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  • 2018/11/15 掲載

とうとう日本がワイン大国に?「国産」ではなく「日本」ブランドで

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本日11月15日は「ボジョレー・ヌーボー」の解禁日。30年ほど前のバブルの時代から毎年ニュースで伝えられる。これはフランス産だが、国産のブドウを使って国内で醸造される「日本ワイン」も健闘しており、国税庁調べの生産量も出荷量も大きく伸びている。10月30日には「日本ワイン」の表示ルールが施行された。ワインの本場、ヨーロッパ連合(EU)との間で相互に関税率をゼロにし、非関税障壁も撤廃するEPA協定も発効間近。日本ワインが海外で好評価を受け、世界のワイン市場で一定の存在感を勝ち取るチャレンジが今、始まろうとしている。
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ヨーロッパで「日本ワイン」を飲む日が来るかもしれない
(©kai - Fotolia)


消費・生産ともに日本のワインは成長産業

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 ブドウを発酵させて作る醸造酒、ワイン。日本では戦国時代から輸入して飲まれていたが、国内醸造は廃藩置県前年の1870年(明治3年)、最初の醸造所(ワイナリー)が甲斐国の甲府城下に建てられたのが始まり。

 フランスで勉強して帰国した醸造技術者たちが試行錯誤を繰り返し、原料のブドウの品種改良も寄与して、昭和の初めにはワインの生産はようやく軌道に乗ったという。

 とはいえ、ワインが一般の酒販店で日本酒やビールやウイスキーと肩を並べるほどポピュラーな存在になったのは昭和も末、高度成長期からバブルの時代にかけてのことだった。毎年11月、フランスから届く新酒「ボジョレー・ヌーボー」の解禁日が騒ぎになりはじめたのも、そのころから。

 平成に入りバブル経済が崩壊しても、日本のワイン市場では輸入品も国産品も順調に売上を伸ばし、輸入元もアメリカ、オーストラリア、チリなどに多様化。毎晩飲めるような低価格帯のワインも普及し、現在に至っている。

 酒類の生産量や出荷量は、酒税を徴収するために明治時代から国税庁が詳細な公式統計を取り続けている。ワインは果汁から作られる醸造酒「果実酒」のカテゴリーに入る。果実酒にはリンゴから作るシードルや梅酒なども含まれるが、ほとんどブドウ酒(輸入ワイン、国産ワイン)で占められる。

 酒類全体の出荷量(課税移出数量)は長期低落傾向にあるが、果実酒のそれは少しずつではあるがほぼ右肩上がりで伸びている。過去、1998年度にワインの輸入が急増して突発的に36.9万klのピークをつけたことがあるが、2015年度にはそれを上回る37.9万klを出荷し、17年ぶりに最高記録を更新した。ワインはすでにブームを通り越し、日本人の食生活の中に定着している。

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酒類全体と果実酒の出荷量(課税移出数量)の推移

 果実酒の生産量(製成数量)も近年ほぼ右肩上がり。7.0万klだった2008年度と10.7万klを生産して過去最高(1998年度)を更新した2015年度を比べると、7年で約1.5倍に増えた。不景気で一時低迷した時期もあったが、ワインは現在、消費量でも生産量でも成長産業だと言って差し支えない。

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果実酒の生産量(製成数量)の推移

 ワインの流通量のうち、輸入分は69.0%、国内生産分は31.0%である。ただし、国税庁のこの統計数字には注意すべき点がある。

 ワインは、海外で収穫されたブドウ(濃縮果汁)を使うことも、海外から調達したワイン(バルクワイン)をブレンドして瓶詰めし「国産品」として出荷することがあるためだ。たとえば、サントリーやメルシャンのような大手メーカーが発売してスーパーで市販されている安い価格帯のワインには「輸入ワイン使用」と表示されている。

 海外産のワインをブレンドして出荷する大きな工場があるおかげで、果実酒、ワインの生産量、出荷量が日本で最も多い都道府県は(山梨県ではなく)神奈川県である。

「国産ワイン」と「日本ワイン」の違いは?

 このような「国産ワイン」とは異なるのが、「日本ワイン」である。国内で栽培したブドウを使って国内のワイナリー(醸造所)で醸造したワインのことだ。

 国税庁は「酒税の保全及び酒類業組合等に関する法律」に基づく「果実酒等の製法品質表示基準」(平成27年10月国税庁告示第18号)で、国産ブドウ100%で、産地表示するならそのうち地元産ブドウを85%以上使用し、国内で醸造されたワイン、という「日本ワイン」の基準を定義。新酒が出回りだす2018年10月30日に施行した。

 これにより、海外産のブドウやワインを使って製造したものは「国産」であっても「日本ワイン」と称することはできなくなった。

 国税庁は「果実酒製造業者実態調査」で日本ワインの実情を調査している。2016年度の国内製造ワイン(国産ワイン)生産量8万5794klのうち、日本ワインは19.4%の1万6638kl。2015年度の比率18.4%から1.0ポイント増加したが、約2割にすぎない。

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国内製造ワインの生産量構成比

 それでも出荷量は右肩上がりで増えており、輸出量は出荷量全体の0.35%にすぎないが、海外への輸出も行われている。

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「日本ワイン」の出荷量と輸出量の推移

 日本ワインは地元産を強調して産地を表示することもあるが、ヨーロッパでは当たり前のことだ。ワイナリーは周辺のブドウ畑で収穫したブドウからワインを作り、地域ブランドと自社ブランドをつけて、瓶に詰めて出荷する。「ブルゴーニュ」「ボルドー」「モーゼル」「トスカーナ」のような世界的な銘醸地ブランドがついていると、高く売れる。

 さらに、フランスの「AOC(Appellation d'Origine Controlee:原産地統制呼称)」のような公的な認証や格付けを受けたり、著名なワイン評論家から高く評価されたら、自社ブランドにもハクがつく。世界的な名品が、片田舎のブドウ畑の中に建つ「シャトー」や「ドメーヌ」と呼ばれる小さなワイナリーでほそぼそと作られていることも決して珍しくない。生産量が少ないため希少価値がさらなる高値を呼ぶ。

 「日本ワイン」は、そうした伝統の“ワイン文化”を日本でも築こうとしている。

 「日本ワイン」の生産地は、誰でも想像がつくように甲州ブランドの山梨県がトップで、2位は塩尻市などが主要産地の長野県、3位は「十勝ワイン」の池田町や富良野市が主な産地の北海道。以下、朝日町や上山市などで作られている山形県、花巻市の「エーデルワイン」などのある岩手県、新潟市や南魚沼市や上越市で生産している新潟県と続く。

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「日本ワイン」の生産量上位都道府県の生産量と比率

 国内のワイナリー数は283カ所で、81カ所が山梨県にあり断然トップ、2位は長野県と北海道が34カ所で並ぶ。平均気温が高くブドウ栽培に不向きと言われる西日本でも岡山県には6カ所のワイナリーがあり、生産量は全国第7位。大阪府にも7カ所ある。統計上のワイン生産量最多の神奈川県にワイナリーは2カ所しかなく、日本ワインの生産は少ない(2017年3月末現在)。

【次ページ】ワイン産地は熱気を帯び、新規参入も続々
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