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いま製造業は大きな変化に直面している。従来からあったIT化・グローバル化はますます進展し、今やビジネスモデルの変革まで迫れていると、米PTC 上級副社長のロブ・グレムリー氏は指摘する。グレムリー氏は、製造業の変化を加速する7つの力について解説するとともに、こうした変化に対して、実際の製造業企業がどう受け止めているのかについて調査結果を発表した。
米PTC グレムリー氏によれば、「いま製造業にビジネスモデルの大変革が起きている」という。こうした変革をもたらしているのが、企業の外部環境を取り巻く「7つの力」だ。
1つめにグレムリー氏が挙げたのが「Digitization(デジタル化)」だ。これは特に新しい考え方ではなく、これまでも進んできたものと言える。ただ、2次元から3次元化への流れ、映像の画質向上もあり、まるで本物のようなデータを見ながら、さまざまな手続きにアクセスできるようになっている。
2つめは、Globalization(グローバル化)だ。製品の開発はどんどんグローバル化している。大企業に限らず、いまや地域の小売店もどんどんグローバル化しているという。
3つめは、Regulation(法規制)だ。グローバル化は、さまざまな作業負荷の分散につながっているが、その一方でそれぞれの国の規制に対応する必要が著しく出ている。従来は2社間のビジネスの契約で済んでいた問題であっても、消費者保護の観点から政府が介入する機会が増えている。法規制を作る期間や、規制そのものも増えており、設計部門、調達部門、販売部門など、部門を問わず対応が求められている。
たとえば、米国政府が最近作ったある法律は、コンゴ共和国で作られる4種類の鉱物と300種類の派生物について、含有率が一定以下にしなければならないというものであった。この法律の監督官庁はSEC(証券取引委員会)という製造業とまったく関係ないところが担っており、企業はこうした関係省庁の調整も必要になっているという。
4つめは、Personalization(個人化)だ。製品の多様性を求める声が進んでいる。たとえば、農家のトラクターでは、農家が求めている構成で(フルカスタマイズした状態で)製品をおさめる必要が出てきているという。スウェーデンの商用車大手、ボルボによれば、出荷されているトラックの種類を分母に、全出荷台数を分子にした場合の割合はわずか1.4台。つまり、2台として同じものがないことになる。
一般消費財においては、たとえばiPhoneなどは消費者側でアプリをインストールするなどして自由にカスタマイズできるようにしている。即ち、メーカー出荷時点でいくつかの容量モデルは存在しているが、実際に消費者の持っているアプリでみると、同じものは2つとないようになっているということだ。
5つめは、Software-intensive Products(ソフトウェア内包型製品)だ。先のiPhoneの例が端的だが、ソフトウェアの重要性がさらに高まっているという。航空機などはもちろん、家電などでもソフトウェアを搭載する例は増えている。ある一般消費者向け芝刈り機のメーカーの製品は、「まだこれからというところだと思っていたが、実際はもう既に100万行くらいのソフトウェアが組み込まれていた」(グレムリー氏)という。
農業分野における技術革新も起きている。たとえば、あるトラクターメーカーは、衛星誘導型トラクターを目指しているという。このトラクターは衛星から位置を測定し、人が運転をする必要がなく、勝手に動いてくれる。農家の人が肥料を配布するとき、どうしても10%ぐらいは配布エリアが重なってしまう。この点、GPSで自動化した機械ではわずかな誤差で済むため、それだけ肥料の量を抑えることができる。
6つめは、Connectivity(接続性)だ。今やIPアドレスがあれば、すべてがつながることができる。たとえば、靴メーカーのナイキが展開する「Nike+fuelband」は、自分の運動量や消費カロリーなどを測定し、それをネット上で管理することができる。さらに計測したデータを仲間と共有するといった取り組みも始まっている。
シスコの調査によれば、現在インターネットにつながっている製品は1%程度にすぎない。今後、残りの膨大な機器がネットワークにつながっていくという。
たとえば、フィリップスの電動歯ブラシ、ソニッケアーのある商品ではブラシがネットにつながる。歯がちゃんと磨けているのかどうかを親に知らせることができるという。
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