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- 2024/03/19 掲載
系統用蓄電池とは?その役割と事業の可能性、東急不動産と伊藤忠商事の事例
連載:「エネルギーの疑問にお答えします。」
巨大な蓄電池のかたまり、系統用蓄電池とは何か
2月末から3月初めまで東京で開かれた再エネ関連の展示会は、ビッグサイト全体を使ったにもかかわらず久しぶりの大盛況であった。中でも、会場にドンと置かれて存在感を示していたのが、系統用蓄電池である。トップの写真は、新興パワーエックスの蓄電池で、定格容量(電気をためる容量)がおよそ2.5MWh、20フィートコンテナに収納するという大規模なものである。
家庭用の蓄電池だと、せいぜい数kWh程度なので、数十倍もの大きさだ。
こんな大きなものを何に使うのかというと、もちろんビジネスや事業用である。読んで字のごとく、“系統につなげる”というところがポイント、それによって収益を得るチャンスが格段に増える。
系統用蓄電池のビジネスモデルと期待される役割
では、導入を進める民間企業は、系統用蓄電池でどのようにもうけるのであろうか。上図は、資源エネルギー庁が示した系統用蓄電池のビジネスモデルである。
価値だけでも「kW」、「ΔkW」「kWh」と3つが示され、さらにアービトラージという聞きなれない言葉も見られる。この辺りを整理しよう。
1番分かりやすいのが、上から3つ目の「kWh価値(卸市場)の利用」かもしれない。蓄電池にためた再エネの電気を、電力取引市場の1番高い時に売ることで、利益を出す仕組みが基本となる。
太陽光や風力発電の急拡大によって、昼間を中心に市場価格が0.01円/kWhと超安値になることは珍しくない。さらに需要不足から出力制御が起き、せっかくの生み出した再エネ電力を止める事態も常態化してきた。
次図は、2022年春の九州電力管内のある日のスポット市場の変動と出力制御の状況である。0.01円の価格は8時間続き、4時間が出力を制御され電気がむだに捨てられている。
たとえば、ある事業者が太陽光の発電施設と大型の十分な蓄電設備を持っていたとする。その事業者は、朝8時から夕方16時まで作った電力をリアルタイムで市場には売らずに、いったん蓄電池にためて、18時すぎ(価格はピークで26円程度)に売ることができる。これによって、安値での売却を避けるだけでなく、4時間の出力制御を逃れる可能性がある。
また、蓄電池の利用だけ見れば、スポット市場から0.01円で電気を仕入れ、それを26円、つまり仕入れ値の2600倍で売ることができる理屈となる。
説明が遅くなったが、「アービトラージ」とは、同じ品目の時間による価格差を収益に変えることをいう。10年近く前から、欧州で蓄電池などを利用したいわゆるVPP(仮想発電所)ビジネスや起業がブームとなったのは、この収益構造を期待してのことであった。 【次ページ】東急不動産と伊藤忠商事の蓄電池事業
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