松岡功「ITキーワードの核心」:第17回「顔認証技術」
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本連載では、ITトレンドから毎回ホットなキーワードを取り上げ、その最新動向とともに筆者なりのインサイト(洞察)や見解を述べたい。第17回に取り上げるキーワードは「顔認証技術」。特にこの技術の利用の広がりについて、NECの先行事例を挙げながら考察してみたい。
成田空港が搭乗手続きシステムに顔認証技術を採用
「空港での最初の手続き時に顔写真を登録すると、その後の手続きにおいて搭乗券やパスポートを提示することなく“顔パス”で通過できる。これによって、成田空港はサッと手続きできて便利だと言われるようになりたい」──。こう語るのは、成田国際空港(成田空港)の濱田達也常務取締役だ。同社とNECが先頃、成田空港が2020年春に運用を始める顔認証技術を採用した搭乗手続きシステム「OneID」を公開した。
OneIDとは、パスポート、搭乗券、顔情報などの生体情報を紐づけた認証用のデータを搭乗手続きなどの活用した仕組みの総称である。今回、成田空港が導入するOneIDの顔認証にはNECの技術が採用された。
東京オリンピック・パラリンピックが開催される2020年を控え、政府機関として訪日外国人数を2020年に年間4000万人とする目標を掲げている中、空港を利用する旅客者数もこれから増加することが予想されている。
これに対し、国土交通省では空港における旅客手続きに最先端の技術やシステムを導入して手続き全体を円滑化し、旅客負担を軽減するための取り組みを推進している。
どのような技術で「顔パス」を実現するのか
では、成田空港が導入するOneIDの手続きの流れとはどのようなものか。
保安検査場では、従来搭乗券確認を行っていた入口をウォークスルーで通過した後、保安検査に進むことができるようになる。搭乗ゲートでもウォークスルーで通過できるようになる。これにより、搭乗までの煩わしい手続きが軽減され、スムーズに搭乗できるとともに、手続きにおける待ち時間の短縮が期待される。
また、顔認証技術を採用することにより、各手続きにおける本人確認精度が向上し、テロなどへの未然防止にも一層万全を期すことができる。加えて、労働力不足が深刻化する中、手続きの自動化により、スタッフの省力化、省人化が図られる。
こうしたOneIDのような取り組みは世界でも始まりつつあるが、国内では成田空港が先駆けて導入する。2020年春の運用開始時は、日本航空(JAL)と全日本空輸(ANA)の国際線がOneIDに対応する予定だ。
さて、本題の顔認証技術は、成田空港のOneIDではNEC生体認証「Bio-IDiom」(バイオイディオム)の中核技術で、世界最高の認証精度を有する顔認証AI(人工知能)エンジン「NeoFace」を搭載したシステムが採用されている。
ちなみにBio-IDiomは、顔、虹彩、指紋・掌紋、指静脈、声、耳音響など、NECの生体認証の総称である。また、NeoFaceの認証精度が世界最高なのは、米国国立標準技術研究所(NIST)の顔認証技術ベンチマークテストで4回連続の第1位評価を獲得していることが証明している。
なお、NECの顔認証技術を利用したシステムは現在50カ国以上で採用されており、空港での主な適用事例としては、アトランタ国際空港の搭乗手続きシステム、ジョン・F・ケネディ国際空港の入国審査用システム、ブラジルの14主要国際空港の税関向けシステムがある。
NECの石黒憲彦 取締役執行役員副社長は記者会見で、「成田空港におけるOneIDは、AIなどのデジタル技術によるイノベーションの象徴だ。顔認証技術の利用は今後、幅広い交通機関やイベント、小売業、医療、オフィスなどにも広げていきたい」と意欲を語った。
【次ページ】米国では「顔認証」の法規制を求める声も
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