• 2020/10/05 掲載

アンガーマネジメントとは?必要性と具体的方法、怒りの仕組みと種類、メカニズム解説

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突発的に発生する「怒り」の感情。コントロールできずにいると、対人関係に大きな問題を起こしかねない。しかし、ストレスフルな現代社会において、怒りの感情を避けて通ることは難しいだろう。そうした中、怒りをコントロールする「アンガーマネジメント」が注目を集めている。本稿では、アンガーマネジメントの概要とその効果、具体的な実践方法について解説する。
企画:ビジネス+IT編集部、構成・監修:時田信太朗

企画:ビジネス+IT編集部、構成・監修:時田信太朗

テック系編集者/メディア・コンサルタント
外資系ITベンダーでエンジニアを経てSBクリエイティブで編集記者、スマートキャンプでボクシル編集長を歴任。2019年からフリーランスで活動。メディアコンサルタントとしてメディア企画プロデュース・運営に携わる。

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怒りをコントロールすることで周囲との問題の解決やコミュニケーションの改善を図ることができる
(Photo/Getty Images)

アンガーマネジメントとは

 アンガーマネジメントとは、認知行動療法をベースとした技法の1つで、特に「怒り」の感情に着目して問題解決を図るスキルのことである。その場にふさわしい感情表現を行うことで円滑な対人関係や、他社との相互理解を深めることを目指す。

 アンガーマネジメントは、以下の流れを通じて、最終的にその場にふさわしい方法で自分の感情を表現する方法だ。

  • 自己理解:常に変化する自分の感情に注目し、気づいたことを整理
  • 他者理解:自己理解を通じてその場にいる他者の気持ちを理解
  • 相互理解:お互いの感情を理解し合う

 日本において、アンガーマネジメントは以下のような分野で各種問題を解決する手段として取り入れられている。

【教育分野】
  • 子どもたちの問題行動の予防教育
  • 教師の児童・生徒理解や対応
  • 教師のメンタルヘルス

【医療・福祉分野】
  • リワークプログラム
  • カウンセリング

【一般企業】
  • パワーハラスメント予防
  • 人間関係向上(※1)




今、なぜアンガーマネジメントなのか

 今、なぜアンガーマネジメントが注目されているのだろうか。大きな理由の1つは、価値観の多様化である。さまざまな価値観が持つ者が増えることで、当然異なる価値観を持つ者同士の関わりが増加していく。自分と違う価値観を持つ人間へのいら立ち、怒りを募らせ、その結果トラブルを生むのだ。

 企業内でも、部下のマネジメントに悩む管理職が増えている。自分が新人時代に先輩や上司から教育を受けてきたのと同じように叱ると、部下のモチベーションが低下して生産性が低下する。また、部下への怒りの感情をストレートにぶつけると、部下からパワーハラスメントとみなされることも少なくない。

 このような状況下で、自分が感じた怒りの感情を相手やその場の状況に合わせて適切に表現できるスキルが必要とされているのだ。


アンガーマネジメントの効果

 アンガーマネジメントの効果は、主に以下の3点にまとめられる。

  • 怒りの感情をコントロールできる
  • 相手の感情を損なわないような表現で、自分の気持ちを伝えられるようになる
  • 価値観の多様性を理解できるようになる

●怒りの感情をコントロールできる
 相手に怒りの感情をそのままぶつけてしまうと、周囲も含めて萎縮してしまい、対人関係や業務に悪影響を及ぼしかねない。怒りの原因を特定して整理することで、怒りの感情をコントロールできるようになると、業務への悪影響を抑え、対人関係も良好に保ちやすくなるだろう。

●自分の気持ちを相手に受け入れやすい形で表現できる
 自分の気持ちを相手に受け入れやすい形で表現できるようになる点も、アンガーマネジメントの重要な効果だ。自分の気持ちを適切に表現することで、部下への指導やクライアントとの交渉など、あらゆる場面において建設的な意見交換ができる環境作りを可能とする。

●価値観の多様性を理解できる
 さまざまな価値観そのものをすべて理解することは難しい。しかし、価値観を無理に理解しようとせず「多様性」を肯定することで、大きな怒りを感じる場面そのものを少なくできるのだ。「そんな価値観もあっていい」「自分の価値観もあっていい」と認めることで、落ち着いてコミュニケーションができるようになるだろう。

怒りの仕組み

 アンガーマネジメントの具体的な方法を知る前に、怒りの仕組みと種類について知っておこう。怒りとは、自分を守るためにある感情である。「こうあってほしい」という理想と現実にギャップが生まれる場合に発生しやすい。

 「報連相がしっかりできる部下」という理想に対し、「現実の部下は報連相を怠ることが多い」という状況を想像してみると分かりやすいだろう。理想と現実のギャップは、他人だけでなく自分自身に向く場合もある。

 ただ、理想と現実のギャップがただ1回発生しやすいだけで、いきなり怒り出す人は少ない。怒りのメカニズムを、簡単な図を用いながら説明する。

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ネガティブな感情が積み重なり怒りとなる

 人は、日々を過ごす中でそのときに感じたマイナスの感情をためこみがちだ。日々感じている感情は「第一感情」と呼ばれ、怒りだけではなく不安や不満などあらゆるマイナスの感情だ。

 第一感情が蓄積し続けて一定レベルを超えると、ネガティブな感情があふれ出てくる。この感情のことを「第二感情」という。普段なら怒らないようなささいなことで怒りが爆発する裏には、このような心のメカニズムが働いているのだ。

4つの怒りの種類

 怒りには、4つの種類がある。それぞれの特徴について確認し、自分はどのタイプの怒りを抱きがちなのかを理解しておきたい。

1. 強度の高い怒り
 強度の高い怒りは、一度怒り出すと気が済むまで全力で感情を放出するタイプだ。周囲に構わず大声で怒鳴り散らし、相手が反省していようがいまいが関係ない。自分がスッキリするまで、とことん怒るのが特徴である。強度の高い怒りが暴発すると、「人間関係の破壊」「交渉に失敗する」「その場にいる人間全体への悪影響を及ぼす」など、失うものが多くなり危険だ。

2. 持続性のある怒り
 いつまでも怒りを忘れられず、根に持ってしまうタイプの怒りは、持続性のある怒りのタイプに分類できる。この場合、いくら時間が経過しても忘れられず、何度も怒りの再燃を招く。何度も怒りを抱くうちに、怒りを通り越して恨みや憎しみを抱くまでにいたることも多い。

3. 頻度の高い怒り
 頻度の高い怒りとは、その通り常に何らかの形で表出する怒りのタイプだ。いつでもイライラと不機嫌な状態であり、他人からは「近づきがたい人」「いつも機嫌の悪い人」として認識されることが多い。

4. 攻撃性のある怒り
 他人につらく当たったり、責めてしまったりするタイプの怒りは、攻撃性のある怒りに分類される。攻撃性は、他人に向くとは限らない。攻撃性が自分に向くと、自責の念をためこんで自分を痛めつける方向に表出する場合もある。人に当たることを避けるために、物品に当たる人も少なくない。

 「ドアをたたきつけて出ていく」「そばにあるものを投げつける」などの行動は、攻撃性のある怒りを放出している状態といえるだろう。

アンガーマネジメントの必要性

 ここまで見てきた各種の「怒り」をうまくコントロールするために、アンガーマネジメントの実践は大きく役立つだろう。

アンガーマネジメントの必要性は、以下の5点にまとめられる。

1.自分の怒りの感情に気づけるようになる
 自分が怒っていることを自覚できると、その原因について目が向けられるようになる。怒りの原因が判明すると、それだけで怒りの感情が落ち着くことも多い。

2.怒りの感情のレベルが強くなる前に対処できるようになる
 「自分は今怒っている」ということを自覚できるようになると、その怒りを相手にそのままぶつける前に、対処方法を考える余裕が出てくる。

3.自分の気持ちや考えを言葉で相手に伝えられるようになる
 自分が怒りを抱いた原因に気づくことで、相手が怒りの源泉となった言動も客観的に考えられるようになる。落ち着いた状態で感情表現を検討する中で、自分の気持ちや考えを落ち着いた言葉で伝えられるようになる。

4.他者とより良い人間関係を築けるようになる
「相手が受け入れられる形で気持ちを表現する」ということを続けていると、相手との間に信頼関係が生まれる。結果として、相手と良好な人間関係が築けるようになる。

5.心と身体の健康を維持できる
 怒りは、心身に悪影響があるといわれている。怒りが原因となり得る病気は、ストレス性疾患、睡眠障害、心臓病や高血圧、脳卒中など、どれも心身に深刻な影響を与える病気だ。怒りをコントロールして円滑な人間関係を保つことで、これらの病気を引き起こす要因を減らすことが期待できる。(※2)

アンガーマネジメント実践の具体的方法

 ここからは、アンガーマネジメントを実践するための具体的な方法について解説する。まずは、怒りから生じる衝動・思考・行動のコントロールと、怒りを自己分析する方法も身につけよう。日常意識することとしては、自分の感情を他人に押し付けないようにすることだ。これらの方法を継続して実践することで、自分の怒りをコントロールできるようになるだろう。

衝動・思考・行動のコントロール
 怒りから生じる「衝動・思考・行動」は、それぞれ、以下の方法でコントロールを試みよう。

  • 衝動:怒りを感じたら、その怒りを表現せずとりあえず6秒カウントして我慢
  • 思考:「~するべき」という思考を捨てる
  • 行動:状況を受け止めてできないことは割り切る


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怒りの感情を感じたらとりあえず6秒我慢してみよう

 怒りの感情が発生してから、ピークにいたるまでには6秒かかるといわれている。それまでの間、6秒をカウントすることに集中しよう。何かに集中することで、とりあえず感情の暴発を抑える効果がある。6秒以上経過すると、怒りはピークを過ぎて、少しずつ落ち着きが出てくるだろう。

 思考や行動に関する自己変容は、突発的な怒りには対処できないが、日々訓練することで、怒りを抱く回数を少なくするのに役立つ。

1. 怒りの自己分析
 自分が抱いた怒りを自己分析する方法としては、以下を試してみよう。
  • 怒りのログを記録して見える化
  • 怒りを点数化
  • 怒りに優先順位をつける


 怒りのログは、その場でスマホやメモ帳などを用いて残す。怒りを書き出す際、その怒りを点数化する。また、一度に複数の怒りに気づいた場合は、怒りに優先順位をつけ、何に一番怒りを感じるのかを検討しよう。これらの方法は、いずれも自分の怒りを客観視する効果があるとともに、自分の中にある「べき」に気づくことができる。(※3)

2.自分の感情を押し付けない
 日常生活で意識して実践したいことは、「自分の感情を押し付けない」ということである。言い換えれば、自分の理想を他人や自分自身に当てはめることをやめてみよう。最初は、なかなか難しいことだ。しかし、続けていればいつの間にか怒りを強く感じる場面が減少しているのに気づくだろう。

アンガーマネジメントでコミュニケーションの改善を図ろう

 怒りの感情とアンガーマネジメントの概要・実践方法について見てきた。アンガーマネジメントを実践して自分のものにすると、周囲とのコミュニケーションをより良いものに改善することが期待できる。他者とコミュニケーションを取るとき、さらに意識すると良いことは、「私を主語にする」「伝えること・伝えないことの区別をつける」ということだ。

 「私」を主語にすることで、自分の気持ちについて話していることをより意識できるようになる。また、相手の立場を考えることで、「本当に伝えるべきこと」「伝えないこと」の区別もつきやすい。社会人として適切な表現を身につけ、仕事をスムーズに進められるようにするためにも、アンガーマネジメントは身に着けたい「スキル」といえるだろう。

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