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- 2021/04/30 掲載
「いやいやいや、VRはキャズムを超えます」、國光宏尚氏の「反論」
連載:メタバース・ビジネス・インサイト
ネットフリックスにはない「ワォ」がある
──國光さんのVRとの初接点はどこでしょうか?國光氏:2015年です。いま僕がThirdveresでともに仕事をしている新清士さん(代表取締役)が、VR開発者向け会議「オキュラス・コネクト2」の報告会をしていて、それに参加しました。僕は誰よりも早く新たな技術で実現可能になるエンターテインメントを創ろうとしているので、VRも「おお!」と響きました。渡米先でもVRのイベントや開発企業に触れ、「これは来る!」と確信し、事業を始めました。
──何がそう確信させたのですか?
國光氏:エンタメに不可欠な「ワォ」という感覚です。「興奮」や「感動」と言い換えてもいい。ネットフリックスやスマホゲームなど、これまでのエンタメにはない驚きがVRには間違いなくありますよね。
VR普及の見立ては「初期採用」から「追随」の段階
──VRの普及のしかたはどう見えますか?國光氏:加速しています。市場規模はハード普及台数で決まっていくと思っていますが、一強になりつつある「オキュラス・クエスト(Oculus Quest)」の世界販売台数は初代で120~130万台、現在の「2」で300~400万台と予想されます。
オキュラスを買収したフェイスブックのマーク・ザッカーバーグCEOは、「1000万VRユーザー数が、サステナブル・エコシステム形成に重要なマイルストーンとなる」と説いていますが、これは今年21年内に達成するのではないでしょうか。
VRゲームソフトも100万ドル以上の利益が出たタイトルが60本。1000万ドル以上でもすでに6本あります。特に「Oculus Quest 2」以降、こうしたゲームの出現が増えています。
──VRは「キャズム理論」でいうと、いまどの段階にあると思いますか?
國光氏:アーリーアダプターからそれ以降(アーリーマジョリティ)に駆け抜けていく段階にあると捉えています。「Oculus Quest 2」の発売で市場成長の加速度が高まったのはいま言ったとおりです。さらに、22年以降を見ても、ソニーがプレイステーション向けの次世代VRシステムの発売を予定しています。アップルや中国勢のVRハードウェアの追随もありうると踏んでいます。
──キャズム理論では、アーリーアダプターとアーリーマジョリティの間には、普及の妨げになる「キャズム(溝)」があるといいます。それもあって、VRはずっと元年(VR元年)と言われ続けています。この溝から抜けられないということはないでしょうか?
國光氏:そうは思いません。キャズムの要因をVRと付き合わせてみると、いよいよVRはキャズムを飛び越えられそうです。
まず「価格の高さ」については、「Oculus Quest 2」で299ドルまで下がったので超えられたといっていいでしょう。「ハードのサイズ」についても、世代ごとに小型化していくのは確実なので、これも超えられるでしょう。もう一つ、「VR酔い」というVR特有のキャズムもありますが、数多くの酔わなくなるVRコンテンツ開発のテクニックが世界中で研究されているので、これも時間の問題といえます。
一方、ハードの性能が向上していくことは、キャズムを超えるためのプラス要因になります。今後マシンのパワーが上がり、「左目4K・右目4K」が実現すればさらに没入感が増し、マジョリティの購入動機につながるでしょう。
性能面ではほかに、同期型のマルチプレイがWi-Fi環境の不揃いで難しいという課題がありますが(注:Wi-Fiは規格によって通信速度が大幅に異なる)、5Gの本格普及が解決策となりえます。
なお、大規模多人数オンライン参加(MMO:Massively Multiplayer Online)は現状では厳しいものの、今後のチップの性能向上が解決策として見えています。
「PwC Global Entertainment & Media Outlook 2020-2024」によれば、エンターテイメント&メディア産業における「VR」分野はNetflixなどのOTT Videoを上回り、最大の伸びを見せるという。中でも日本はグローバルを上回る成長を遂げる見通しだ。
──ソフトウェアの側面で、VR普及につながりうる要素はありますか?
國光氏:既存のゲームやアニメなどを題材にしたIPタイトルの出現ですね。つい先日『バイオハザード4』のVRゲームが発表されました。このような有名IPのVRゲームが増えてくると普及の大きな後押しになると考えています。
──VRの用途の側面ではいかがですか?
國光氏:ゲーム以外の用途拡大もVR普及加速の鍵になると思います。エンタメ系では、ゲーム以外にバーチャルライブの需要が伸びています。仮想のキャラだけでなく、リアルなミュージシャンがアバター化してバーチャルライブイベントを開催する事例も、欧米などで増えています。
ビジネス系の用途拡大も重要です。仕事に欠かせないものとなり、VR会議を当たり前にやるようになれば、タブレット端末やスマートフォンの普及レベルまで近づくと考えています。
【次ページ】ARの普及はまだまだ厳しい
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