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  • 2024/08/14 掲載

LNG(液化天然ガス)とは何かをわかりやすく解説、日本が超期待する主力燃料のすべて

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近年、環境に優しいエネルギーとして注目を集めている「LNG(液化天然ガス)」。燃焼時のCO2排出量が他の化石燃料と比較して少なく、環境への負荷が小さいことから、石油や石炭に変わる火力発電の主力燃料として期待されている。しかし気候変動問題に加え、エネルギー供給の多くを輸入に頼る日本では、ロシアによるウクライナ侵略といった近年の世界情勢による影響も受けている。国内では、GX実現やLNGの安定供給に向けた取り組みが進められているところだ。本記事では、LNGの特徴、メリット・デメリットのほか、LPGとの違いやLNGを取り巻く現状と今後の課題などについて、わかりやすく解説する。
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LNG(液化天然ガス)とは何か
(Photo/Shutterstock.com)

LNG(液化天然ガス)とは

1ページ目を1分でまとめた動画
 LNGとは、メタンを主成分とした天然ガスをセ氏マイナス162度まで冷却して液体化させたもののことで、正式名称はLiquefied Natural Gas(液化天然ガス)。

 天然ガスは、常温・常圧時では気体であるが、それを冷却し液体にすることで、その体積は大幅に減少し、大量貯蔵や輸送を行いやすくなる。この特徴から、エネルギー資源に乏しく輸入に頼らざるを得ない日本などの国にとって調達しやすいため、世界中で利用されている。

 日本におけるLNGは、都市ガスの原料や火力発電に欠かせない燃料だ。ただ国内で供給されるLNGのほぼ全量が、海外からの輸入に頼っている状況である。主に船を使って輸入されたLNGの半分以上が発電用として、30%強が都市ガス用として利用されている(図1)。

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図1:LNGは電力や都市ガス向けに使われることがほとんどを占めている
(出典:資源エネルギー庁より編集部作成)

LNGとLPGの5つの違い

 LNGとよく似た言葉に「LPG(液化石油ガス、Liquefied Petroleum Gas)」がある。LPGはプロパンガスやブタンガスを原料としており、日本では「LPガス」や「プロパンガス」の呼称で知られている。

 LNGとLPGには、主に次の5点に違いがある。LPGのメリット・デメリットと併せて確認していこう。
  1. (1)重量
  2. (2)火力
  3. (3)供給方法
  4. (4)液化温度
  5. (5)用途
(1)重量
 LNGは空気より軽く、LPGは空気より重い。空気の重さを1とした場合、LNGは0.6、LPGは1.5となる。

(2)火力
 LPGの火力はLNGの2倍強である。LNGの発熱量が立方メートル当たり45メガジュールであるのに対し、LPGは立方メートル当たり102メガジュールという違いがある。ただし、家庭のガス機器は火力が決まっているため、同じガス機器であればLPGでもLNGでも火力は変わらない。

(3)供給方法
 LNGは、天然ガスの状態であれば地下にパイプラインを埋設して消費場所に供給するが、LPGはガスボンベによる供給が一般的だ。ただ、共に液化した場合は体積が縮小する特長を生かして、船舶や自動車などで大量輸送できる。

(4)液化温度
 LPGには、LNGよりも高い温度で液化する(液化石油ガス)という特徴がある。原料のプロパンがセ氏マイナス42度、ブタンがセ氏マイナス0.5度で液化するためだ。つまり、LPGは気化する温度がLNGよりも高温のため、気化する割合が少なくなるため、長期間の貯蔵に適していると言える。

(5)用途
 LNGが火力発電や都市ガスの燃料として主に用いられることに対し、LPGは主に家庭用ガスや工業用ガス、化学原料などに使用される。

■LPGのメリットとデメリット
 LPGのメリットには、都市ガスよりも発熱量が大きく、配管不要で全国どこでも使用できることなどが挙げられる。ガスボンベさえ配置できれば全国どこでも使用可能なのだ。液化させてボンベに詰めて運べるなど利便性が高いほか、停電時でも使用できるため災害にも強い。

 一方、LNGと比較して価格が高いことがデメリットだ。LPGの料金には、ガスボンベや供給設備などの設置費用のほか、運送費や人件費などが含まれる。また、LNGは2017年に開始した都市ガスの小売全面自由化に伴い、ガス会社による価格設定の自由度が増した一方、LPGはその以前から価格規制がなく、事業者ごとに自由に料金を設定できていたため、比較的割高になりやすい。

LNG発電の2つのメリット

 LNGを活用した発電のメリットは、主に次の2つだ。
  • CO2排出量が少ないクリーンなエネルギー
  • 供給の安定性に優れている
 ここでは、それぞれのメリットについて詳しく紹介する。

■CO2排出量が少ないクリーンなエネルギー
 LNGは、環境への負荷が小さいエネルギーとして知られている。火力発電で用いられる石油や石炭といった燃料に比べて、CO2(二酸化炭素)やNOx(窒素酸化物)などの発生量が少ないためだ。

 たとえば、各燃料を燃焼して同じ熱量を得るために排出されるCO2の比をおよその係数で表すと、「石炭(輸入一般炭):原油:液化石油ガス(LPG):天然ガス(LNG)=10:7.3:6.3:5.4」となり、LNGのCO2排出量が最も少ない。

 また、NOx(窒素酸化物)は石炭に対して2、3割程度と少なく、SOx(硫黄酸化物)や煤塵(ばいじん:物を燃やした際に発生するススなどの微粒子)もほとんど発生しない。そのため、LNGは環境に優しいエネルギーとして注目を集めている。

出典:経済産業省・環境省「特定排出者の事業活動に伴う温室効果ガスの排出量の算定に関する省令」別表第一(第二条関係)2024年4月1日

■供給の安定性に優れている
 供給の安定性に優れている点も、LNG発電のメリットの1つだ。

 液体燃料であるLNGは、船による多国からの調達が可能だ。一般的に、天然ガスを気体のまま輸送するには、パイプライン(天然ガスや石油を輸送するために敷設されるパイプ)を通す方法が用いられる。一方、液化して容積も1/600に圧縮されているLNGは船で遠方まで大量に運搬できるため、さまざまな国や地域から調達することが可能だ。

 2021年度時点で、日本におけるLNGの輸入元は豪州やマレーシアをはじめとしたアジア大洋州地域で50%を超えている。一方、中東への依存度は約14.9%と、石油に比べて低い(図2)。

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図2:LNGの輸入元はアジア太洋州地域で50%を超える
(出典:資源エネルギー庁より編集部作成)

 輸入元がいずれかの国に偏っている場合、現地でトラブルが生じた際には、その影響を直接受けるリスクが高まる。不安定な状況が続く中東情勢の影響を受けにくいことは、供給の安定性につながるだろう。

 また東京電力ホールディングスによると、LNG船1隻で運べる容量は6~7万トンにも及ぶ。LNG船1隻だけの運搬で、一般世帯であれば約5000万世帯分(1日で使用する電気で換算)を発電することが可能だ。

LNG発電のデメリット

 LNGを活用した発電には、デメリットも存在する。主なデメリットは、以下の2点だ。

  • 輸送にかかるコストが高い
  • 地球温暖化につながる可能性がある
 各デメリットの詳細を確認していこう。

■輸送にかかるコストが高い
 1つ目のデメリットは、輸送コストの高さだ。天然資源に乏しい日本は世界有数のLNG輸入国である。2021年度における天然ガス・LNGの輸入割合は極めて高く、約97.8%にも上る。国産天然ガスの割合は約2.2%だ。

 「輸入依存率が高い」ということは、そのぶん輸送にかかるコストも高くなる。またLNGの保存には冷凍設備が必要なため、保存期間が長くなるほどコストがかさみやすい。このように、輸送に伴うコストの高さは、LNG発電のデメリットに挙げられる。

■地球温暖化につながる可能性がある
 2つ目のデメリットは、地球温暖化につながる可能性があることだ。

 石油や石炭と比べCO2の排出を抑えられる点は、LNG発電のメリットだ。ただし、LNGは再生可能エネルギー(太陽光・風力・地熱など)のように、CO2排出量が完全にゼロというわけではない。LNG発電に頼り過ぎれば地球温暖化リスクは拭い去れないため、注意が必要だ。

 また、天然ガスを採掘した際にはメタンガスが漏れ出す可能性があり、その場合は地球温暖化を進行させる恐れもある。

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次のページではLNGの価格動向や用途、日本政府による動きなどについて解説します
【次ページ】LNGの用途と事例

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