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- 2024/05/16 掲載
LFP電池とは何かをわかりやすく解説、先行する中国勢に「トヨタ・日産」はどう対抗?
LFP電池とは何か
LFP電池(リン酸鉄リチウムイオン電池)とは、正極材がリチウム(Li)、鉄(Fe)、リン(P)から構成されるリチウムイオン二次電池です。安価で安定性の高いリン酸鉄(LiFePO4)が用いられ、レアメタルを使用しません。現在、EVのバッテリーで主流なのは、ニッケル(Ni)、マンガン(Mn)、コバルト(Co)を正極材に使用した「三元系(NMC)」とよばれるリチウムイオン二次電池です(図1)。
しかし、中国では近年、EVバッテリーの主流が三元系電池からLFP電池に移り変わっています。さらにテスラやステランティス、トヨタや日産などもLFP電池の導入を進めており、今やEVバッテリーとして大きな注目を集める存在となりました。
LFP電池のメリット、三元系と比較
LFP電池は三元系電池と比べ、どのようなメリットがあるのでしょうか。(1)レアメタルを使用しない
LFP電池はニッケルやコバルトなどのレアメタルを使用しないため、原料費高騰や原料調達リスクを軽減することができます。リンや鉄は、レアメタルと比べて自然界に広く存在しており、埋蔵量も豊富な物質です。
レアメタルの採掘にあたっては、環境汚染や労働問題が懸念されています。特にコバルトは世界の70%以上がアフリカのコンゴで産出されていますが、一部の採掘場では、水や土壌、大気などの環境汚染に加え、非人道的な労働が問題視されています。
こうした背景から、大手企業の間では、コバルトの調達先をモロッコやオーストラリアに切り替えたり、コバルトの使用量を削減する動きがあります。レアメタルを使用しないメリットは非常に大きいと言えます。
(2)火災リスクが低く安全性が高い
LFP電池は熱への安定性が高いため、異常発熱や発火、火災のリスクが低い特徴があります。一般的に、三元系電池は高温環境下では劣化が起こりやすく、発火や爆発のリスクが高いと言われています。しかしLFP電池は、酸素とリンの結合が強いため、高温環境下でも安定して動作し、安全に利用することができます。
(3)寿命が長い
LFP電池は、耐用年数が長いという特徴があります。蓄電池は充放電を繰り返すことで劣化が進みますが、LFP電池は三元系電池の倍以上の寿命があると言われています。
頻繁な充放電サイクルを繰り返すEVや電力貯蔵システム(ESS)などにおいて、長期的なコスト削減にもつながることが期待されています。
LFP電池のデメリット
LFP電池は三元系電池と比べると、エネルギー密度が低いため、EVの場合、航続距離が短くなるという課題があります。三元系電池と同じエネルギーの容量を得るためには、より多くの体積が必要です。そのため以前は、瞬間的に大きなパワーを要するEV向けには適さないとされていました。しかし、近年の進化が目覚ましく、LFP電池のエネルギー密度の低さは大きく改善されてきています。 【次ページ】トヨタや日産はどう対抗?
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