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地方に移り住み、地域活性化に取り組む地域おこし協力隊員が急増している。2016年度は全国886の自治体で3,978人の隊員が活動し、前年度を51.5%上回った。任期半ばで地域を去る隊員が少なくないのは事実だが、任期を終えた隊員の6割が活動地域にとどまり、起業や就職している。弘前大大学院地域社会研究科の平井太郎准教授(社会学)は「移住・定住施策としては極めて良好な結果。地域に前向きなインパクトを与えている点を評価すべきだ」とみている。総務省は支援体制を強化し、さらに定住を促す考えだ。
若い力でイベント企画や新商品開発にフル回転
「特産のフルーツを生かし、人が集まる地域に変えたい」。キウイ、モモ、イチゴなど西日本きってのフルーツ産地として知られる和歌山県紀の川市。特産品PRと体験型観光の旗振り役を務める市民団体・紀の川フルーツ・ツーリズムで、隊員の新美真穂さん(25)が2016年4月から働いている。
新美さんは愛知県碧南市出身。奈良女子大大学院時代に奈良県十津川村で地域おこし活動に参加した際、紀の川市が隊員を募集していることを知り、応募した。十津川村で地域のためにボランティアで働く住民の姿に感動し、自分もその中に身を置きたいと考えた。
今の仕事は紀の川市をフルーツの街としてPRすることだ。フルーツを使った料理や新商品の開発を手伝うとともに、フルーツカレンダーの作成や収穫体験、パークゴルフ大会などさまざまなイベント企画にフル回転している。
隊員として紀の川市に赴任して1年半。新美さんは「もっとたくさんの人に紀の川市を訪れてもらい、地域の良さを知ってほしい。そのためにいろいろなアイデアを出していきたい」と笑顔で語る。
明るい性格と若さあふれる行動力で地域の人気者になりつつある。紀の川市商工観光課は「若い視点と柔軟な発想で地域にインパクトを与えてほしい」と期待を膨らませている。
隊員数は5年前の10倍、政府目標を4年早く達成
地域おこし協力隊は2009年度にスタートした。隊員の給料などの経費を国が1人当たり年間400万円を上限に負担し、自治体が委嘱する。任期は1年で、最長3年まで延長可能。任期中は地域おこし活動などに参加してもらい、任期を終えたあと定住してもらうのが目的だ。
スタートした2009年度は全国31自治体で隊員数89人にとどまったが、その後受け入れ自治体、隊員数とも急激に増える。受け入れ自治体は2012年度で200を突破し、2015年度に673、2016年度で886に達した。
隊員数は2014年度で1,000人の大台を超し、2015年度に2,625人、2016年度で3,978人に及ぶ。5年前と比べると10倍近い増加ぶりで、政府目標を4年も早く達成した。受け入れ希望の自治体急増で隊員の争奪戦となる例も一部で見られる。
総務省が任期を終えた隊員の定着状況を2015年度末現在で調べたところ、元隊員945人のうち、59%が活動地域かその近隣にとどまっていることが分かった。うち、活動地域の市町村に定住したのは47%で、その近隣市町村に定住した元隊員が12%いた。
2013年6月末現在の前回調査では活動地域か、近隣に定住した元隊員は56%。比率だけをみるとわずか3ポイントの増加だが、定着した元隊員数は2倍以上に増えた。
定住後の進路は就職が47%、就農が18%、起業が17%。前回調査に比べ、起業する人が増えているのが特徴だ。総務省地域自立応援課は「一定の成果が上がっている。今後も一層の定着を目指し、支援策を進めたい」と胸を張る。
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