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- 2018/03/23 掲載
B2Bの顧客体験(CX)を最大化するには? 7分野のソリューションと事例に学べ
米ガートナー タッド・トラヴィス氏が解説
顧客が企業価値を判断する「真実の瞬間」とは
トラヴィス氏はCXの重要度を示すサンプルとして、ある倉庫の事例を挙げる。その倉庫の受領担当者は、時間通りに納品されることを何よりも重視している。一方、商品のサプライヤーはCX向上策として、時間通りに納品できそうにない場合に、事前にメッセージを通知するモバイルアプリを提供している。つまり、このCX向上策は時間通りの納品を重視する顧客に対して意味がないのだ。このように、顧客が企業の価値を判断する契機のことを「真実の瞬間(Moments of Truth)」と呼んでいる。真実の瞬間に誤ったCXを提供すると顧客は離れてしまう。B2Bは、B2Cと違って、真実の瞬間が何千とあるとトラヴィス氏は主張する。
あらゆる営業プロセスに「真実の瞬間」がある
たとえば、顧客は自分たちとやり取りした内容を(取引先が)社内で共有することや、適切なレコメンドをしてくれることを望んでいる。
B2BのCXは、B2Cと明確に異なる。同社が顧客に対するアンケートで、「取引先の企業が特に力を入れていたCXは何か」を聞いたところ、B2BがB2Cよりも明快に高い値を出した項目は「(コミュニケーション面での)対応」「サポート・チーム(アフター・セールス、サービスデスク)」「ニーズの聞き取り」だったという。
トラヴィス氏は、「あらゆるインタラクション(顧客と関わるアクション)が真実の瞬間になる」と指摘する。たとえば、営業担当者は営業時間の34%を顧客との打ち合わせに使っている。つまり、顧客のニーズを学習するチャンスが数多くあるというわけだ。また、サポート要員は、顧客とのやりとりに平均して5.6チャネルを使っているという。
現在は、顧客サポート、営業、マーケティングのそれぞれの場面で、真実の瞬間が起こっている。
たとえば、顧客サポートでは、使い方を説明するドキュメントが真実の瞬間になる。また、商品の品質や、返品対応なども真実の瞬間となる。営業では、顧客企業の経営層との関係や、四半期レビューなどが真実の瞬間になる。マーケティングでは、商品のデモ動画が真実の瞬間になる。
顧客視点に立脚して「真実の瞬間」を見極める
では、真実の瞬間を見極めるためには何をすべきなのか。トラヴィス氏は以下の4つの手順を示し、それぞれの内容を説明した。1. 顧客応対プロセスの現状を説明する
2. エピソード、CRMデータ、顧客へのアンケート調査から問題点を集める
3. 顧客のライフサイクルをモデル化する
4. 「真実の瞬間」を分類し、優先順位を付ける
2番目は顧客の視点に立って、真実の瞬間を見つけていくことだ。たくさんある情報源を活用し、顧客と接する複数の社員と話をして、どのように顧客に接しているのかを聞き出す。CRMや顧客へのアンケート調査などからも、情報は得られる。
真実の瞬間が分かったら、アウトサイドインの視点(外から中を見る視点、顧客が企業とどう接するかの視点)に立つ。これが3番目だ。顧客が最初に時間をかけるのは調査(情報収集)である。そして調査が済むと、評価に時間をかける。購入することを決めた後は、取引先との関係構築に時間をかける。
最後は真実の瞬間のうち、うまくいった例と失敗した例を、ともにピックアップして見極める。具体的には商品のデモ動画や、商品の仕様書、導入効果の高いユースケース、ユーザー事例などだ。
真実の瞬間が分かったら、ビジネスに適用する。まずは、真実の瞬間とペルソナ(想定する顧客)を対応付ける。これが営業プロセスの着手点になる。真実の瞬間を計測する指標作りや、責任者が真実の瞬間に対するオーナーシップを持つことも大切だ。さらに、顧客の声を収集する技術も必要になる。
【次ページ】B2BのCX向けユースケース・ベンダーを7種に分類
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