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  • 2023/10/24 掲載

米国立研究所が認めた「水素生成技術」とは?小型設備で安く大量生産、ついに普及目前か

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クリーンな燃料として世界から注目されている水素だが、高いコストやインフラ整備といった課題が実用化促進を阻んでいる。だがこれらの課題を解決し、大掛かりな設備なしで安価な水素が大量生産できるという、米国立研究所からスピンオフで生まれたベンチャー企業が提供する技術がある。米カリフォルニア州ではすでにこの技術を活用した実証実験が始まっており、成功すれば水素供給網が一気に拡大するかもしれない。「日本でも非常に役立つ」という水素普及のカギを握る技術とは。
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この技術は水素普及のゲームチェンジャーとなるのか?
(Photo/Shutterstock.com)

米エネルギー省が認めた水素生成技術

 米ワシントン州に本社を置くSTARS Technology(以下、STARS)は、2016年に社長兼CTO(Chief Technology Officer:最高技術責任者)であるボブ・ウィジェン氏がパシフィックノースウェスト国立研究所(PNNL)から独立するかたちで設立された。同社の目的は、交通、産業用に低コストの水素を供給すること。

 同社の特徴は、「ケミカルプロセスチップ」と呼ばれる集約的ケミカルリアクター(化学反応器)をマイクロサイズで製造する手法にある。ウィジェン氏はPNNL時代からこの研究に取り組み、その斬新な技術により、これまでに5,000万ドルの投資を受けてきた。米エネルギー省がこの技術の実用化のため独立を促し、起業に至った経緯がある。

生成AIで1分にまとめた動画
 この技術を用いて安価な水素を小型の設備で製造するのが、同社の現在のビジネスモデルだ。ケミカルプロセスチップには「アンモニア、メタノールをはじめ、さまざまな化学物質を合成できる可能性があり、実用化の応用は幅広い」とウィジェン氏は語る。

 現在、水素生成に注力しているのは、今後数十年で水素需要が劇的に伸び、脱炭素の切り札となる可能性にSTARSは早くから注目していたからだ。

 特に交通の分野において、現在GHG(地球温暖化効果ガス)のおよそ16%が自動車などの排出ガスから発生するものと考えられている。化石燃料による車の内燃機関を、水素を使ったFCEV(燃料電池車両)に置き換えることで、GHGを大きく削減できる。現在開発中の産業用大型リアクターが完成すれば、産業から排出されるGHGも削減できることになる。

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世界の温室効果ガスの排出割合。「電気」27%、「建物」7%、「産業」31%、「交通機関」16%、「農業」19%
(データ出典:STARS)

総額80億ドルの補助金も後押し、注目の計画とは

 また、米政府による補助金の存在も、STARSのような企業の発展に貢献している。米政府が打ち出しているのは、総額80億ドルの地域水素ハブ建設に対する補助金だ。STARSは米北西部、ワシントン州周辺での水素ハブ建設計画に加担しているが、それ以上に注目されているのが米ガス会社SCG(サザンカリフォルニアガス)と提携した「エンジェルスリンク計画」への参画だ。


 カリフォルニア州は大気汚染防止に対して米国で最も先鋭的な政策をとる州であり、そこを拠点とする2つの大規模ガス会社(SCGとPG&E)はどちらも水素のエネルギー源としての導入に積極的だ。

 SCGが打ち出すエンジェルスリンク計画とは、既存のガスパイプラインを使って水素を供給し、産業と交通のエネルギー転換を促す事業だ。まず手始めに南カリフォルニア一帯の公共交通をFCEVに置換していく計画を実行中で、STARSの技術が大きな役割を担う。 【次ページ】何がそんなに画期的?「日本のような場所」で超役立つ理由
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