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- 2019/04/11 掲載
AIで命を守れ! 日立物流が語る「安全運行管理システム」の作り方
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「漫然運転」への対策として機械学習を利用したシステムを開発
ABEJA主催 「SIX 2019 」に登壇した日立物流 スマートロジスティクス推進部 部長の舘内直氏はまず、機械学習を活用した安全運行システム開発に至った経緯を紹介した。舘内氏は、全日本トラック協会が2016年にまとめた統計資料「事業用貨物自動車の事故類型別事故件数の構成率」を示し、物流業者の車両が起こす事故の半分以上が追突事故であることを示した。
さらに、全日本トラック協会が2016年にまとめた統計資料「法令違反別の死傷者事故件数及び構成率」から、事故全体を見ると最も多い原因は安全不確認だが、死亡事故に限ると、最も多い原因が漫然運転であることを指摘した。そして物流業者としての経験から、「漫然運転は最も危険で対策を打ちにくい」と語った。実際に、日立物流でも目を開けたままでも追突事故を起こしてしまったという例があるという。
そのような事故を起こした運転手の話を聞いてみると、「家族が病気で入院していて気になっていた」「親の介護で疲れ切っていた」と、個人的に重大な課題を抱えており悩んでいたことが分かった。そのため、目は開いているけれど、見ていないという状態、つまり漫然運転状態になって、瞬間的に意識が飛んでいたと考えられるという。
日立物流では運行出発前に、必ず運行管理者と運転手が対面で点呼をしているが、舘内氏は「このような事故は通常の点呼による健康状態の確認だけでは防げない」と語った。
先述の問題を解決し、事故を防いで運転手の命を守る。そのために「スマート安全運行管理システム(Smart & Safety Connected Vehicle:SSCV)」の開発を進めていると開発に至った経緯を説明した。
「後付け可能」と「つながること」が絶対条件
近年は、緊急時自動ブレーキシステムを搭載しているトラックも増えているが、日立物流で運用している車両をすべてこのシステムを搭載しているものに入れ替えるには、かなりの時間とコストがかかってしまう。後付け可能な緊急時自動ブレーキシステムがあれば望ましいが、舘内氏は「残念ながら実現可能性は低い」と考えているという。
組織として事故防止に取り組む以上、いつ、何回、危険な状況が発生したのかなどのデータを管理者が把握できなければならないが、通常、このようなことは運転手しか知らない。
そこで、インターネットに「つながる」機能を持たせて、各種センサーの計測値や、ドライブレコーダーが録画した画像をリアルタイムでクラウドにアップロードする仕組みが必要になるというわけだ。
また舘内氏によると、「疲労科学」という医学領域での調査により漫然運転の原因は「慢性疲労と蓄積疲労」だと判明しているという。そこで、SSCVの開発プロジェクトでは、疲労科学の権威である学識者にも参加してもらっており、「疲労」「車両の挙動」「事故リスク」の相関関係を解明していくという目標を設置した。
舘内氏はここで、SSCVが目指す姿を現した図を示した。
運転手が出発前に生体情報を計測し、この時点で危険と判断したら「今日は危ない」と警告を出す。さらに、運転中も車線からの逸脱や、急ブレーキ、急発進、運転手の生体情報などのデータをクラウドに送信し、危険な状況が発生したらリアルタイムで管理者に通知する。
舘内氏は「運転席で起こっていることを、効率よく管理者が捉えて、フォローできるかがポイントの1つ」と語った。
【次ページ】プロジェクト進行に関する従来の考え方を大きく変えなければならない
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