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  • 2023/11/30 掲載

日本の水素戦略は問題だらけ…発電利用は厳しく、トヨタのFCVも好ましくない用途な理由

連載:「エネルギーの疑問にお答えします。」

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脱炭素のツールとして、今、水素は世界でかつてないほどの注目を集めている。背景の1つはウクライナ危機をきっかけとした化石燃料からの脱却の流れであり、EU諸国や米国も新しい水素戦略を次々と打ち出している。もともと水素関連技術では一日の長があった日本でも、2023年6月に6年ぶりに「水素基本戦略」を改訂し、追随を見せている。しかし、世界が進めようとしている水素戦略と日本のそれに「ズレ」が散見されることに気づく。本稿では、脱炭素における水素の役割を説明しながら、日本の抱える課題などをまとめる。
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2050年での気温上昇を1.5℃に抑えるための主要ツールとその貢献度
(出典:IRENA(一部筆者加筆))

なぜ今、水素なのか

 上の円グラフは、2050年での気温上昇を1.5℃に抑えるための主要ツールとその貢献度を%で表している。「省エネ・エネルギー効率化」と「再エネ」導入が25%で並んでトップなのは当然であろう。さらに、現在は圧倒的に化石燃料を使用している、熱や交通部門などの「電化」が続き、ここまでで全体の7割を占めている。

 一般的に多くの課題解決の場面で、難しいのはここ、つまり残りの詰めである。脱炭素では、残った3割を水素とCCS(炭素貯留)で行うとしている。実はCCSの経済性はまだまだ見通せておらず、水素への期待10%はかなり高いといって良い。同じIRENAの今年のリポートでは、2050年における世界の最終エネルギーに占める水素の割合を14%(再エネ電力は5割弱)としていて、変わらない役割を当て込んでいる。

世界が推進する水素戦略と3つの水素の種類

 世界での水素推進に拍車がかかった背景には、脱炭素という地球的な課題解決と突如起きたウクライナ危機によるロシアからの化石燃料脱却がある。

 以下は、今年の日本のエネルギー白書で示された水素を巡る海外動向である。欧米が特に水素に熱心である。

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水素に係る海外動向
(出典:資源エネルギー庁「エネルギー白書2023」)

 欧州は2022年5月に「REPowerEU」という新しいエネルギーの方針を決定した。その中で、2030年までに主に再エネ電力による水の電気分解で造るグリーン水素を、輸入も含めて2000万トン活用するという強化策を打ち出している。

 米国は、今年の6月にエネルギー省(DOE)が「国家クリーン水素戦略」を発表し、2030年までに年間1000万トンのクリーン水素製造を目指すとした。バイデン政権が決めた脱炭素に関する巨額の減税策が各所で効果を表し始めていて、再エネ電力を使った水素の価格も劇的に低下するとの見方が出てきている。

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製造過程による水素の種類
(出典:資源エネルギー庁)

 濁点のあるなしで分かりにくいが、米国の場合は「クリーン(clean)水素」を標榜している。これは欧州の「グリーン(green)水素」(上図右)とはやや異なる。後者は、再エネ電力を使う電気分解だが、前者は、それに化石燃料で作るブルー水素(上図中央)が含まれる。つまり、『クリーン水素=ブルー水素+グリーン水素』となる。

 しかし、ブルー水素を作るために必要な「CO2改修・貯蔵・利用」(上図中央の赤い点線枠)の技術は前述したようにまだまだ確立していない。コストも非常に高い。結局、クリーン水素も現状ではほぼグリーン水素によって構成されることになる。

 予測のレベルであるが、2030年段階では実際にグリーン水素の方がブルー水素より安価であるというリポートもある。 【次ページ】トヨタのFCVも実は好ましくない用途
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