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- 2017/12/27 掲載
貨客混載が本格化、タクシー会社が宅配便の荷物を配達しはじめた
宅配便をタクシーが配達したら違法だった
だが、それを横目に、宅配便の小さなトラックは忙しそうに街の中を走り回っている。ネット通販の普及で配達個数が増え、ドライバーの忙しさは増すばかりだ。
「タクシーの運転手はヒマそうだから、タクシーで宅配便を配達すればいいのに」──見ている市民がそう思っても、それはできない。もしそれをやったら法律に違反し、違法な営業をしたと運輸局に摘発される。
「道路運送法」という法律では、旅客自動車運送事業の許可を受けたタクシーは旅客運送に特化するように、貨物自動車運送事業の許可を受けたトラックは貨物運送に特化するように、義務づけられている。
たとえば、タクシー会社が小型トラックも保有していて、貨物自動車運送事業の許可も受けていたら、タクシーの利用が少ない時間帯にタクシードライバーを小型トラックのほうに振り向け、委託された宅配便を配達させることはできる。
最大積載量5トン未満なら中型免許(旧・普通免許)でトラックも運転できる。しかし、小型トラックではなくタクシー車両に宅配便の荷物を載せて運ぶことは、法律で禁じられていた。
一方、トラックが運賃を取って人を便乗させることも、荷台に人を乗せて運ぶことも法律で禁止されていた。映画で、トラック野郎が行く先々で一目惚れした女性を乗せても、運賃を請求するような野暮はしていない。
同じ車両を使って人も貨物も一緒に運ぶという事業のかけもちを「貨客混載」と呼んでいるが、旅客自動車運送事業の許可を受けた自動車でそれができるのは乗合バス(路線バス)だけで、それも道路運送法第82条で最大重量350キログラムに制限されていた。そのため、バスの貨物輸送は重量の軽い宅配用の新聞などに、ほぼ限られていた。
9月、「貨客混載」を認める規制緩和が実現
そんな状況に2017年、変化が訪れた。国土交通省は旅客自動車運送事業と貨物自動車運送事業の間の垣根を取り払う「貨客混載」を、真剣に検討し始めた。6月30日、「自動車運送業の生産性向上プラン」を発表し、パブリックコメントの募集を始めた。その「活用円滑化案」には「タクシーは貨物自動車運送事業の許可を取得すれば荷物を運ぶことを可能とする」とあった。貸切バスも同様で、乗合バスは貨物自動車運送事業の許可を取得すれば350kg以上の荷物を運ぶことが可能。反対に、トラックも事業者が旅客自動車運送事業の許可を、ドライバーが第二種免許を取得すれば運賃を取って人を運ぶことが可能になり、旅客運送と貨物運送の相互乗り入れが実現するという内容だった。
ところが、タクシー、トラック、貸切バスの規制緩和には「過疎地域に限る」という但し書きがついており、過疎地域とはいったいどこを指すか、その時点では明確でなかった。
8月8日に明らかになったパブリックコメントへの回答では、過疎地域とは過疎地域自立促進特別措置法で「過疎地域又は同過疎地域とみなされた区域」の人口が3万人に満たない市町村で、後に具体的な地名が各地方運輸局のサイトで公表されている。だがこの但し書きが今、批判の的になっている。
そんな問題点を積み残しながら、「貨客混載」の規制緩和を盛り込んだ新しい制度が9月1日に施行され、タクシーやバスの貨物自動車運送事業の許可申請、トラックの旅客自動車運送事業の許可申請の受け付けが始まった。申請には最低車両台数や、積載できる貨物重量の上限、運行管理者やその補助者の設置などの許可基準が設けられた。
【次ページ】「過疎地域に限る」で規制緩和は骨抜きか?
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