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  • 2022/06/22 掲載

「スマホに別れを告げる日」は2050年、みずほ銀行が「メタバース普及」を大胆予測のワケ

連載:メタバース・ビジネス・インサイト

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メタバースの普及で、2050年には過半数の人たちが現実世界と同等以上のコミュニケーションや経済活動を行っている──そんな大胆な予想が打ち立てられた。これはみずほ銀行産業調査部が「2050年の日本産業を考える」という報告書で示唆されたもの。同報告書によれば、スマホもPCも2050年に「普及率0%」になるという。報告書づくりに携わった同行調査役の山口意氏に話を聞いた。
企画:林 裕人、執筆:漆原次郎、写真:大参久人

企画:林 裕人、執筆:漆原次郎、写真:大参久人

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みずほ銀行
産業調査部テレコム・メディア・テクノロジーチーム調査役
山口 意 氏

メタバース普及の予想の背景に「世代シフト」

 みずほ銀行産業調査部が作成した報告書『2050年の日本産業を考える ~ありたき姿の実現に向けた構造転換と産業融合~』は、2050年までの時間軸で世界の潮流変化を捉え、日本の産業・企業に求められる取り組みを考察したもの。

 2022年4月に公表したこの報告書のなかに、エレクトロニクス、通信・メディア、ITの分野を扱った『メタバースがもたらす影響と日本企業に求められる対応』というパートがある。同部テレコム・メディア・テクノロジーチームが、銀行顧客との議論や文献調査などによりまとめた、メタバース関連の予想・提言だ。

 まず大きなところで、2050年、「メタバースが一般生活に広く浸透し、使っていない人がマイノリティに」と予想する。この報告書では、メタバースの定義を「誰もが現実世界と同等(もしくはそれ以上)のコミュニケーションや経済活動を行うことができるオンライン上のバーチャル空間」としている。これが今後30年で広く浸透しているというのだ。

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2050年にはメタバースを使っていない人がマイノリティになると予測する
(出典:みずほ銀行産業調査部「2050年の日本産業を考える」)

 現在もなおメタバースが普及していくかをめぐり賛否うずまいているにもかかわらず、どうしてこの予想ができるのか。同チーム調査役の山口意氏は、メタバース普及の予想には「世代移行」の背景があるという。

「2050年には、1990年代半ば以降に生まれたZ世代、さらに2010年以降に生まれたα世代が経済・社会の中心となります。これらの世代はデジタルネイティブ。いまの子どもたちも放課後、オンラインゲーム『ロブロックス』内で待ち合わせをしています。そうした世代による将来を描くと、ビジネスなど含めて多くのことがメタバースで行われる構造が見えてきます」(山口氏)


スマホもPCも「上位互換」出現でメタバースから退場する

 報告書の記述で特に注目したいのが、メタバース関連端末の普及率予測だ。スマートフォンとPCの2050年での普及率が「0%」になるという。その道筋として、2025年発売ともされるアップルの拡張現実(AR)向けグラスや、2040年ごろのスマートコンタクトの発売など、端末の多様化を描いている。

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メタバース関連端末の普及率推移予測。ここでの普及率は、累積稼動台数を世界人口で割ったもの
(出典:みずほ銀行産業調査部「2050年の日本産業を考える」)

 それにしても、スマホ・PCが「0%」になるとはかなり大胆な予測ではないか。

「上位互換の端末が出てくると、現行の端末は置き換えられていくというのが、基本的な考え方にあります。グラスは掛けるだけ、またコンタクトは目につけるだけだから便利です。置き換えには技術的な進歩も必要となりますが、小型化、高画質化、コネクトレス化の三つが柱となります。これらが進歩し、重さや疲れを感じなくなり、没入感を得られ、線の煩わしさが感じなくなった世界で、果たしてスマートフォンは生き残っているでしょうか」(山口氏)

 コンタクトレンズでは眼精疲労を起こしそうな気もするが、山口氏は「2050年、抵抗なくつけられていられる世界を前提にしている」と言う。

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メタバース関連技術の発達の見通し
(出典:みずほ銀行産業調査部「2050年の日本産業を考える」)

 PCはどうか。現実世界でPCのキーを叩いて文書をつくるのと同様の作業は、メタバース内でのビジネスやコミュニケーションでも起こりそうだが、山口氏は次のように説明する。

「インターフェイスとしては、手を動かせば入力できるハプティクスが普及していくと予想しています。すると、やはり果たして(下位互換の)PCは要るのだろうかとなり、2050年は0%という予測になりました」(山口氏)

 ハプティクスとは、利用者に力、振動、動きなどをあたえることで、仮想的な触覚を実現する技術のこと。手袋のような装置を使うことが想定されるが、さらに東京大学などでは超音波を駆使して空中で生身の皮膚から触覚を得る「空中ハプティクス」も実現に向けて研究されている。触覚面でのハプティクスに加えて、視覚面でグラスなどを使えば、PCのキーや画面を仮想的に出現させて操作することも可能となる。

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ハプティクスによる仮想PC利用のイメージ
(Photo/Getty Images)

【次ページ】2040年頃に登場する「メタバース仕様自動車」とは
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