- 会員限定
- 2018/07/24 掲載
本格的ロボット活用に必要なのは「エッジ・コンピューティング」だ
ボストン ロボティクス&AIサミットレポート
米国防総省は「複数ロボットの運用」研究に750万ドルを提供
教授は国防総省による「複合大学研究イニシアチブ(MURI)」をカーネギー・メロン大学、ブリガム・ヤング大学、タフツ大学などと進め、ヒューマノイド型ロボットやその他の自動化システムに「自身の仕事を評価し、パフォーマンスの達成度、またタスクが失敗した場合はその原因を究明する」能力を与える研究を行っている。
このシステムはSUCCESS (Self-assessment and Understanding of Competence and Conditions to Ensure System Success)と呼ばれ、国防総省から総額750万ドルの資金を得て進められている研究だ。
この研究とは別に教授はARM (Advanced Robotics Manufacturing Institute)にも携わっている。マサチューセッツ州はロボティクス産業と提携し、国で最大級のロボット運用テストセンターの設置、産業用ロボットの企業との合同開発などを通し、国家のロボティクス産業の中心となることを目指している。ARMにはMIT、ノースイースタン大学、ウースター・ポリテクニック大学などボストン周辺の大学が参加し、製造業の現場でのヒトとロボットの関わり、新しい製造プロセスの開発などをテーマとした研究が進められている。
この中でマサチューセッツ大学ローウェル校、そしてヨンコ教授が特に関心を持って進めているのが「複数のロボットを運用する場合のヒトにとって分かりやすいインターフェイス」の研究だ。具体的には核処理施設など、ヒトが作業をするのに危険と思われる場所でロボットによる清掃、運搬作業を行う場合に、タブレット上でロボットの位置をタップするだけでコントロールできるシステムだ。
種類・目的の異なるロボットをどうコントロールするか
教授は作業場マップとそこに配置されたロボットを示すアプリを示した。稼働させたいロボットだけを複数タップする、あるいは稼働グループを円で囲む、といった簡単な操作でコントロールするものだ。NASAが開発したヒューマノイド型ロボット「ヴァルキリーR5」は、核施設での作業に想定されているもので、現在ローウェル校に貸与されている。この研究が平面上での複数のロボットの役割分担、同時稼働を目指すものである一方、現実世界ではより複雑なアプリケーションも必要となる。
教授が例に挙げたのが災害救助の現場だ。広範囲にわたる災害が発生した場合、まず必要となるのは災害規模、被害の評価だ。これにはドローンなどを上空に飛ばし、その画像を分析する必要がある。分析の結果、被害が大きく人命救助が優先されるエリアを特定する。そこにたどり着くための自動運転トラック、障害物があればトラクターなどが必要となる。また建物が崩壊してヒトが取り残されていると想定される場合、サーチ&レスキューロボットが投入される。ボストン・ダイナミクス社が開発した「ドアを開けられる犬型ロボット」は有名だが、こうした地上型ロボットも他のロボットと連携して作業に当たる必要がある。
【次ページ】ロボット本格活用のカギはエッジコンピューティング
関連コンテンツ
PR
PR
PR