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  • 2019/07/08 掲載

エネルギー業界も直面する「GAFAに対する危機感」、デジタル化で何が変わるのか

連載:米国から見るエネルギー最前線

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世界では、IoT・AI・ロボットなどの技術革新により、第4次産業革命と言われるような経済のデジタル化が大きく進んでいる。エネルギー分野もその例外ではなく、デジタル化を進める数多くのアイデアが生まれており、この波にいかに乗るかが問われている。本記事では、エネルギー業界のデジタル化の流れを押さえるために、そのフロンティアであるシリコンバレーの歴史を紐解きつつ、その具体的な取り組みについて考えてみる。
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エネルギー業界にもデジタル化の波が押し寄せてきている
(Photo/Getty Images)

シリコンバレーから見るデジタル化の流れ

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 世界一のイノベーションの場とも言われるシリコンバレーは、起業頻度などは米国の他地域とそこまで変わらないが、顕著な特徴としてアップルやグーグルのように急成長する新しいデジタル企業が数多く生み出されることが挙げられる。

 第二次世界大戦や冷戦を背景にして、1939年創立のHP(ヒューレット・パッカード)、1968年創立のインテルなどがけん引する中で、当地にデジタル産業が育ち、1970年代にはアップルとマイクロソフト、1980年代にはシスコ、1990年代にはグーグル、2000年代初頭にはフェイスブック、2000年代後半にはエアビーアンドビーやウーバー、最近では金融・医療などのさまざまな分野で、既存産業を代替してしまうようなデジタル企業が生まれてきた。

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シリコンバレー誕生の地と言われるHPが生まれたガレージの標識
(写真:筆者撮影)

 また近年の第4次産業革命とも言われる特徴としては、AI・IoT・ロボット技術などを活用して、今までデジタル企業が提供してきたさまざまなプロセスの効率化や人が決めたルールに基づく自動化を超えて、データに基づく最適化や状況変化に自動適応する自律化を進める新ビジネス・新産業が生まれてきている。

 この第4次産業革命の動きは、少し前までは「ビックデータ」を前提にしていたが、最近では「スモールデータ」とも言われる限定的な量のデータの活用も進んできた。これにより、さらに多様な新ビジネス・産業が生まれて、第4次産業革命の流れや既存産業の代替による産業構造の転換が加速していく兆しが生まれている。既存産業に属する企業にとっては自らを「Disrupt」して事業構造転換を行う必要が高まる一方で、新ビジネス・新産業に挑戦するスタートアップにおいてはチャンスが増えているとも言える。

エネルギー業界に迫るデジタル化の波

 このようなデジタル化の動きは、エネルギー業界においても例外ではない。以前に紹介したエネルギー業界における5つのメガトレンド「5D」の一つと考えられる。

 エネルギー業界のデジタル化に情熱を燃やすクリーンテック起業家の宮脇良二氏は、スタンフォード大学における研究を踏まえて、近年、高い評価を受けているエネルギー関連のスタートアップはデジタル化関連が多く、2000年代後半にオバマ政権が巨額の補助金で誘発したクリーンテック・バブルの時とは異なる特徴があると話す。

 デジタル化のテーマとしては、各種設備のリアルタイムデータを基にした故障予知や、保守におけるドローンの利用、蓄電池を利用した電力消費の最適化、電力の分散型リソース(家庭に設置された太陽光発電や蓄電池、EVなど)を束ねて制御するVPP(バーチャル・パワー・プラント)、消費者同士が直接電力の売買を行うP to P取引などさまざまなものがあり、活発な議論が行われている。

 既存産業を補完する効率化・自動化に動きとしては、人が操作するドローンによる設備の点検・保守や、電力のスマートメーターによる遠隔管理などの動きがある。すでに日本でも取り組みが始まっているが、既存産業が行ってきた業務を効率化させる取り組みである。

 また既存産業を補完するもので、さらに最適化・自律化が進むと、保守に用いるドローンの自律制御化や、スマートメーター含む各種エネルギー設備のセンサーデータから故障を予知して最適化運転を行うような動きが見られる。

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Greentech Mediaのイベントに登壇した様子
 筆者がパネリストとして参加したGreentech Mediaのイベントにおいても、IT業界を含む多様なアクターが参加し、電力のデジタル化について活発な議論が行われていた。米国における関心の高さが伺える。

 ドローンやセンサーによる設備の点検・保守の高度化は既存のビジネスを補完するものだが、VPP、PtoP取引などは、旧来からの火力発電や中央給電司令所の役割を代替しうるものである。

【次ページ】デジタル化に突き進むドイツ電力会社
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