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  • 2018/08/17 掲載

イオン、ダイエーも真っ青?宮城のスーパーが「リサイクル率70%」を達成できた理由

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食べられるのに食品が捨てられてしまう「食品ロス」が問題となっている。政府広報によると、2016年現在の食品ロスは年間約632万トンにも上り、日本人1人当たりが毎日お茶碗約1杯分(約136g)のご飯を捨てていることになるのだという。どうすれば食料廃棄物対策はうまくいくのだろうか。2015年度の3R(リデュース、リユース、リサイクル)推進功労者等表彰で最高賞の内閣総理大臣賞を受賞したウジエスーパーの吉田芳弘常務取締役に聞いた。
執筆:中森 勇人
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宮城県登米市を本拠地とするウジエスーパー

3Rの目指すものとは

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 農林水産省によると、2015年度の食品廃棄物等多量発生事業者による食品循環資源の再生利用等実施率(リサイクル率)の推計値は、食品小売業で47%となっている。

 同年に公表された食品リサイクル法に基づく基本方針では、2019年度までに食品小売業で55%のリサイクル率を達成するように目標が設定された。2015年度の食品小売業における食品廃棄物等の発生量は、127万5000トンで前年比+0.4%。基本方針では、従来45%だった目標値をさらに10%引き上げており、リサイクルに対するさらなる努力が求められている。

 そうしたリサイクルの強化に向けて政府が進めているのが「3R」の取り組みだ。3Rとは、廃棄物に関する「リデュース=減らす」「リユース=繰り返し使う」「リサイクル=再資源化する」の頭文字を取った言葉。大量生産、大量消費、大量廃棄型の社会から脱却し、環境への負荷を減らすとともに、自然界から採取する資源をできるだけ少なくし、有効に使うことで廃棄するものを最小限に抑える「循環型社会」の実現を目的としている。

 日本では環境省が旗振り役となり、毎年10月を「3R推進月間」と設定して、各地で廃棄物やリサイクルに関するセミナーやシンポジウムを実施している。環境省の他にも、経済産業省、農林水産省、消費者庁などの8省庁、全国70の地方公共団体、コンビニエンスストア5社や百貨店80社などの企業が普及・啓発活動に取り組んでいる。

 リデュース・リユース・リサイクル推進協議会(略称:3R推進協議会)では、3R活動を奨励し、循環型社会の形成推進を図ることを目的とした表彰制度「3R推進功労者等表彰」を設けている。1992年度にスタートした3R推進功労者等表彰は、3Rに率先して取り組み、継続的な活動を通じて顕著な実績を挙げている「個人・グループ・学校」および「事業所・地方公共団体等」などが対象となる。

大手スーパーをしのぐ「リサイクル率」は実現できるのか

 2015年度に内閣総理大臣賞を受賞したウジエスーパーは宮城県に31店舗を構える地方の一小売店だ。同社ではリサイクル率70%を達成し、さらに障がい者の積極的な雇用が評価された。

 リサイクルの取り組みとして、ウジエスーパーでは専門業者に魚のあらを販売したり、食品を売り切るための値引き販売をしたり、外部のリサイクルセンターに委託をしたりしていた。しかし、吉田常務によると「リサイクル率には1つの壁があると思います。2009年度までは30%の壁を超えることはできませんでした」と当時を振り返る。

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ウジエスーパーの吉田芳弘常務取締役
 実際、2006年に農林水産省により公表された「スーパー及びコンビニエンスストアにおける食品廃棄物の発生量、発生抑制等に関する公表情報の概要」によると、当時の大手スーパーのリサイクル率はイオンで28.4%(2016年度グループで59%)、イトーヨーカドーで16.9%(2015年度51.2%)、ダイエーで21.2%となっている。

 ウジエスーパーのリサイクル率は、2010年の65.2%を境に年々上昇して2017年には70%を超えている。ウジエスーパーが、リサイクル率を大幅に上昇させた手法とは一体何なのだろうか?

廃棄物の肥料化で継続的なリサイクル・ループを構築

 ウジエスーパーの成功には、同社が障がい者特例子会社として2006年に設立したウジエクリーンサービスが大きく関わっている。特例子会社とは、子会社の障がい者雇用数を親会社および企業グループ全体の雇用分として合算することが認められている制度のことだ。

 ウジエスーパーでは、毎日大量に発生する野菜や果物などの廃棄物をウジエクリーンサービスで有機質肥料にしている。ウジエクリーンサービスは特許を取得しているプラントを有し、一日400kg排出される食物残さを24時間かけて肥料化し、1/10の40kgにまで縮小。これを地元の農家・醸造会社と連携して肥料を使用した米を作り、さらにその米で作った高品質の味噌を作るなど、廃棄物を付加価値のより高いものに変える食品リサイクル・ループを構築したのだ。

 作られた米や味噌は、自ら開発したプライベートブランド商品として販売して、リサイクルを持続させている。地域密着型という強みを生かし、地元の会社と一緒に取り組むことによるリサイクル・ループを通じた地域活性化に貢献し、これらの活動を障がい者と一緒に行うことで「ノーマライゼーション(障がいを持つ者と持たない者とが平等に生活する社会を実現させる考え方)」を推進している。

 しかし、このリサイクル・ループは一朝一夕に構築できたものではない。

 スーパーで出る食品は一般廃棄物として処理されるため、市町村の管轄となる。そのため廃掃法による法的規制があり、市町村をまたがって廃棄物を収集運搬することができない。ウジエスーパーでは、食品循環資源の再生利用計画の認定(農林水産省、環境省の大臣の許可による特区)を受けるため奔走し、2010年10月に市町村をまたいで収集運搬を可能にした。宮城県では初となる取り組みとなり、県内の30店舗(当時)すべての廃棄物を一か所に集めることができ、リサイクル率が上昇したのだという。

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食品の残りを回収
 「スーパーマーケットの役割は地域に根ざしたソリューションをいかに担うかにあります。住民の毎日の暮らしを支え、困っていることは何かを聞き、解決の一助となる。東日本大震災の時もそうでしたが、地域の人々のライフラインとなり、仕入れ先である生産者の支援をさせていただく。その役割と責任を果たしていくのが私たちのミッションなのです」と話す吉田常務。障がい者特例子会社の設立はリサイクルだけが目的ではなく、地域で障害を持つ人たちの支援の意味合いが強いという。

【次ページ】SDGsを視野に入れた地域活動
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