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  • 2016/10/14 掲載

大阪ガスが取り組む、IoTを活用した「エネファーム」の新たなバリュー創出

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IoTをビジネスに活用し、新たな価値を創造する企業が登場し始めている。その動きは、安価で拡張性に優れるクラウド基盤の台頭によってさらに加速している。AWSに関するさまざまな事例、最新技術等を紹介するカンファレンス「AWS Summit Tokyo 2016」に、大阪ガス リビング事業部 商品技術開発部の八木 政彦氏が登壇。同社の家庭用燃料電池「エネファーム」のIoTを活用した新サービスの構築について語った。

家庭用燃料電池「エネファーム」のIoTの取り組み

 大阪ガスでは、2016年4月から、インターネットに接続できる家庭用燃料電池「エネファーム」を発売した。これは、インターネットに接続することで、発電見守りや、メンテナンスにおける訪問前故障診断を行うほか、顧客はスマホアプリを通じて省エネナビゲーション、スマートフォンからの機器の遠隔操作といった新しいサービスを提供するものだ。

photo
大阪ガス
リビング事業部 商品技術開発部
八木 政彦氏

 エネファームが接続するIoT基盤は、AWSを用いて設計、開発された。サービスの全体像について八木氏は以下のように語る。

「エネファームが台所の給湯リモコンとインターネット接続する。これにより、故障内容がAWSを通じてコールセンターに通知される。コールセンターでは、既存の仕組みを使って故障を特定し、メンテナンス店に通知。メンテナンス店ではAWSに保存された故障内容から事前診断を行い、原因を特定することができる」(八木氏)

画像
エネファームを通じて、顧客と大阪ガスのさまざまなサービスがつながる。IoT基盤であるAWS上には個人情報は存在しない仕組みだ

 エネファームは、都市ガス中の水素と、空気中の酸素との化学反応により発電を行う燃料電池のこと。エネルギー利用効率が高く、発電所による集中型の発電から、使う場所での分散型発電を可能にするコージェネレーションシステムだ。八木氏によると、国の「エネルギー基本計画」において「2030年に、530万台の普及を目指している」という。

 では、エネファームになぜIoTを活用することになったのか。同社では、10年間修理費が無償の「フルメンテサポート」を提供しているが、これまでも、メンテナンス業務をIoTで効率化することはできないかという課題があった。

<課題>
・故障診断には専門性の高い解析スキルが必要
・故障の可能性ある複数の部品を、あらかじめ予備して現場に訪問したい
・部品交換後、起動から発電開始まで時間がかかるため現場待機の必要がある

 こうした課題に対し、以前からインターネットを用いた遠隔監視について検討がされてきたが、「家庭用ではコストが合わないため」実現できなかった。

「こうした状況が、スマホ普及による通信部品のコスト低下や、一般家庭への無線LANの普及、クラウドサービスの拡大によるサーバーコストの低減といった外部環境の変化により変わり、実現の可能性が高まってきた」(八木氏)

 開発体制は、機器開発は、機器メーカーなどからOEM供給を受け、サーバーにはAWSを採用、システム開発は大阪ガスグループの子会社であるオージス技研が担当した。八木氏によると、「開発当初は、IoTプラットフォームである『AWS IoT』がなかったことから、すべてスクラッチで開発した」ということだ。

「コスト」と「実績」の2点が決め手

 八木氏は、AWS選定の理由として、「エネファーム普及拡大に伴い、サーバー環境の増強が必要」「台数増加は製品の販売状況によるため、予測困難」の2点を挙げた。サーバーを増強する際の予測が困難なことから、必要なときに、必要なだけ拡張できるクラウド基盤の採用に至ったというわけだ。その中で、AWS採用の決め手となったのが、「コスト」と「実績」の2点だ。

 また、同社の「クラウドサービス利用指針」では、「クラウドに保管するデータの保護」と「事業継続性」を定めており、その点については「保管データを最小限にし、バックアップをすべて既存システム側に補完する」ことで対応した。

 そして、八木氏は、社内の既存システムとの連携について、利便性とセキュリティの確保というポイントを挙げた。

「社員は、既存の社内の認証基盤を経由して、AWSダイレクトコネクトを経由して、データにアクセスする。これにより、社員はクラウド、オンプレを意識せずに利用できる利便性を確保した。また、限られた環境の、限られた端末からしかアクセスできない仕組みにすることでセキュリティを担保した」(八木氏)

【次ページ】 IoTの普及、「一般家庭に広がるには時間がかかる」
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