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- 2023/10/25 掲載
“20年遅れ”の「洋上風力発電」、再エネ電力の希望の星となるか?政府の切実事情
連載:「エネルギーの疑問にお答えします。」
なぜ「洋上風力発電」は脱炭素の期待を一手に背負うのか?
世界では、洋上風力発電より先に風力発電が各地で展開された。太陽光発電が一定の広い土地を必要とするように、風力発電も場所の制限が存在する。たとえば、風況といって発電可能な風の速さが重要で、発電可能な場所は狭まる。さらに風車の風切り音や光の反射などがあって、人家などから離した設置が求められる。
風力発電は、その分「適地」が早く少なくなっていった。そこで登場したのが洋上風力発電である。
洋上は風を妨げる建築物などもないため風況が大変よく、陸上風力発電より基本的により大きな発電量が可能となる。また、人間生活による制限も少ない。
トップ画像のグラフは、世界で設置されてきた風力発電施設の総発電能力を示している。棒グラフの大半を占める黄緑部分が陸上風力発電(オンショア)で、その上に載った青緑部分が洋上風力発電(オフショア)である。
大型の風車を使った本格的な洋上のウインドファームは2001年のデンマークに始まり、欧州を中心に拡大していった。それに合わせてドイツのブレーマーハーフェンなど洋上風力発電建設の基地が北海などの海岸エリアに次々作られ、繁栄していく。この10年ほどで急速に増え、2022年の洋上風力発電施設のシェアは7%程度まで達した。
筆者は10年ほど前、ブレーマーハーフェンを視察したが、当時でさえ洋上風力発電用の数十メートルを超えるブレード(風車の羽根)が存在していた。
洋上風力発電をけん引するのは、中国
世界の再エネをけん引しているのが中国だと聞いて、今さら驚く人もいないと思うが、洋上風力発電でも中国が主たる役割を演じている。これは、中国内での補助制度の最終年であったことが要因で、翌年の2022年は大幅に減退している。それでも5GWの増加である。欧州で育った洋上風力発電はすでに主役の座を中国に譲ったといえるかもしれない。
さらに欧州からの洋上風力発電に関するニュースはこのところあまり芳しくない。
先月末のロイター通信によると、今年になって洋上風力発電がコスト高などの嵐に見舞われているという。すでにイギリスやオランダの洋上風力発電プロジェクトが延期や棚上げになったほか、補助金の入札への応札者がないケースも出てきている。 【次ページ】条件は良いのに…洋上風力発電で存在感が薄い日本
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