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- 2019/06/27 掲載
有権者数は9億人、モディ政権が圧勝したインド総選挙でみた “桁違いな”トリビア
ガガン・パラシャー
IILM卒。財務分析、投資コンサルティング、ビジネス調査の経験を経てBig4系列で法人事業コンサルティングに従事。その後X-Ciel Consulting Pvt. Ltd.を立ち上げ、エクシール・エフ・エー・コンサルティングに参画。インド北部ノイダで活躍中の気鋭のコンサルタント。大塚賢二
東京大学法学部卒。金融機関、Big4系列コンサルティングファーム勤務等を経て現在、株式会社ファルチザンの代表を務める。中小企業の海外進出、金融機関の経営管理・内部統制の支援に注力。エクシール・エフ・エー・コンサルティングではガガン・パラシャーとともに中小、ベンチャー企業のアジア進出を支援。インド下院総選挙、投票所は100万カ所
世界最大の民主的な権利行使手続きであるインド総選挙は、空前のスケールで行われた。老若男女、大人から子どもまで全国民の関心を集めた。今回行われたのは、前回2014年から5年の任期を迎えた下院議員の選挙である。
それでは、2019年の下院総選挙が、どのくらい桁違いの規模だったかを、データで見てみよう。
まず目を引くのは「投票期間の長さ」である。39日間にわたって7つのフェーズで投票が行われた。フェーズごとの投票日は図を参照いただきたい。
選挙は、インド選挙管理委員会(インド選管)の責任で実施された。インド選管は、本部をニューデリーに置く憲法上の独立した機関であり、300人超の常勤職員を抱えている。
また今回の選挙では、前回総選挙よりも10%多い100万カ所前後の投票所が設置された。これは「すべての投票者にとって2キロメートル以内に投票所があるという状態にしなければならない」という選管ガイドラインに沿ったものである。
選管の調査によれば、モバイル機器がつながらない場所に8万カ所を超える投票所が設置されることになったほか、2万カ所前後は密林(または、ほぼ密林)地域に設置された。さらに標高1万5256フィート(約4650メートル)地点にも投票所を設置。これは投票所としては世界最高地点である。アルナーチャル・プラデシュ州にいる1人の投票者のために選挙スタッフが丸1日かけて、その投票所まで山岳地帯を登ったとも報道された。
選挙実施には、このような体を張った役回りも求められ、500万人の政府職員や治安部隊が動員された。これらの者は、徒歩や車両のほか、特別列車、ヘリコプター、ボートで移動することもあり、ときには象にまたがることさえあったという。
有権者数は9億人、ブラジルと欧州の総人口の合計に匹敵
今回の選挙における有権者は約9億。これはブラジルと欧州の総人口の合計に匹敵する。その中で女性は4億3200万人程度を占める。また、新しく有権者となった18歳から19歳の有権者は1500万人前後である。
ちなみに全インド国民の3分の2は35歳未満である。トランスジェンダーの有権者は性別上「その他」として選挙人名簿に登録されるが、今回その人数は3万8000人を超えた。投票率は67.11%で、前回2014年下院総選挙の61.48%を上回った。
候補者数は、男性が7334人、女性は715人であった。また、選管に登録された政党数は少なくとも2354団体あったが、実際に候補者を擁立したのは500前後に過ぎない。
今回、下院の定数545議席のうち543議席が争われた。残りの2議席はアングロ・インディアン (英国系だがインドで生まれ育った人々を指し、多くは英印の混血)から大統領が指名することになっている。
総投票数は英国の人口を上回り、今回勝利したインド人民党が前回選挙から伸ばした票数は、米国大統領選の総投票数と、ほぼ同数である。
インド選管は、投票者の問い合わせに対応するためヘルプラインを立ち上げた。これを含め、今回の総選挙にかかった費用は、見積もり困難ながら50億ドルを軽く超えるものと推定されている。ちなみに前回2014年下院総選挙では5億5,200万ドルを要したとされており、文字通り桁違いの費用である。
【次ページ】モディ首相は、なぜ高い支持を得たのか
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まず目を引くのは「投票期間の長さ」である。39日間にわたって7つのフェーズで投票が行われた。フェーズごとの投票日は図を参照いただきたい。
選挙は、インド選挙管理委員会(インド選管)の責任で実施された。インド選管は、本部をニューデリーに置く憲法上の独立した機関であり、300人超の常勤職員を抱えている。
また今回の選挙では、前回総選挙よりも10%多い100万カ所前後の投票所が設置された。これは「すべての投票者にとって2キロメートル以内に投票所があるという状態にしなければならない」という選管ガイドラインに沿ったものである。
選管の調査によれば、モバイル機器がつながらない場所に8万カ所を超える投票所が設置されることになったほか、2万カ所前後は密林(または、ほぼ密林)地域に設置された。さらに標高1万5256フィート(約4650メートル)地点にも投票所を設置。これは投票所としては世界最高地点である。アルナーチャル・プラデシュ州にいる1人の投票者のために選挙スタッフが丸1日かけて、その投票所まで山岳地帯を登ったとも報道された。
選挙実施には、このような体を張った役回りも求められ、500万人の政府職員や治安部隊が動員された。これらの者は、徒歩や車両のほか、特別列車、ヘリコプター、ボートで移動することもあり、ときには象にまたがることさえあったという。
有権者数は9億人、ブラジルと欧州の総人口の合計に匹敵
今回の選挙における有権者は約9億。これはブラジルと欧州の総人口の合計に匹敵する。その中で女性は4億3200万人程度を占める。また、新しく有権者となった18歳から19歳の有権者は1500万人前後である。ちなみに全インド国民の3分の2は35歳未満である。トランスジェンダーの有権者は性別上「その他」として選挙人名簿に登録されるが、今回その人数は3万8000人を超えた。投票率は67.11%で、前回2014年下院総選挙の61.48%を上回った。
候補者数は、男性が7334人、女性は715人であった。また、選管に登録された政党数は少なくとも2354団体あったが、実際に候補者を擁立したのは500前後に過ぎない。
今回、下院の定数545議席のうち543議席が争われた。残りの2議席はアングロ・インディアン (英国系だがインドで生まれ育った人々を指し、多くは英印の混血)から大統領が指名することになっている。
総投票数は英国の人口を上回り、今回勝利したインド人民党が前回選挙から伸ばした票数は、米国大統領選の総投票数と、ほぼ同数である。
インド選管は、投票者の問い合わせに対応するためヘルプラインを立ち上げた。これを含め、今回の総選挙にかかった費用は、見積もり困難ながら50億ドルを軽く超えるものと推定されている。ちなみに前回2014年下院総選挙では5億5,200万ドルを要したとされており、文字通り桁違いの費用である。
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