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  • 2024/10/02 掲載

「原発回帰する」日本・「さえない」諸外国…なぜ世界は原発離れ?

連載:「エネルギーの疑問にお答えします。」

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日本の新しい電源構成の指針となる「第7次エネルギー基本計画」の議論が佳境に入っている。脱炭素に向けての羅針盤とも言える本計画だが、この中で頻出しているのが原子力発電の重要性である。福島事故を起こし『可能な限り原発依存度を低減』と明記した前回の基本計画からわずか3年での、手のひら返しの様相である。こうした日本の現状の一方で、世界では再エネ電源が圧倒的で原発はさえない状況だ。各種のデータに基づいて、日本と世界の原発事情をまとめる。
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図1:日本の原発の稼働状況、稼働中12基(2024年1月)
(出典:資源エネルギー庁)

知っておきたい日本の原発の現状

 まず、日本の原発の現状を確認しておこう。

 廃炉を除いた全36基中、2024年1月時点で稼働している原発は西日本を中心に12基にすぎない(図1の青い部分)。設備容量はおよそ10GW、発電量は全体の1割以下である。

 政府がよく言うように、建設中の3基を含め今後炉が新設がされないと、60年間の延長運転があろうといずれ原発は消えることになる。第6次エネルギー基本計画で示した原発依存度の低減は実現に向かう。

 しかし、第7次計画ではこれを推進することを明らかにしている。

「拡大」、「主力」とはかけ離れた世界の原発の現実

 一方、世界の原発は、正直言って、“さえない”状況である(図2)。

 世界の再エネ電源による発電量は、すでに風力+太陽光発電(VRE=可変的再エネ)だけで、原発を上回りその差を急激に広げている。原発の割合が比較的高かった欧州でも、10年前の2013年に原発と再エネの発電量が逆転している。世界のエネルギー機関や研究機関が示す2050年時点での予測では、いずれも再エネ電源が圧倒的な多数である。

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図2:世界の「風力+太陽光発電」と「原発」の発電量の推移
(出典:energy institute statistical review of energy 2024)

 よく米国や中国などが原発を積極的に推進しているように言い立てられるが、米国では、スリーマイル島の原発事故以来30年以上新設がなく、昨年稼働した原発の建設コストは当初の2.5倍に膨らんだ。AP通信によると、米国では嵩(かさ)んだ費用を取り返すために、電力の供給家庭の料金に月額500円以上を上乗せすることが決まっているという。

 フランスで先日新設の原発が稼働したが、建設開始から17年間もかかった。コストは1kWhあたり20円近い数字が示されている。さらに10基以上の新設計画を発表したフランスに加え、イギリスも2桁の計画を出しているが、コストも含め実現はかなり疑問である。

 中国は、米国、フランスに次ぐ原発大国(稼働55基)で、昨年は2基の新設が行われたが、圧倒的に比重を再エネに置いている。2023年の発電実績では、原発が全発電量の5%弱に対して再エネによる発電量が原発の6倍以上の3割越えであり、今年の導入量でも決定的な差がついている(図3)。中国では原発はワンオブゼム、その他の電源の1つである。

 昨年200GWを上回る驚異の導入量を果たした太陽光発電は、図のように今年さらにペースを上げている。ちなみに日本の昨年の導入は5GW程度にすぎない。

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図3:中国の今年1月から5月までの追加電源
(出典:中国国家エネルギー局)

 では、なぜ世界では原発離れが進むようになったのだろうか。 【次ページ】コスト、安全性、柔軟性における“三重苦”

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