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  • 2020/06/05 掲載

準備不足は高リスク、再エネ/RE100推進の落とし穴

連載:令和時代の「環境経営」トレンドに向けて

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これまで2回の記事を通じて、「ESG投資」・「SDGs」・「RE100」の意味と、先進事例の取り組み内容を紹介してきた。前回の記事では、「企業によって、最適な取り組み方は千差万別。自社の特性を踏まえた対策が必要」という話をしたが、これまで電力コスト削減のコンサルティングを提供してきた経験からすると、最初に踏み出すべき第一歩は、多くの企業で共通している。そこで連載3回目となる本記事では、これから取り組もうとしている企業の経営者・担当者向けに、実際にどこから始め、何に気をつける必要があるかを説明する。
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環境経営に取り組もうとした際に、思わぬ落とし穴が潜んでいるかもしれない
(Photo/Getty Images)




いきなり再エネ電力、RE100に取り組むリスク

 「CO2フリー電気(主に再生可能エネルギーによる発電)、RE100(注1)がはやっているらしい、うちもやるぞ!」と、すぐに取り組みを始める企業・経営者も多い。

注1:企業活動に必要な電力を100%、再生可能エネルギーで調達することを目標に掲げる企業が加盟するイニシアチブ

 だが、少し立ち止まって、下記の質問に対するYes/Noを考えていただきたい。

  1. 現在使っている電力の消費量は、できる限り削減した後か?
  2. 本当に最適な条件・価格で、電力会社と契約できているか?
  3. 契約・消費電力把握・支払いで、現場の負荷が抑制できているか?

 このいずれかに自信が持てない段階で、再エネ電力の購入に先走るのは早計である。なぜなら、工夫せずに導入すると、相当に割高になるからだ。

 これまでに筆者が相談を受けた企業の事例を紹介しよう。ある企業では、大手電力や新電力を含めた入札により、数億円のコスト削減を成功させていた。それでもかなり進んでいる方だが、筆者が電力のプロとして介入し、改めて契約内容を見直し、再入札を行ったところ、さらに数億円の削減ができることが分かった。

 そして、直近、さらなる取り組みとして、再エネ電力調達に切り替えることで、コストも国内トップクラスの安さで、かつ再エネ電力調達に成功。もし万が一、コスト削減未着手の最初の契約のままで再エネ電力に移行しようとすると、再エネの特別な追加分が乗った相当高い価格になっていたはずだ。

 また、多数の拠点・店舗がある企業のケースでは、月に数十回の決済手続きが発生し、管理の担当者たちが疲弊していた。頻繁な出店や閉店に伴う手続きや、電力会社からバラバラに届く請求書の処理など、デジタル化が進んでいなかったのだ。

 見落とされがちなポイントではあるが、温対法、RE100などの環境報告は非常に手間がかかる。昨年度と比べて金額がどれだけ下がったか、金額以外でも省エネの効果がどれだけあったかなど、企業によっては外注するほど大変な分析作業が発生するものである。素人が確定申告をするようなイメージを持ってもらうのが良いかと思う。要は、無理ではないが、大変なのだ。

 この企業のように、現時点で現場の工数削減が進んでいないならば、再エネ・RE100を宣言することで負荷がさらに増大し、パンクしてしまう可能性もある。上記のように、コスト・工数の両面で軽量化を進めておかないと、一部の想いだけで再エネ・RE100を宣言しても持続的な取り組みにはできない。

 では、具体的に何をすればいいのか。

環境経営に取り組む前の「3つのポイント」

 先の質問の裏返しになるが、大きく3つの対策を検討する必要がある。

(1)電力量の削減
(2)有利な条件で電力契約
(3)処理のデジタル化

 今回はそれぞれについて、具体的に何をすべきかを説明する。

(1)電力量の削減

 電気料金は販管費の中で高い割合を占めていることで、手を打たなければと考える企業は多い。だが、実際には初期投資が大きいこと、手を付けるべき優先順位が不明確であることから、尻込みしている企業がほとんどではないか。電力量の削減は、複雑に見えて、実は削減の対象・方法は限られている。

 まず、照明のLED化(水銀灯、蛍光灯、白熱灯の廃止)は容易に取り組むことができ、費用対効果も良い。次に、空調は従業員を必要以上に冷やしすぎていることも多く、温度設定による省エネや、始業時の空調起動時の突入電力を抑えることにより、ピークカットが可能となる。

 また、製造業の場合、コンプレッサーなどの電力容量の大きい動力機器がある場合、これらの負荷平準化によりピークシフトが可能である(ただ、打ち手としては、このくらいしかないのが現状である)。

【次ページ】(2)有利な条件で電力契約、(3)処理のデジタル化
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