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  • 2018/02/28 掲載

ニッポンの「製造業」は進化できたのか? データから見る本当の姿

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トヨタがトランプ減税の恩恵を受けて利益予想を上方修正したり、ソニーが過去最高の営業利益を見込むなど、メーカー各社の業績が拡大している。一方で、日本企業が好調なのは、あくまで米国の景気拡大のおかげであり、ビジネスモデルは何も変わっていないとの指摘もある。日本メーカーは時代に合わせて変化することができたのか、マクロ的な視点から検証した。
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日本の製造業は「高付加価値化」へとシフトできているのか?
(© akiyoko – Fotolia)


製造業をめぐるグローバルな環境は激変した

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 日本は製造業の国といわれている。だが、現実にはサービス業の方が圧倒的に多く、GDP(国内総生産)に占める製造業の割合はそれほど高くない。しかしながら、日本では製造業による設備投資が経済成長の原動力となっており、製造業の業績が経済を左右してきた。その意味では、今でも日本は製造業の国といってよいだろう。

 かつて、日本の製造業は輸出を中心にビジネスを展開していた。海外の需要に対応する製品を国内で製造し、相手国に輸出する。輸出した分はそのまま外貨の受け取りになることに加え、生産設備の増強が国内で行われるため設備投資も拡大する。これによって製造業以外の労働者の賃金も上昇し、消費が増えるというのが基本的な成長メカニズムであった。

 だがグローバル化やIT化の進展によって製造業を取り巻く環境は大きく変わった。

 変化の第1段階は生産設備の海外移転である。経済のグローバル化によってコストが低下し、日本国内の製造では採算が合わなくなったことから、アジアや中国などコストが安い地域への移転が進んだ。日本からは部品を輸出し、アセンブリは新興国で実施。組み立てられた最終製品は北米市場などに輸出される。

 第1段階では、アセンブリの業務が海外に移転したものの、部品の輸出は継続していた。最終製品の売上げが日本国内に立たないだけで、基本的なビジネスモデルは従来と同じと考えてよいだろう。

 だがこの状態は長く続かず、製造業はすぐに第2段階に入った。いわゆる「地産地消」の進展である。

地産地消の時代は輸出ではなく資本収益が中心となる

 新興国の経済水準が急上昇したことから、アジアや中国に生産拠点を集約することが必ずしもコスト削減につながらなくなった。最終消費地に近い地域で部品の調達やアセンブリを行う企業が増え、いわゆる製造業の「地産地消」化が進んだ。このオペレーションの場合、日本からの輸出は基幹部品など一部に限定されてしまう。

 日本の製造業にとって最終的な市場は北米もしくは欧州であり、ここ数年、日本企業は相次いで米国に工場を建設している。この段階に入ると、ヒト、モノ、カネの多くは現地で循環することになる。連結決算の上では売上げが立っているように見えるが、実際には現地法人の売上げである。

 このような時代において、海外から日本に入ってくるお金は、輸出の代金ではなく、現地法人からの配当など、いわゆる資本収益が中心となる。

 第3段階は高付加価値型ビジネスへのシフトである。付加価値の低い従来型技術は、中国や韓国など後発の工業国に確実にキャッチアップされる。

 日本企業はより付加価値の高い製品に特化する必要があるというのは以前から指摘されてきたことであり、一部の企業はビジネスモデルの転換を図っている。だが、こうした流れに追いつけず、依然として薄利多売で苦しんでいる企業も多い。

 以上が、教科書的に見た製造業におけるパラダイムシフトの概略である。もし日本企業がこの流れに沿って動いているのであれば、貿易収支や国際収支に変化が生じているはずだ。実際の数字を使って確認してみよう。

実際には輸出数量は減っている

 図1は数量ベースで見た日本の輸出入の推移である。リーマンショック後の2010年あたりから輸出数量が減少していることが分かる。この頃を境に円高から円安に転換したので、金額ベースでの輸出は伸びていた。政府やメディアは輸出が回復していると喧伝していたが、実際には輸出は減っていたことになる。

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図1■数量ベースで見た日本の輸出入の推移

 この動きは、リーマンショックによるものとの解釈も可能だが、輸出数量の低迷がその後も続いていたことを考えると主な原因ではない。

 一連の動きは、リーマンショックやその後の震災などをきっかけに、日本企業が生産拠点の海外シフトを加速させた結果と考えられる。つまり第1段階のパラダイム・シフトは着実に進展していたことになる。

【次ページ】日本からアジアへ、そして北米へ…別のデータからも検証
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