきめ細かなサービスで対抗しようとしているわけだ。大阪ガスは「サービス強化で安心と信頼を高めたい」と意気込んでいる。
関西電力は福井県の高浜原発4号機が再稼働したほか、3号機も近く再稼働する。これに伴い、電気料金をさらに引き下げる方針で、電気とガスのセット料金も安くする見通し。大阪ガスもその動向を見ながら、料金を再検討するとしており、両社の競争はさらに熱を帯びてきた。
関東は7月の東京電力EP参入からが本番
関東は台風の目となる東京電力エナジーパートナー(EP)が7月から参入する予定。東電EPと提携するLPガス大手の日本瓦斯グループ、東電EPから都市ガスの卸供給を受けるレモンガス、河原実業が、ひと足早く東京ガスに挑んでいる。
このうち、日本瓦斯は初年度目標の11万件を22万件に倍増させた。日本瓦斯は「4月12日現在で獲得した利用者は約2万件。このペースで利用者を獲得していきたい」と鼻息が荒い。受けて立つ東京ガスはLPガスのサイサンと提携、サイサンが先兵となって日本瓦斯グループの地盤へ切り込む構えだ。
東電EPは東京ガスより最大8%安い料金プランを発表した。ガス機器の無料修理サービスも始めることにしており、「価格だけでなく付帯サービスでも顧客のニーズをつかみたい」としている。
これに対し、東京ガスは料金引き下げでの対抗を予定していないが「細かいサービスの拡充などについては随時検討していきたい」と語った。
中部地方は中部電力と東邦ガス、北九州では九州電力と西部ガスが激突している。ともに電力大手が価格面で勝負に出たのに対し、都市ガス大手はサービス内容で対抗している。
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