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- 2023/03/14 掲載
「電気代高騰」をわかりやすく解説、値上げ最大理由は「あの費用」の大幅増加
連載:「エネルギーの疑問にお答えします。」
2022年電力価格 日本は過去5年間平均の倍に
昨年の電力価格は、2017~2021年と比べてどうだったのだろうか。次のグラフは、主要国の電力卸売市場の2022年の状況を過去と比較したものである。先進諸国のエネルギーデータを扱う最も権威のある機関の一つ国際エネルギー機関(IEA)(世界エネルギー機関)によるものを取り上げた。
濃い青色の棒グラフが2017年~2021年までの卸売市場の平均値で、水色が2022年である。これは卸売市場(スポット価格とも呼ばれる)の平均値で、小売電気事業者にからみると調達価格(原価)に当たる。これに送電線を使う託送料や利益を含めた経費、また燃料調整費などが加わるので需要家(エネルギーの供給を受け、利用する者)が払う電気代はずっと高くなる。
真ん中あたりにある日本の価格を見てみよう。グラフの単位は1MWhあたりのUSドルだが、日本でよく使われるkWhあたりの円に換算すると、2022年が24円程度、それまでの5年間平均が12円程度と価格が倍になっていることがわかる。
その他の国も大幅な値上がりを示しているが、国によってばらつきがある。右側の4カ国はノルウェー(水力発電)、オーストラリア(石炭)などのエネルギー資源を保有している国で影響がやや緩やかである。
一方、左半分の5カ国はいずれも欧州で、3倍から4倍と激しい値上がりを示している。今回の市場高騰の最大要因は化石燃料の急上昇であり、ヨーロッパに起きたことの原因や今後の対策を考えることは、今後のエネルギー動向や脱炭素の見通しなどの重要なポイントとなる。
欧州で起きた極端な電力価格高騰「3つの原因」
2022年、欧州電力卸売市場で起きた極端な高騰の原因をもう少し詳しく見てみよう。主に次の3つで成り立っていると考えられる。いずれも、欧州での燃料不足や発電の不振に関するものである。- (1)ロシアのウクライナ侵略によって化石燃料の脱ロシア化を進め、ロシアからの天然ガスなどが使えなくなったこと
- (2)温暖化の影響で、夏にかけて熱波に襲われ水不足で水力発電が不振だったこと
- (3)フランスの原発による発電量が施設の不具合などで大幅に減少したこと
実際は、欧州の電力価格高騰は2021年の後半から起きている。背景には、脱炭素が急速に進行する中で化石燃料から再生エネ電源の置き換わり時期にギャップが生じたことや、コロナ禍で縮小した経済活動が急激に復活したことが挙げられていた。
2022年も同様の傾向はあるが、次のグラフの一番右で明らかなように、節電などによって需要(グレー:マイナス79TWh)を大幅に減らすことには成功している。
ところが、発電そのものの大幅な減少も起きた。2021年の実績から大きく減らしたのは、左側の2つ、原子力発電(青:マイナス119TWh)、水力発電(水色:マイナス66TWh)である。水力発電の不振の熱波で川などの水が大きく減ったことが原因となった。原発の大幅減のうち2/3は原発大国フランスのマイナス実績である。冷却水ラインのパイプ腐食によるものが中心で、いまだに完全な回復のめどは立っていない。
一方で、需要を大きく減らしても足りない分を、石炭発電と再生エネで賄ったことがわかる。まず、石炭発電(黒:プラス28TWh)に緊急的に頼った。これが、石炭価格の大幅な上昇を招いた。
最終的に欧州を救ったのは、太陽光と風力発電である。風力発電は2021年の悪い風況(風の状態や性質)から復活し、太陽光発電では、ドイツ、スペイン、オランダなどで大量に新設が進み、発電量が飛躍的に伸びた。
2022年の欧州は、フランスの原発の不具合と温暖化による水力の不振による電力不足を、需要減に加え、太陽光発電を中心とした再生エネ電源の拡大と石炭など化石燃料のつなぎで乗り切った。背景にあるのは、化石燃料の一時期の異常な上昇である。これらの経験が、欧州に再生エネ拡大を圧倒的に加速させるエネルギー戦略を取らせるに至った。 【次ページ】4月以降の電力値上げは何のため?背景にある○○費
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