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表面的な摩擦とは対照的に、米中両国はネット上の言論の統制という点で近年、驚くほど似通ってきた。それだけではなく、中国の主権の及ぶ範囲に限定されていた中国のネット規範に、米フェイスブックなどIT企業が「自由」を犠牲にして歩み寄るようになっている。世界は「中国化」していくのだろうか。
フェイスブックの検閲強化が始まった
最近のフェイスブックは、検閲を強化している。きっかけは、提携先のデータ分析企業ケンブリッジ・アナリティカに渡ったデータが2016年の大統領選挙に際してロシアに悪用され、多くの米国人ユーザーの投票行動がターゲティング広告の手法で操作されたとする問題だ。
米国人の
45%がニュースをフェイスブックのフィードで得る中、同社プラットフォームの影響力は政治的にも社会的にも政府に準じたレベルに達しており、放任主義はもはや現実的でなくなってきている。
こうした中、フェイスブックは一部において民主主義の原則に基づき、言論の自由を許容する「米国型」の対応を維持する一方、多くのプラットフォーム上の発言を厳重に監視して、少しでもポリシーに反するとみなされる言論を削除したり、目立たせなくする「中国型」の対応を急増させている。
具体的にはフェイクニュースの検閲のため、7,500人のチェッカーを雇用している。11月に米中間選挙を控える中、チェッカーは年末までに20,000人増員され、合わせて27,500人体制となる予定だ。加えて、超党派で構成される国際ファクトチェックネットワークの認証を受けた、独立第三者ファクトチェック業者の協力を得てニュースの事実確認も行っている。
ヌードや銃の売買、暴力の確かな脅威、そして人種や性別、あるいは性的指向によって個人を直接攻撃する投稿や広告を禁じ、事実上の編集権を行使して検閲しているのである。
また、フェイスブックは人工知能(AI)スタートアップの英ブルームズベリーと提携し、AI深層学習を使って文字情報や動画におけるコンテンツ識別や内容の判断に乗り出す
計画だ。機械が偽情報と判断した記事のニュースフィードのランクを下げて配信を減らす意図があると見られる。
矛盾をはらむ、フェイスブックの「過剰検閲」
こうした中、フェイスブックによる「過剰検閲」が次々と問題化している。たとえば、レズビアンの蔑称である「dyke(ダイク)」を、レズビアン自身が非差別的に自分に対して使った投稿が削除されてアクセスできなくなった。
さらに、インディアナ州の黒人教会が、新しいゴスペルソングの動画に2017年夏のバージニア州シャーロッツビルでの抗議デモの様子を組み入れ、フェイスブック上でプロモートしたところ、AIアルゴリズムがこのミュージックビデオを「政治的」と認識し、アクセスが
禁止されてしまった。
文章や動画の投稿だけではない。フェイスブックの収益の柱である広告も、一部で過剰に検閲されている。米小売大手ウォルマートの「弊社は米国に雇用を戻します」という広告や、米消費財大手プロクター・アンド・ギャンブル(P&G)のLGBT擁護広告も「政治的」であると判断された。
そしてフェイスブックは、これらの広告が「政治広告であるのに、『政治広告』と明記していない」との理由で、出稿を
停止してしまったのである。
その一方で同社は、「2001年の米同時多発テロは米政府が起こした」「2018年2月のフロリダ州パークランドの高校銃撃事件で生き残った人たちは、被害者を演じた連中にすぎない」と主張する右派系の有力陰謀論者、アレックス・ジョーンズ氏の主宰する団体『インフォウォーズ』の動画をフェイスブックページ上に残すことを許していた。
批判が高まると、7月27日にそれらの動画を「ヘイト言論」であるとして削除したが、『インフォウォーズ』のFacebookページ自体は削除されず、ジョーンズ氏の投稿が
30日間停止される緩い処分にとどまった。この軽い対応が報じられてさらに批判が高まると、今度は『インフォウォーズ』のFacebookページを完全に削除するという迷走ぶりだ。
また、自身がユダヤ人であるフェイスブックのマーク・ザッカーバーグ最高経営責任者(CEO)は、米テック系メディア『リコード』の7月18日の
インタビューで、「ナチス・ドイツによる600万人のユダヤ人虐殺を否定するような記事は、必ずしも削除されるわけではない」「投稿内容が傷害行為や暴力を呼びかけるものでない限り、それが攻撃的な内容であっても、保護されるべきだ」と述べて物議を醸している。
【次ページ】止まらないフェイスブックの「中国化」、“言論の自由”の米国はどこへ
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