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  • 2019/03/08 掲載

クリーンテック(Cleantech)とは何か? エネルギー産業を変える「3D」「5D」の潮流

新連載:米国から見るエネルギー最前線

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世界のエネルギー構造・産業は、変革の波にさらされている。足下ではシェール革命の影響が大きいが、さらなる変革が同時並行的に進行している。スタンフォード大学では、それを「Decarbonization(脱炭素化)」「Decentralization(分散化)」「Digitalization(デジタル化)」という3つのメガトレンド(=「3D」)として教えられる。さらに日本では「Depopulation(人口減少)」と「Deregulation(自由化)」の2つを加えた「5D」も無視できない。今、シリコンバレーではこの「3D」「5D」をビジネス機会としてとらえたスタートアップがいくつも起ち上がり、日本企業を含む大手を巻き込みながら時代の波に適応しようと奮闘している。
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世界のエネルギー産業の構図が大きく変わろうとしている
(©luigi giordano - Fotolia)

注目される「Cleantech(クリーンテック)」とは?

 先日、新しい「Global Cleantech 100」が発表となった。本レポートは、Cleantech Groupとパートナーシップを持つCleantech分野のエキスパート陣が、持続可能な成長に寄与するスタートアップの中で、5~10年以内に大きな市場インパクトをもたらす可能性が最も高い民間企業のベスト100を選出して、毎年1月にCleantech Forumというイベントで発表しているものである。

 このレポートを眺めると、エネルギー分野などにおける最近のイノベーション・トレンドを一定程度、理解することができる。ちなみに今年のCleantech Forumには、日本企業から東京ガスがスポンサーとして名を連ねており、Acario Innovationという投資子会社を起ち上げてThe Westly GroupやActivate Capitalといった米系VCへ出資を実施したり、Plug&Playというアクセラレーターのエネルギープログラムに参加するなど、シリコンバレーでの活動を活発化させている。

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Cleantech Forumの様子

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 Cleantech Groupは、シリコンバレー周辺を拠点とし、この分野のハブ組織の一つとして調査・コンサルティング・イベントなどを行い、エネルギー関連テクノロジーやそれに携わる企業・組織などを指す「Cleantech」という言葉を有名にした組織である。

 「Cleantech」という言葉の定義は諸説あるが、その定義論や由来は、この分野において世界で最も大きいコミュニティとも宣伝されているCleantech.orgのホームページにおいて、その創設者であるニール・ダイクマン氏が解説している。

 その定義とは、規制ドリブンのニュアンスがあるとされるGreentechという言葉と対比しつつ、市場経済ドリブンの「世界規模の課題に対する解決策を提供しながら、投資家および顧客に競争力のある収益を提供する新技術および関連するビジネスモデル」であるとしている。

 この定義に見られる通り、Cleantechという言葉は、実はエネルギー分野にとどまらない。最新のGlobal Cleantech 100にノミネートしたスタートアップの分野を、10年前のものと比較してみると、多様性が増していることがわかる。エネルギー・電力分野が今でも最も数の多い分野ではあるが、交通・ロジスティクスや農業・食料の分野を中心にして、今後の成長が見込めるスタートアップが多様になってきていることが示唆される。

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Global Cleantech 100:2009年と2019年の比較

 なお、ニール・ダイクマン氏は、先日の上院選挙でもテキサス州から出馬した人物であるが、世界におけるエネルギーの首都(エネルギー・キャピタル)とも言われるテキサス州の出身・在住で、オイルメジャーのシェル(Shell)が設立したCVC(コーポレート・ベンチャー・キャピタル)などで投資を行うなど、この分野の有識者の一人である。

エネルギー関連スタートアップへの投資を加速する日本企業

 エネルギー関連の中では、コスト低下や政府補助に助けられて普及が進む変動型の再生可能エネルギーに合わせて、蓄電系、スマートグリッド系、EV系といったスタートアップが多くなっている。

 本分野における日本企業のシリコンバレーにおける活動としても、日本企業の中では比較的早く活動を開始した三井物産が、蓄電池等のエネルギーマネジメントを手掛けるStem社や電動バス等を手掛けるProterra社、VPPのソフトウェアプラットフォームを提供するSunverge、一般消費者向けにデータ解析やデジタルマーケティングを駆使してクリーン電力を提供するArcadia Powerなどに投資を実施しており、順調に事業が拡大している。

 また大阪ガスが、WiLというVCに出資するだけでなく、蓄電池等を活用したVPPソフトウェアを手掛けるGeli社に投資をしつつ連携をして、家庭や企業に設置してある定置型蓄電池を遠隔制御する実証実験を日本で実施するといった活動を行っている。

 中部電力も東京ガス同様にThe Westly Groupという米系VCに出資をしてシリコンバレーでの情報収集活動を行っており、日本において起ち上げた「これからデンキ」という新たな体験型の電気サービスは、シリコンバレーから見ても先進的である。

 また、日本のアクセンチュアのエネルギー部門のトップをしていた宮脇良二氏は、先日アークエルテクノロジーズ社を創設して独立したが、同分野で新たなビジネスモデルを構想すべく今はスタンフォード大学の客員研究員も務めている。

 これらの動きは、太陽光などの分散型電源が普及するといった「Decentralization(分散化)」の波や、蓄電地やEV含めてソフトウェアでの制御や最適化などが可能となってきている「Digitalization(デジタル化)」の波、電力・ガス市場の自由化によって新しいサービスの形態を生み出して競争優位を築かなくてはいけないという「Deregulation(自由化)」の波などの影響が強い。

【次ページ】脱炭素化に向けて期待される多様な選択肢
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