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  • 2018/05/31 掲載

小泉進次郎が熱弁、北朝鮮・中国の「意思決定の速さ」に日本はどう対応していくか

民主主義の義務とコスト

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新経済連盟が主催する「新経連サミット」(NEST2018)が4月11日、東京都内で開催された。毎年、国内外から豪華な著名人を招いて行われるディカッションは、経済界ばかりでなく、政財界やIT業界など、幅広い分野から支持を得ている。初日のスペシャル・セッションでは「政界×経済界のあり方にイノベーションを」をテーマに、自由民主党の小泉 進次郎氏が登場。ミレニアム世代に向けて、新時代の政治の在り方などを熱く語った。モデレーターは、マネーフォワード 代表取締役社長 CEO/新経済連盟 幹事の辻 庸介氏が務めた。
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2017年より自民党 筆頭副幹事長を務める小泉 進次郎氏

注目は「推定同い年」の金 正恩

 新経済連盟が掲げるテーマには「アントレプレナーシップ」「グローバリゼーション」「イノベーション」の3つが挙げられる。

 まずモデレーターの辻氏は、「このうちグローバリゼーションの点では、中国の習 近平国家主席、北朝鮮の金 正恩党委員長、米国のドナルド・トランプ大統領など、丁寧な言葉で言うと『強い指導者』が生まれる中で、日本の立ち位置が課題になります。世界で日本を考えるとき、必要なことは何でしょうか?」と問いかけた。

 小泉氏は、「良し悪しなどを抜きにして」としたうえで、現在の指導者の中で、金 正恩党委員長に特に注目していると語る。その最大の理由は、彼が小泉氏と同じ歳(推定年齢)だからだ。

「私は1981年生まれで、今年で37歳になります。今、同年代の金 正恩党委員長が、世界の地図を動かしています。こういった動きの中で、日本の対応の遅さに危機感を覚えているのです。さらに日本の周辺のほとんどが、非民主的な国になってしまったことにも危機感を覚えています」と、小泉氏は懸念を示す。

非民主国家の強さは「意思決定の速さ」

 実は中国では、この3月に憲法改正案が可決され、国家主席の任期を2期(10年)までとしていた規定を撤廃された。これにより習 近平氏は、長期にわたり国家主席の座に留まることが可能になった。その是非は別にして、あっという間に下される意思決定の速さの差が、民主国家の弱さと非民主国家の強さになっていると小泉氏は主張する。


「このような中国が隣にいて、戦後1回も憲法を改正できない日本。これは象徴的な出来事です。中国のスピードについては、日本も考えなければならない。日本の政治が語っていくべきことは、自由と民主的な国作りと、そのプロセスの大切さです。戦後日本は、こういうことをまじめに語ってこなかった。平成が来年に終わります。新時代は日本人が自ら考えて作りあげる民主国家であり、その価値を訴える必要がある」(小泉氏)

 これまでは「相棒」の米国を中心に世界が回っていた。しかし米国が自由の価値や民主的なプロセスの正当性を落としている現在、日本の周辺国も自由を謳歌しているとは言えない。

「少子高齢化と人口減少が進んでいく日本。歯を食いしばり、乗り越えなければいけないときに、私はもう一回この当然の『自由』と『民主』という価値観を、政治家だけではなく、経済界も国民も自分に落とし込んでもらいたいと思っています。民主国家として最低限やってもらいたいことは、政治に参加すること。この大事さが理解できれば、もっと投票率も上がるし、国民が主役の国づくりの気持ちが現れてくるでしょう」(小泉氏)

“自由”と“民主”はまるで違う、ときに衝突するもの

 辻氏は「自由と民主というテーマは当然のように思えますが、世界を見渡すとそうではない。その中で日本がどう世界をリードすべきか、我々の価値観を作っていくべきか。そういう段階に来ているということですね」と、小泉氏に確認した。

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マネーフォワード 代表取締役社長 CEO/新経済連盟 幹事
辻 庸介氏

 小泉氏は同意しつつ、その一方で“自由”と“民主”という概念の関係性についても指摘。一般的に両者の概念は日本ではよいイメージがあり、親和性が高いと理解されている。しかし自由と民主はまるで違うものだ。

「自由というのは自分で自身のことを決めること、民主というのは皆で全員のことを決めること。しかし自由と民主はときに衝突しかねません。自分がやりたくないことでも、皆でやろうと決めたらやらなければならない。この自由という個人の選択権や決定権の価値と、全員で決めていくプロセスの大切さを、1億2000万人という日本の中で、うまく方向性として決めていけるかということが重要です。なぜ自民党が“自由民主党”という党名を掲げているのか。我々が自由と民主を語っていかねばなりません」(小泉氏)

ネット献金システムは民主主義を加速する

 さらに小泉氏は辻氏の「日本を前進させるために国民ができることは?」との問いに対し、以下のように回答した。

「最近、世界の民主主義の形が変わってきていると感じています。バラク・オバマ氏が大統領になったとき、誰もが新しい民主主義の形を垣間見た気がしました。たとえば、大きなロビー団体からの献金でなく、一人ひとりが小口の個人献金で彼の活動を支えました。こういう形で、皆が政治家を支えていくことに新しさを感じました。しかし日本では同じような行動は根付きませんでした」(小泉氏)

 確かに日本では、いわゆる献金手段としてのネット献金は流行しなかった。実はネット献金については、新経済連盟代表理事の三木谷 浩史氏が率いる楽天がサービスを提供していた。しかし、すでに廃止され、国内で同様のサービスはない。その理由はお金が集まらず、システムを維持するコストのほうが高くなったことが一因として挙げられる。しかし、それでも小泉氏はネット献金の必要性を説く。

「もし私が同じサービスを実現しようと思ったら、事務所でネット献金システムを作り、Webに実装しなければなりません。ですから、もう一度、新経済連盟に政治のインフラ作りを通じて民主主義に参加してもらい、政治を身近に感じられる装置を作っていただきたいのです。私は政治献金やネット献金は悪いものだと思っていません。政治家が本当に思い切って活動するには、民主主義のコストとして(政治献金は)必要です。(その結果を)胸を張ってお返しすることが政治家の立場だと思っています」(小泉氏)

【次ページ】コミュニティがタコツボ化していく現在、政治はどうやって社会全体のコンセンサスを得るのか
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