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  • 2016/09/05 掲載

トヨタ自動車は「どうやって」大企業になったのか

連載:企業立志伝

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私たちは偉大な成功者を見る時、ついそこに至るまでのたくさんの苦労や努力を見落とすことがあります。同様に、今は大企業やエクセレントカンパニーと言われている企業でも、その昔、わずかの仲間でスタートを切った時代があったことを見落としてしまいます。しかし、こうした企業にも創業や成長のための計り知れない苦労と苦難があったのです。あの企業はどうやって大企業になったのか。第1回は世界的な自動車メーカーとなったトヨタ自動車を取り上げます。
画像
トヨタの会社代表標語「よい品よい考」
(写真:Bong Grit/Flickr

トヨタの歴史は「納屋」から始まった

できごと
1937トヨタ自動車工業設立
1938ジャストインタイム方式スタート
1947SB型小型トラック生産開始
1947SA型小型乗用車生産開始
1950トヨタ自動車販売設立
1953会社代表標語「よい品よい考」制定
1955トヨペット・クラウン発表
1957国産乗用車対米輸出第1号
1959元町工場操業開始
1964コロナRT40発表
1967トヨタ2000GT発表
出典:「トヨタ自動車75年史」より一部抜粋
 「豊田家の全財産を失っても、納屋だけは守れ」──トヨタ自動車社長・豊田章夫氏は、かつて父親である豊田章一郎氏(創業者・豊田喜一郎氏の長男。第六代社長)からそう言われたそうです。ここでいう「納屋」というのはトヨタグループの始祖・豊田佐吉氏が自動織機の改良と発明をするために父親の目を盗んでこもった納屋のこと。

 佐吉氏の発明の手法は実際に使われている織機を参考にして改善に次ぐ改善を重ねていくやり方で、こうした佐吉氏の発明にかける情熱や創意工夫、現地現物主義、「まずものをつくってみる」という改善の姿勢はトヨタを特徴づける企業文化として受け継がれています。

 アメリカのグーグルやアップルが「ガレージ」で誕生したように、トヨタは「納屋」からスタートした企業であり、佐吉氏の志を伝え、ベンチャー企業だったトヨタの原点を忘れないためにも「納屋」は絶対に守るべきものなのです。

 佐吉氏は優れた自動織機をつくることで日本の産業の発展に大きな貢献をしましたが、その佐吉氏の後押しもあって自動車をつくるという難事業に挑んだのがトヨタ自動車創業者で息子の豊田喜一郎氏です。

 当時、佐吉氏が興した会社は順調で「豊田財閥」と言われるほどに繁栄していましたが、それでも三井や三菱といった大財閥に比べれば小さな財閥でした。しかも自動車産業は日本ではとても成り立たないと考えられており、喜一郎氏自身「こんな大事業を向こう見ずでやる者はよほど阿呆者だ」と言うほどでした。

 ともに国産自動車をつくるという夢に乗り出した甥の豊田英二氏(第五代社長)に喜一郎氏はこんな言葉をかけたといいます。

「自動車がやれるかやれないか、そんなことは誰が決めるものでもない。現に俺たちはもう後には退けないんだ。お前も技術屋なら、俺と一緒にいい夢を見ようじゃないか」

なぜ「自力で」国産車をつくろうとしたのか

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 当時のトヨタ自動車は、まさに難事に立ち向かうベンチャー企業そのものでした。喜一郎氏は1933年に豊田自動織機製作所に自動車部を設置して、A1型試作乗用車やG1型トラックの製造に乗り出した後、1937年にトヨタ自動車工業を設立していますが、当時の自動車会社が置かれている状況について英二氏はこう話していたそうです。

「当時は自動車屋が成り立つかどうか分からんのだから、自動車会社なんかに入ってくる技術屋は、自動車が好きで好きでたまらない人たちが来たんだ。昔は会社がいつ潰れても仕方がない、とにかく何とか日本の自動車を自分たちでつくり上げようという意気込みで仕事をしたものでした」

 もちろん自力で自動車をつくることは簡単ではありません。ほぼ同時期に鮎川儀助氏によって現在の日産自動車も設立されていますが、同社が外国の技術を積極的に取り入れ、つくり方も外国にならったのに対し、トヨタは「日本の土壌を踏まえて日本式の製造方法」を模索したこともあり、最初は「欠陥車」とあきれられながら佐吉氏流の「改善に次ぐ改善」によって「まともな車」になっていくという苦労を味わっています。

【次ページ】トヨタ生産方式の原点は「ないないづくし」のものづくり
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