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- 2021/03/13 掲載
バンダイナムコAM×CAセガジョイポリス対談、エンタメVR略史に見る「成果」と「課題」
連載:メタバース・ビジネス・インサイト
お客さんによっては「500円返せ」と言われた
── VRとの最初の接点は、どういったものでしたか?バンダイナムコアミューズメント 小山 順一朗氏(以下、コヤ所長):1990年代はじめに「VR」という言葉が出始めました。その頃にナムコに入社し、92年にイギリスから「Virtuality 1000 SD」という、筐体の椅子に座ってゴーグルをかけて戦闘機を動かすゲームを日本に導入しました。
でも、今のVRからすると動きが絶望的で(笑)。顔を動かすと、映像が遅れてゆーっくり追いついてくる感じ。大阪の旗艦店に2台置いてみたのですが、お客さんによっては「500円返せ!」って言われました……。
CAセガジョイポリス 小川 明俊氏(以下、小川氏):僕は94年が初の接点でしたね。「横浜ジョイポリス」初代館長になり、「VR-1スペースミッション」というゲームを置いたんです。映像を出力して、ヘッドマウントディスプレイで全方位の世界観を感じることができて、今のVRの要件はそれなりに満たしていたなと。
コヤ所長:自社開発ですよね。セガのすごいところ!
小川氏:ゲームセンターの収益がよかった分、開発には力を入れていましたね。
田宮 幸春氏(以下、タミヤ室長):私は90年代なかば、大学生の時、舘暲(たち すすむ)先生という権威から授業を受けたのが初VRでした。「アールキューブ(R3)」という、人の行動とリアルタイムに別の場所にいるロボットの行動を直結させるような構想を描いていて、面白いなぁと感じました。
「戦場の絆」でわかった「人が映像の中に入り込む」手法
── その後、多くの人が楽しむVRアトラクションを手がけるようになりました。コヤ所長:「機動戦士ガンダム 戦場の絆」の開発は大きかったですね。直径1800㎜ドームスクリーン筐体内側に映像を映してプレーヤーが入るわけですが、映画や従来ゲームの映像制御方式だとみんな気持ち悪くなって吐いちゃう。人が映像の中に入り込む場合は、特殊な作り方にしないとだめとわかり、ノウハウを蓄積していきました。
── 従来のアーケードゲームから脱しようという意識も?
コヤ所長:ありましたね。
タミヤ室長:当時、ゲームセンターの採算が厳しくなってきていて、「あそこまで出かけてプレイしたい」と思える場所を作らないと、という危機意識はありましたね。
コヤ所長:米国のオキュラス社を創業したパルマー・ラッキー氏が、バーチャルリアリティ・ヘッドセット「Oculus Rift」の試作ヘッドマウントディスプレイを現地展示会で出していたので、弊社研究チームが入手してきました。社内の「戦場の絆」開発チームによってヘッドマウントディスプレイに移植してみたら、筐体でプレイするのと同じような感覚を得られたのです。その時は「時代はVRかな」と感じましたね。
2014年には、オキュラス社がバーチャルリアリティ・ヘッドセットの新バージョンを出したし、翌年ごろにはソニーがPlayStation VRを開発していると知った。自分たちも新しいエンターテインメントをやらないと置き去りになってしまうと危機感を感じました。
── セガは2016年、東京ジョイポリスのまさにこの場所で「ZERO LATENCY」をスタートさせました。
小川氏:15年、米国のゲーム展示会に僕らのクリエイティブチーム2名が行って、「オーストラリアの会社がZERO LATENCY VRっていうのを出した」と報告してくれたんです。その時は「今さらVRか」と思いましたが、プレーヤーが空間を歩きながら体感する新たなゲームとわかり、すぐ導入を決めました。
日本で収益を得るため、現地より料金を安くしてプレイ時間は短くしたりソフトウェアを改変したり、カスタマイズはしました。「VR-1」での経験も生かせましたね。
【次ページ】商品のアイデアとベネフィット、どちらが大事か?
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