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グーグルやソフトバンクの経営層など、IT系大企業のトップを続々と輩出していることから、日本でも一躍注目が高まっているのがインド工科大学(Indian Institutes of Technology、IIT)だ。近年では、グーグルCEO サンダー・ピチャイ氏や元ソフトバンク副社長 ニケシュ・アローラ氏のような大企業のエリートばかりでなく、外部機関と共同で国内起業家の育成にも取り組んでいる。名実ともに、世界を舞台にIT界をけん引する人材はいかにして育成されているのか。注目のIITを徹底分析する。
エクシール・エフ・エー・コンサルティング ガガン・パラシャー、大塚賢二
エクシール・エフ・エー・コンサルティング ガガン・パラシャー、大塚賢二
ガガン・パラシャー
IILM卒。財務分析、投資コンサルティング、ビジネス調査の経験を経てBig4系列で法人事業コンサルティングに従事。その後X-Ciel Consulting Pvt. Ltd.を立ち上げ、エクシール・エフ・エー・コンサルティングに参画。インド北部ノイダで活躍中の気鋭のコンサルタント。
大塚賢二
東京大学法学部卒。金融機関、Big4系列コンサルティングファーム勤務等を経て現在、株式会社ファルチザンの代表を務める。中小企業の海外進出、金融機関の経営管理・内部統制の支援に注力。エクシール・エフ・エー・コンサルティングではガガン・パラシャーとともに中小、ベンチャー企業のアジア進出を支援。
インド工科大学、通称IITとは
第二次世界大戦後の1947年に独立して以降、経済的発展を模索していたインドでは、高度な教育が求められていた。
その中心課題は、製造業で活躍できるエンジニアの育成、新興企業の立ち上げ、雇用の促進であった。そして、こうした課題に応えるため、政策的に教育機関が設立された。
IITは、1961年に「1961年工科大学法」で「国家的重点機関」として設立されたインド国内の複数の大学の総称である。このため、総称としての大学の集合体を表す場合には「IITs」と呼ばれることが多いが、本稿では、単独の大学を指す場合を含め、便宜上すべてIITと表記する。
最初のIITは、1951年にカラグプルに創設され、次いで1958年にボンベイ(現ムンバイ)、1959年にマドラス(現チェンナイ)とカンプール 、1961年にデリー、1994年にグワーハーティー、2001年にはルールキーに次々と設立された。
2011年に工科大学法が改正され、さらに多くのIITが認可され、その数を増やした。2008年から2009年にかけてガンディーナガル、ハイデラバード、パトナー、ロパール、ブバネーシュワル、ジョードプール、インドール、マンディの8カ所に設置されたIITは、改正後の工科大学法に基づくものだ。
これらのうち、ハイデラバード校は日本の外務省と国際協力機構(JICA)から技術・財政支援を受けて設立された経緯があり、人的交流や共同研究など、日本とのつながりが深い。その後、2012年にヴァラナシ・ヒンドゥー大がIITとして認められた。
さらに関連法令の改正により、2015年から2016年にかけてティルパティ、パラッカド、ダルワッド、ビラーイー、ゴア、ジャンムーの6カ所でIITが認可された。また、ダンバードのインド鉱山学校がIITの列に加わったことで、IITは現在、合計23校を数えるまでになっている。
卒業生にはグーグルCEO ピチャイ氏、元ソフトバンクアローラ氏も
ここで、主要な卒業生を紹介したい。
まずは、グーグルCEOのサンダー・ピチャイ氏。IITカグラブル校を卒業し、スタンフォード大学で理学修士を取得、ペンシルヴァニア大学でMBAを取得している。元ソフトバンクグループ副社長で現パロアルト・ネットワークスCEOのニケシュ・アローラ氏はIITヴァラナシ校を卒業した。
サン・マイクロシステムズ共同創業者のヴィノド・コスラ氏はIITデリー校の卒業生だ。同氏は世界長者番付にも登場する。また、インドのEC大手フリップカートを創業したビニー・バンソール氏とサチン・バンソール氏もIITデリー校の出身だ。
フリップカートは一度ソフトバンク・ビジョン・ファンドから25億ドル出資を受けたが、その後ウォルマートとアマゾンが争奪戦を繰り広げ、160億ドルでウォルマートが競り勝った。これにより、ソフトバンク・ビジョン・ファンドが株式売却40億ドルを手にしたという一連のドラマがあった。
もちろんこのほかにも、閣僚、経営者、研究者など、インドを代表する人材を輩出している。
一番のIITはどこか?
すべてのIITは、1945年に設置された全インド技術教育協議会のガイドラインや指令に従いながら、1961年に「国家的重点機関」としても公式に位置づけられた。IIT各校はIIT協議会を通じて校務を連携しているものの、それぞれ独立した組織である。IIT協議会の職権上の理事長は、人材開発相となっている。
学校運営の企画・実施を自ら行っているため、大学間の違いも見受けられる。IITが技術研究を志すインドの若者の憧れの的であるのは昔から変わらないが、IITならどこでも同じというわけではない。
人材開発省は、2017年、IIT23校について、評判やスタッフの質、メディアでの取り上げ方といった観点からランクを公表している。上位10校の結果は、次のとおりである。
1. マドラス校
2. ボンベイ校
3. カラグプル校
4. デリー校
5. カンプール校
6. グワーハーティー校
7. ルールキー校
8. ヴァラナシ校
9. インドール校
10. ハイデラバード校
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