- 会員限定
- 2025/03/10 掲載
Microsoft 365「浸透しない」問題、ガートナー流「5分類」はなぜ効果的?
「機能が多い」ゆえに生じる悩みとは
メール、カレンダー、ファイル共有を中心に、従業員同士の共同作業の支援機能を統合的に提供する「コラボレーション・スイート」。リモートワークの定着により従業員の働く場が社外に広がる中、離れた場を結ぶ業務効率化策としてもはや欠かせない存在だ。ただその一方で、コラボレーション・スイートの利用を推進/監督するデジタル・ワークプレース・リーダーの立場では悩みも多い。
コラボレーション・スイートに関する利用推進/監督サイドの苦悩について、「コラボレーション・スイートは、コラボレーションのための機能の豊富さが魅力ですが、逆に機能の多さゆえにすべての効果的な活用は現実的に困難です。また、機能が多いほど当然、サポートの負担も大きくなります」と話すのは、ガートナー ディレクター,アナリストの林宏典氏だ。

ディレクター,アナリスト
林 宏典氏
では、どうすればコラボレーション・スイートの適切な活用を進められるのだろうか。
林氏が、まず取り組むべきこととして挙げるのが、コラボレーション・スイートの各機能を次の5つの機能グループへ振り分けることだ。
- メールやチャット、ファイル共有などの「コミュニケーション」
- オフィスツールや個人ストレージなどの「個人業務の効率化」
- ノーコード開発ツールやRPAなどの「テクノロジーの民主化」
- Webホワイトボードや共有タスク管理などの「特定業務のデジタル化」
- 生成AIなどの「日常型AI」
ユーザーが各機能を利用する頻度や、そこで感じる価値は、機能ごとに少なからず異なる。一方で、機能グループ単位で見ると、機能の類似性からそれらはほぼ共通する傾向にあり、ガートナーではその点に関する調査結果を、マッピング図に取り纏めているという。
「利活用を進める上で大切なのが適切な目標設定です。そこで、まずはグルーピングを行い、機能の利用度や業務上の価値を評価します。その上で、当社のマッピング図と見比べ、どの機能群の利用を推進させるべきかを判断します」(林氏)
社内メールやチャットは「ツール統一」が必須なワケ
活用の推進対象となるのが、上記のガートナーのマッピング図よりも利用率が低い機能グループだ。加えて、市民開発に力を入れている企業であれば、『テクノロジーの民主化』にも力を入れるなど、状況に応じて活用の方向性を固めていくのがよいと林氏は話す。林氏によると、各機能グループはそれぞれ異なる特性を備えている。そこで、利活用の推進に向けては、その点を織り込んだアプローチを採るのが望ましいという。
では、5つの機能グループは具体的にどんなアプローチが有効なのだろうか。
まず、「コミュニケーション」は多様化が進みやすいツール群だ。結果、メールやチャットなど、部門ごとに異なるツールの利用が広がることで、すでに述べたような業務効率の低下を招くこともしばしばである。
その活用推進に向けたアプローチが、全社標準のツールと各ツールの具体的なユースケースの周知徹底だと林氏は話す。
「状況ごとにいずれの部署も例外なく、同じツールを同じように利用させ、コミュニケーション時のユーザーの戸惑いを解消させます。社員の入社時点から使い方を徹底的に指導すべきです」(林氏)
次の「個人業務の効率化」は、職種ごとに重要な機能が変わるツール群である。主に個人の閉じた業務のために利用するツールであり、使い方が間違っていても特に問題は生じにくい。林氏によると、「その使いこなしは社会人としての基礎スキル」であり、利活用の推進は教育部門による入社時教育などが柱の策となる。
加えて、既存の社員には期待する能力を示し、自助努力でスキルを高めさせることも重要だ。これを欠いては現場からの問い合わせは一向に減らないと林氏は指摘する。なお、社員が修得すべきスキルレベルを把握するには、ICTプロフィシエンシー検定試験などの実務型の認定試験が大いに参考になるという。 【次ページ】「現場任せ」が危険しかないワケ
関連コンテンツ
PR
PR
PR