- 会員限定
- 2025/04/18 掲載
【単独】量子コンピューター企業「IQM」とは何者か? 3年で売上「2万2485%」増の理由
3年で「2万2485%」成長、IQMとはいかなる企業か?
2018年に創業したIQMは、瞬く間に欧州最大の量子コンピューター企業に成長した。IQMの基本情報 | |
概要 | フィンランドのエスポーに本社を置く量子コンピューターのスタートアップ企業 |
設立年 | 2018年 |
拠点 | フィンランド、スペイン、フランス、ドイツ、シンガポール、米国、日本、ポーランド、イタリア |
驚くべきなのは、その成長速度だ。2024年デロイトが発表したフィンランドで急成長した企業リスト40社の1位となり、企業収入は2020年から2023年で7万5,000ユーロから1,693万9,000ユーロに増加し、2万2485%の成長を見せた。
現時点で8基を欧州の大学や研究機関に納入、さらにアジアでも2024年末に韓国忠北大学校と台湾半導体研究センターへの納入が決定し、2025年2月には日本支社の法人登記を行うなど、今後アジアでの事業拡大を狙う。2024年12月には、日本の産業技術総合研究所(AIST)との間で事業提携に関するメモランダムも交わされた。
市場も揺れた……エヌビディアCEO「実用化には20年」発言
グーグル独自の量子コンピューティングチップ「Willow」の発表で量子コンピューターの注目度が再燃する一方、2025年はじめ、エヌビディアのジェンスン・ファンCEOが「量子コンピューターの実用化には20年程度かかる」と発言したことが話題となった。IQMはエヌビディアの量子コンピューティングプラットフォーム「CUDA-Q」とも提携しているが、この点についてはどう考えているのか、IQM創業者の1人、ユハ・ヴァルティアイネン博士に尋ねた。
「何をもって『実用化』と言ったのかは疑問に感じている。IQMはすでに完成した量子コンピューターを、欧州を中心に納品し、実際に運用されている。たしかに従来型の高性能コンピューターが完全に量子コンピューターに置き換わるのはまだまだ先のことだろう。しかし、IQMは欧州最速のスパコンであるフィンランドのLUMIと接続してハイブリッドを披露しているし、高性能コンピューターの機能の一部を量子コンピューターが担うことで今後のAI時代に対応していくことは十分に可能だ。ファン氏は数十年と語ったが、ビル・ゲイツ氏は『今後5年以内に量子コンピューターの時代が到来する』と語っているし、IQMのロードマップでも同じく量子の時代はもっと早く訪れると予測している」(ヴァルティアイネン博士)
米調査会社ハイペリオン・リサーチの予測でも、量子コンピューター市場は2023年の8億4,800万ドルから2026年には150億ドルに成長するとしている。実際には米国や中国企業が新しい量子コンピューターの方式やチップなどを次々に開発し、この成長カーブを上回る可能性も指摘されている。
【次ページ】欧州最大の量子コンピューター企業誕生のきっかけは、まさかの日本人
関連コンテンツ
PR
PR
PR