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AR(Augmented Reality、拡張現実)は瞬く間に広がりを見せ、今や産業アプリケーションにも欠かせない存在になりつつある。そのARを巡り、本来は現実に仮想の説明などを加える役割だったはずのARが逆に現実に介入するという新しい動きが見られる。仮想と現実のインタラクションにより、さまざまな可能性が広がっている。
Reality Editとは何か?
6月18、19日に米マサチューセッツ州ボストンで、PTCが主催するLiveWorx18が開催された。マイクロソフトやインテルなど現在のIT業界のトップを走る企業らが参加し、AI、ロボティクス、AR、VRなどこれからの産業の中で重要になる技術が展示された。
18日朝にPTCのCEO、ジェームス・へプルマン氏が基調講演を行った。その中で興味を引かれたトピックの1つが「Reality Edit」だった。
Reality Edit はARに現れたアイコンを通し、現実のロボット操作を行うものだ。ARが単なる現実のガイドではなく現実にインタラクト(介入)できるツールになるという画期的なアイデアだった。その実力を知るために、早速ブースを訪れてみた。
世界初の「ARから現実世界を動かす」試み
Vuforia は、PTC傘下でARにまつわる技術を担当するセクションだ。Reality EditのコーナーはVuforiaのブースの中にあった。
Reality Editという考え方は、元々MIT(マサチューセッツ工科大学)のメディアラボのプロジェクトとして始まった。
当時MITの博士課程に所属し、プロジェクトを率いていたヴァレンティン・ハウン氏は、「ARで単に画面に機械の説明が浮かび上がる、仮想のイラストなどが登場するという機能を超えて、そこから現実をコントロールできる方法があるのではないかと考えた」という。
その結果として生まれたのがReality Editというシステムだ。簡単に言うと、スマホやタブレット上にARとして登場するガイドを操作することにより、そこからロボットの動きをコントロールするものだ。
今回デモとして用意されていたのは、材料をベルトコンベヤーに乗せて供給する、単純なフィーダーロボット。ARにはコンベヤーの速度、フィード(供給)の速度、フィーダーの容量などが数値として表示される。またフィードを受ける側のスケールに関しても、別個のシステムではあるが同じAR上に目盛り、許容量のパーセンテージなどが浮かび上がる。
これだけならばフィーダーロボットの作動状態をAR上でチェックするというだけの話だ。しかし、Reality Editではスマホなどで機械のスイッチ部分などを映し出し、そこに現れたスイッチアイコンをAR上の機能としてインポートすることができる。するとスマホのスイッチアイコンのオン・オフをタップすることで、実際の機械を動かしたり止めたりすることが可能となる。
それだけではなく、スマホあるいはタブレット上から、フィードの速度、量などのチェック、変更、またフィードを受け取るスケールが一杯になっていた場合のカートンの交換も指示することができる。つまり画面上にARとして現れたアイコンが、現実の機械をコントロールするツールとなるのだ。このような機能を持つARは世界初の試みだという。
【次ページ】ARがアニュアルに取って代わる
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