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このところ落ち着きを見せてきていた電気料金が、2024年に入って、
燃料調整費の変動により再び値上がりに転じてきた。さらに追い打ちをかけるように、5月以降にさらなる値上がりが決定している。これから起きようとしている電気代上昇の2つの理由と、背景に存在する日本のエネルギー政策の問題点を解説する。
23~24年“予想外の乱高下”が起きた「再エネ賦課金」
電気代値上がりの原因の1つ目は、「再エネ賦課金の上昇」だ。
そもそも、再エネ賦課金とは何か。これは、2012年から導入されたFIT制度(再エネ電力の固定価格買い取り制度)と直結するもので、再エネ電力をより高い値段で買い取るための“原資”を電気料金に含める仕組みである(※2023年度分からはFIP制度分も含まれる)。
トップのグラフは、その再エネ賦課金の年度ごとの推移を示している。単位は1kWh当たりの価格(円/kWh)で、これに1カ月当たりの使用電力量をかけると料金に毎月加算される賦課金の額となる。
基本的に再エネの発電所が増えれば増えるほど買い取り額の全体も増え、私たち消費者が負担する額も増えることになる。実際に2012年度の制度スタートでは1kWhで0.22円だったものが、2020年代に入って3円を超えるまでに上昇した。
ところが、昨年2023年度に異変が起きた。前年度の3.45円から2円以上も下がって1.40円に落ち込んだのである。これを平均的な家庭の電力使用量(4人家庭モデル月400kWh程度)に当てはめると年間1万円近い値下げとなり、昨年からの電気料金の安定に一定程度寄与した。
筆者も含めて多くのエネルギー関連の専門家が予測していたように、今年はそれが大幅に逆ブレした。2024年度は2円以上も上がってこの5月からの再エネ賦課金は3.49円/kWhと過去最高額に戻ってしまったのである。
5月からの電気料金の値上がりは、賦課金上昇分だけで月800円以上となる。
では、なぜこのような賦課金の“予想外の乱高下”が起きてしまったのであろうか。
その理由は、再エネ賦課金の決定方法にある。
電力市場が落ち着くと逆に“上がる”再エネ賦課金の不思議
少し専門的だが、再エネ賦課金は下の方法で決められている。
(1)買取費用等およそ4兆8,000億円は、FIT制度でより高い値段で再エネ電気を買うための全体の費用で、それを(3)販売電力量(買い取ってもらう発電量およそ7700億kWh)で割れば、賦課金の額が出るように思うかもしれない。しかし、実際には(2)回避可能費用等という電力卸売市場(FIT電力は全量市場で売られる)での売り上げで回収される分がある。そのため、(2)を引いたものを(3)で割ることで賦課金単価が求められる。
全体の(1)買取費用等(発電側から見ると受け取る総代金)はFIT制度の固定価格をベースに変わらない。買い取り費用を構成するのは、市場で売られた代金である(2)回避可能費用等と賦課金(賦課金単価×(3)販売電力量)分を合算した額である。つまり、市場で高く売れれば(=市場高騰)、残りの賦課金は減り、逆に市場が安くなれば賦課金は増える、という負の相関関係にある。資源エネルギー庁の公式を変換すると下が導かれる。
(1)買取費用等=市場販売額((2)回避可能費用)+賦課金総額(賦課金単価×(3)販売電力量)※事務費は省いて示している
2022年に市場が高騰して翌年の賦課金が2円以上も大きく下がり、逆に2023年は市場が非常に安くなって今年の賦課金が急上昇したのは、このような理由である。
ロシアのウクライナ侵略前の欧州の電力スポット市場は、再エネ発電所が順調に伸びて1kWh当たり2円、3円ということも珍しくなくなっていた。そのときに、たとえば
ドイツでは賦課金が大幅に上昇して電気料金が上がる事態を引き起こしていた。
一般家庭などの需要家にとってみると、マーケットが安いのにその恩恵を受けられないことから、「おかしい」、「小売会社が利益を抜き取っている」などの声もあったが、前述の賦課金の仕組みが、その現象を招いた原因となった可能性が大きい。
【次ページ】背景に存在する日本のエネルギー政策の問題点とは?
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