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- 2018/03/09 掲載
ガートナーの10の予測データから見る、未来のデジタル顧客戦略
テクノロジーがカスタマー・エクスペリエンスを変える
ガートナーがクライアントに対して行ったアンケート調査において、デジタル・ビジネス変革の結果として実現した成果を聞いたところ、回答した178社の43%が顧客の満足度を改善することができ、その結果としてロイヤルティおよびカスタマー・エクスペリエンス(CX)が向上したと回答が最も多かった。次いで回答が多かったのが、「大幅なコスト削減(34%)」、「競争優位性の獲得(31%)」。アルバレス氏は、「これから説明する10のテクノロジー展望は、“ブロック”のようなもの。すべての企業がこれらのトレンドの一部を必ず活用していくことになる。ただし、業種や顧客セグメント化の仕方、顧客のニーズによって、何に投資するのかは異なる。競争優位性を確保するために、この“ブロック”をどう組み立てていくのかを考え、卓越したCXを提供するためにどう活用するかが重要だ」と説明した。
展望1:CXプロジェクトの3分の2がITを活用
展望1は「CXテクノロジーへの投資」だ。2022年までに、あらゆるCXプロジェクトの3分の2がITを活用する(2017年の50%から上昇)。ガートナーが行った調査によると、2017年にCXテクノロジーへの投資が増大すると予測した企業は84%に上った。とりわけ41%の企業が「顧客分析」に投資をしており、これを指して「より顧客を理解したい気持ちの表れだ」とアルバレス氏はいう。
データを集めるだけではなく、それを分析して顧客のニーズを分析することが重要だと多くの企業が認識しているということだ。同調査の結果では、「顧客分析」に次いで投資額が多い領域として「Webコンテンツ管理(27%)」「ビジネス・プロセス管理(26%)」「マスタ・データ管理(26%)」が挙がった。
企業では、プロジェクトの数が増加する傾向にあり、「投資するに当たっては、最も使い勝手がよい、的確なツールを選ぶことが重要」とアルバレス氏は強調する。
ITリーダーへの提言として、複数のソリューションを、複数の部門に対して1~3程度のITツールで実現していくべきとし、今後2年間で予定されているITプロジェクトの精査を勧めた。また、社内におけるCXリーダーの存在、およびIT部門側におけるCXリーダーとの連絡窓口となるポジション設置の必要性を説いた。
展望2:B2B企業の3割が営業プロセスにAI採用
展望2は「AI」。2020年までに、全B2B企業の30%が、主要な営業プロセスの少なくとも1つを強化するために、AIを採用する。今後、AIの活用によって営業員を支援する動きが進むと考えられる。アルバレス氏はAI活用の、既に実現されている事例をいくつか紹介した。
ソフトウェア企業において、無償の試用版をダウンロードした顧客に対してAIが自動的にメールを送信し、フルバージョンへのアップグレードを勧める「自動メール」の事例。顧客と営業員との電話での会話を記録し、その内容をAIが分析して「セールス・コーチング」に役立てるケース。害虫駆除の現場で、エージェントが顧客のところで見つけた害虫の種類を撮影するとAIがその虫の種類を特定し、効果的な駆除方法を提示するといった「フィールド・サービス」での事例を示し、AIが営業・顧客サービスを変革しつつある現状を示した。
AIに関しては、大手ベンダーはまだ移行していないところがあるため、提供されるのを待つのは時間がかかりすぎるという現状がある。そのためベスト・オブ・ブリードの考え方で、一つのプロセスに絞って小規模で始めることが望ましい。
AIには学習期間が必要なため、導入当初は顧客満足度がやや低下する可能性がある。また、AI導入の動きを見て、社員が人員削減の恐れを抱くリスクもあるだろう。「ビジネス部門・人事部門と密に連携して、AIに対する反感や恐れを抱かせないことが必要」とアルバレス氏は注意を促した。
展望3:共感力を高めるCRM導入で悪影響を3倍回避
展望3は「共感力」だ。2020年末までに、顧客への共感力を高められるようにCRMテクノロジーを導入する企業は、破壊的なデジタル企業の影響を回避できる可能性が3倍高くなるという。この展望の意味するところは、顧客への共感力を高め、顧客の抱える問題の解決にしっかり寄与できていれば、要望に応えられているとすれば、破壊的なテクノロジーを持つ競合プレイヤーが参入してきたとしても、競争優位性を保つことができるということである。
「デジタルによる破壊」はあらゆる業界で起こっている。中国の決済市場におけるAlipayやWeChat Pay、タクシー業界におけるUber、ホテル業界におけるAirbnbなどが代表的だ。そうした企業は、参入を阻むことはできないほどの破壊力を持っている。ただ間違いなくいえるのは、顧客のニーズに対応できていて好まれているということだ。
その中で既存のビジネスモデルの企業は、いかに顧客を中心に考え、顧客の日々の問題をどう解決し、要望やニーズをどう満たしていくのかが重要となる。それをCRMテクノロジーの導入によって成し遂げるために、社内の「共感力」を醸成していく必要がある。
展望4:顧客サービス/サポート業務の25%でボット統合
展望4は「VCA/ボット」である。2020年までに、顧客サービス/サポート業務の25%では、エンゲージメント・チャネル全体でVCAテクノロジーを統合する(2015年の10%から上昇)。VCAとはVirtual Customer Assistantのことで、顧客からの簡単なリクエストに対応する機械のことであり、いわゆるボットと理解していい。人ではないため、反復的な大量のサービス要求に24時間365日いつでも対応できるメリットがある。すでに、銀行、航空業界、サービス業などさまな業界で導入されているテクノロジーだ。
この技術を用いると、同じリソースでより多くの顧客に対してサービスを手厚くすることができ、しかもいつでもリアルタイムで対応できる。そのため、個別の顧客接点におけるCXを良くするだけでなく、カスタマー・ジャーニー全体にわたって顧客を支援できるようになる。
アルバレス氏は「VCAテクノロジーの経験を言語・機械学習スペシャリストの人材確保戦略を開始すべき」とITリーダーに向けて提言した。
【次ページ】デジタルビジネスの8割でイベント駆動型の認識が必要に
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