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- 2023/06/07 掲載
「日本は第二のテスラ作れる」再エネ活用で注目のシリコンバレー企業CEOが期待するワケ
Seizo Trend創刊記念インタビュー
エネルギーに「データ管理」が必須なワケ
インタートラスト・テクノロジーズはエネルギー業界におけるデータのセキュリティ、管理を主に行う企業です。ここで言うエネルギーとは再エネで得られる電力が主で、EaaS(エネルギー・アズ・ア・サービス)を実現するうえでデータ管理は欠かせないものです。「EaaSとは何か」という質問を受けることも多いのですが、私の考えでは再エネを余すことなく有効に使い切ること、そして発電する側がよりマージン(利幅)の高いサービスを提供できるようになることを示します。
私がデータ管理の重要性を認識したのは1990年代のことです。インターネットが普及し始め、音楽や映像なども使用デバイスに大きな進歩が見られました。音楽で言うとCDからMP3のような容量の大きなものに切り替わり、そこからいずれはインターネットを通したストリーミングが中心になるだろうと予想しました。
実際に現在は映像、音楽はストリーミングが中心となり、デジタル通貨なども登場し、多くのものがデジタルへと移行しています。こうした時代に対応していくにはデータを安全かつ効率的に管理することが不可欠となるのです。
音楽や映像は、かつては制作会社がCDやDVDなどを作り、ユーザーに提供していたのが、オンラインに移行しデジタル化されています。その時必要となるのは著作権を守り、不正ダウンロードなどを防いで公正な取引が行える環境を作る、すなわちデジタルルールを確立することです。
私はこうした音楽や映像のストリーミングに関するデータ管理、主にアプリストアのセキュリティ関連を行っていましたが、その時にいずれはエネルギーの流通にも同様のことが起きると感じました。
本格的にエネルギーに参入したのは2010年のことです。我々が持つデータの保全、管理技術が音楽や映像だけではなく他の分野、特にエネルギーにも利用できるのではないか、特に再エネの最適な流通にはデータ管理は欠かせないものになると考えました。
転換点は東日本大震災、再エネは従来の構造が通用しない
翌年の2011年3月、私は東京にいました。成田空港に到着し、東京都内に移動しようとしていた時、東日本大震災が起きて成田エクスプレスが止まってしまったのです。我々は列車から降りて徒歩で移動することになりました。その後、日本で起きたエネルギー不足はみなさんも記憶に新しいことでしょう。このときの福島の教訓から、ドイツは原子力発電所を停止させ再エネ利用に大きく舵を切りました。これが1つの大きな転換点だったと思います。デジタルテクノロジーがエネルギーに利用できることに大きく近づいたのです。
従来のエネルギー産業は、ジェネレーター(発電機)、ディストリビューター(流通・配送業者)、コンシューマー(消費者)という3層構造でした。ジェネレーターは電力を作り、それをディストリビューターが分配し、コンシューマーの元へ届けるというハブアンドスポーク構造です。
しかし再エネになると、誰でもソーラーパネルなどがあれば電力を作り出すことができます。いわばP2P(ポイント・ツー・ポイント)になります。コンシューマーが直接ジェネレーターにコミュニケーションを取れるようになるのです。
そうなるとどこにどれだけの電力があり、どこで需要が生まれているのかをデータによって分析、調整し、データドリブンな分配を行う必要性が生まれます。しかもそれは自動化され、効率的かつコントロールされたものでなければなりません。
インタートラストはドイツの電力会社RWEと提携してデータ管理ソフトを提供するようになりましたが、ドイツでは再エネの発展とそれに伴う規制緩和、そしてIoTの登場とさまざまなことが進行していました。こうしたことを一手にまとめる完全循環型情報システムが必要とされていたのです。 【次ページ】再エネ時代、エネルギー業界のビジネスモデルはこう変わる
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