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- 2021/01/07 掲載
パルコ社長が解説、新生・渋谷PARCOを“成功”させた4つの仕掛け
1973年開業「渋谷PARCO」が果たした役割
渋谷PARCOの原点を表す共通キーワードは「インキュベーション」「街づくり」「情報発信」だった。まさに、これらの差別化戦略がブランドになり、PARCOの社会的な役割が進化したといえるだろう。ビルの前を通る「公園通り」や「スペイン坂」「オルガン坂」は、渋谷PARCOの象徴的な通りや坂となり、渋谷を訪れる人々を楽しませ、都市生活者に刺激を与える「丘の上の文化」を醸成してきた。
出会いの場として、新しい価値観を持った人々が集い、クリエイティブで感度の高い情報が発信されることで、さまざまなカルチャーを融合してきた渋谷PARCO。しかし一度全部を新しくするところに踏み切って、2016年にクローズした。
新たな門出に際して、渋谷というステージで育ったクリエイターやデザイナー、アーティストから多くのメッセージも寄せられた。そういった熱い思いを胸に、1号店である池袋PARCO誕生から50年目の2019年に、渋谷PARCOが再オープンした。
新生・渋谷PARCOの「リアル」への思い
第二楽章となる新生・渋谷PARCOの建築意匠と設計コンセプトは、次世代に輝くさまざまな原石を集積し、渋谷の通りと坂の継承を念頭に置いたという。「どこから来ても、渋谷PARCOにたどり着き、立体街路を回わって10階の広場まで到達できるようにしました」と語るのは、パルコ 代表取締役 兼 社長執行役員の牧山 浩三氏だ。
新生・渋谷PARCOは、都市再生特別地区の制度を利用して建設された。牧山氏は、「この制度を利用している例は、これまでは駅の直下または駅の真上などがほとんどです。制度を利用するには最小に近い約5000㎡しかない土地に、駅から離れている、かつ、坂の途中という条件の建物は、渋谷区はもちろん東京都でも初めてです。行政も含め、関係各所の協力を経て、実現しました」と建設過程を振り返る。
新生・渋谷PARCOは、商業とオフィスに壁を作らないことも大きな特徴だ。オフィスフロアの入り口となる10階には、コワーキングスペースやイベントスペースなどがあり、人が集い交わるようなコンタクトゾーンになっている。
ビル自体の大きなコンセプトは「世界へ発信する唯一無二の次世代型商業施設」。デジタルで完結する時代にあっても、どうしてもリアルでなければできないこともある。
「いまPARCOに行かなければ色々なことが体験できない、そのような施設にしたいという思いがありました。ただし、あえてメインターゲットを絞らず、ノンエイジ、ジェンダーレス、コスモポリタンという感性を中心に据えることにして、5つの構成要素を盛り込みました」(牧山氏)
そのファクターとは「ファッション」「アート&カルチャー」「エンタテインメント」「フード」「テクノロジー」だ。新生・渋谷PARCOは、この5つの要素で構成し、唯一無二のストーリーを編集していった。そして、これらを貫くのがサステナビリティだ。
【次ページ】新たな価値を生み出した仕掛けを社長自ら解説
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