連載:中国への架け橋 from BillionBeats
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国家を挙げて社会信用システムの構築に取り組んでいる中国では、信用失墜者に対する懲罰や遵守時の奨励を社会に実装するための動きが見られるようになってきた。そのような中、2020年末までに常住人口全員を対象とした「個人誠信分(個人信用スコア)」プロジェクトを北京市が発表した。将来的には、この個人信用スコアと最新テクノロジーを組み合わせることで、国民全員の信賞必罰を実現する時代が到来するかもしれない。
「信用があれば何でも容易に」プロジェクト始動
中国政府が今、国家を挙げて社会信用システムの構築に取り組んでいることを知っているだろうか。
現在、中国政府による社会信用システムの構築は、2014年6月27日に国務院より発表された『社会信用システム建設計画要綱(2014-2020年)』(以下『要綱』)に則って推し進められており、目標には「違約時の懲罰や遵守時の奨励策を全面的に機能させる」と明記されている。
最近、この「奨励」そして「懲罰」システムの社会実装に向けた新しい動きが見られるようになってきた。
まず「奨励」については、2018年6月から国家発展改革委員会が中心となり「信易+」プロジェクトが始まっている。「信易」とは、「『信』用があれば、何でも容『易』になる」という意味で、信用を守る人は生活のさまざまなシーンで便宜を受けやすくなるという考え方だ。
たとえば、「信易貸(ローンが受けやすい)」、「信易行(旅行に行きやすい)」などの構想が挙げられている。また、中国の公的機関での手続きは煩雑で、長時間待たされたり若干の不備で何度も往復を余儀なくされたりするケースも少なくないが、「信易批(批准を受け易い)」構想では、信用のある人が優先的に審査を受けたり、ネット上で手続きできたりするようになるという。
信用がなければ飛行機にも乗れない
一方、「懲罰」に関しては比較的早い段階から運用が始まっている。中国では「法律で定められた義務を履行できる能力を持っているのに履行しない人」を「信用失墜被執行者」とし、中国語で借金を踏み倒す人のことを指す「老頼(ラオライ)」と俗称で呼ばれている。
中国最高人民法院(最高裁判所)から公布された「信用失墜被執行者リスト情報の公布に関する若干の規定」が2013年10月から施行されており、この信用失墜被執行者の名前と身分証番号の一部がネット上に公開されている。
一度「信用失墜被執行者」と認定されると生活の至る所で制限を受けるようになる。2015年に公布された「被執行者の高額消費および関連消費の制限に関する若干の規定」により、信用失墜被執行者の一部の消費が制限されているためだ。
具体的には、不動産の購入や改築、高級オフィスの賃貸などが禁止され、子供を学費の高い私立学校に入れることもできなくなる。また、飛行機や一等寝台車などの利用も禁止され、旅行にも行けず高級ホテル、ゴルフ場も利用できない。
この「ブラックリスト」は2013年から中国人民銀行征信センターによって管理されている企業および個人の信用情報基礎データベースに反映され、全国の金融機関で利用されている。また、2015年には「芝麻(ジーマ/ゴマ)信用」との情報共有を始めている。同リストが民間の信用調査機関と共有されるのは初めてである。
【次ページ】「信用スコア」ビジネスの芝麻信用、そして監視カメラネットワーク
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