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アップルが発表したMRヘッドセット「Vision Pro」が注目を集めている。2024年初頭に米国で販売予定とされるVision Proは、3,499ドルという価格設定だが、高価な価格設定から、一般消費者に広く普及しないかもしれないとの見立てもある。一方、同時にアップルが注力しているのが、新たなARグラスの開発だ。最新情報ではARスタートアップを買収、ARグラス開発を加速させているが、その狙いはどこにあるのか。アップルが買収したAR企業「Mira」の特徴から、アップルのMR/ARビジネスの狙いを考察したい。
Vision Proの次の打ち手とは?
アップルが公式発表したMRヘッドセット「Vision Pro」は、すでにさまざまなメディアで実体験レビューが実施されているが、その評価はおおむねポジティブなものとなっており、消費者の期待も高まっているようだ。しかし、価格が3,499ドル(約50万円、6月27日時点)とかなり高価であるため、実際に購入する人の数は限定されると見られる。Vision Proが出荷されるのは2024年の予定だ。
アップルのVision Proが
公式発表されたのは2023年6月6日だが、その存在は以前から知られており、2023年1月時点では、かなり具体的な情報がThe Informationやブルームバーグなどのメディアで報じられるようになっていた。関係筋の話によると、アップルはまず今年中にMRヘッドセット(Vision Pro)を発表し、その後早ければ2024年、または2025年に低価格MRヘッドセットの販売を開始する予定という。
一方、ブルームバーグはこの時点で、アップルが計画を大きく変更したとも伝えている。当初の計画では、MRヘッドセットの発売後に、ARグラスをリリースする予定であったが、ARグラスの開発を延期することになったという。
アップルは、MRヘッドセットの先の技術として、1日中着用できる軽量なARグラスの開発を目指しているが、技術的な課題に直面、計画を変更せざるを得ない状況になったようだ。アップルはARグラスの開発を進め、どのような展開を考えているのだろうか。
アップルが買収したAR企業「Mira」とは
Vision Proが発表された翌日2023年6月7日に、興味深いニュースが報じられた。
The Vergeが報じたところでは、アップルはこのほどロサンゼルス拠点のARデバイス開発スタートアップMiraを買収した。この買収は、MiraのCEOのインスタグラムプライベートアカウントによる投稿と関係筋の情報から明らかになった。また、アップルもこの買収について認めている。
Miraの買収額は公表されていないが、同社はこれまでに約1,700万ドルの資金調達を行っていたと報じられている。また、かつてアップルのデザイン責任者であったジョニー・アイブ氏が、Miraのアドバイザーの1人だったことを、Miraの元従業員が明らかにしている。
アップルが買収したMiraとはどのような企業なのだろうか。同社は、エンターテインメントと産業向けのARソリューションを開発するスタートアップだ。エンタメ向けには、ユニバーサル・スタジオ・ジャパンにある「スーパー・ニンテンドー・ワールド」やロサンゼルスのユニバーサル・スタジオで展開されているアトラクション「マリオカート」向けのARヘッドセットを提供している。
一方、産業向けでは、米軍との
約70万ドルの契約により、トラビス空軍基地向けに同社の「Prism Pro」ヘッドセットを提供している。基地の整備士は、このARヘッドセットを着用することで、各地の専門家と直接通信しつつ、ハンズフリーで整備を行うことが可能になった。
これらは事例の一部でしかない。アップルが買収したMiraの提供ソリューションや導入先の企業を知ると、アップルの買収の狙いが見えてくるかもしれない。
【次ページ】なぜアップルはMiraを買収した? ARビジネスに懸ける理由
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