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5月の中旬、中期的なエネルギー政策を決めるための会議が立て続けに開かれた。13日には今年初となる政府のGX実行会議が開かれ、「GX2040ビジョン」を年内にまとめることとした。また、15日には、2035年度以降の新しい電源構成を示す「第7次エネルギー基本計画」の議論も始まった。議論内容と課題について、突然強調され始めた、電力需要の“急増”予測を交えて解説したい。
2035年以降の電源構成を巡る厳しい状況
そもそもGXとは、グリーントランスフォーメーションの略で、脱炭素社会への移行を意味する。日本は、特に産業立地や産業構造の転換など、脱炭素の経済への影響や効果などの政策を重視している。
下図は会議の流れや今後のスケジュールなどをまとめたものである(図2)。5月13日に全体会議としてGX実行会議が開かれ、2手に枝分かれしている。
左の青枠「GX2040リーダーズパネル(仮称)」に、GX産業立地、GX産業構造、GX市場創造と経済項目が並ぶ。一方、右の15日の赤枠(総合資源エネルギー調査会基本政策分科会)で基本計画の論議がスタートしたことが示されている。
エネルギー基本計画とは将来の電源構成などを設定するもの。現状の第6次エネルギー基本計画は、2021年10月に閣議決定され、次は7次の計画である。
現計画では、2030年度の電源構成を、再エネが36~38%、原発が20~22%としている。これは、CO2などの温暖化効果ガスの削減目標=2030年度に2013年度比46%減を達成するために設計されている(図1)。
ISEP(環境エネルギー政策研究所)が6月初旬に速報値として発表した2023年の日本の電源構成では、再エネが25.7%と初めて全体の1/4を超えた。一方、化石燃料による発電はやや減ったものの66.6%と2/3を保っている。2030年度の再エネ36~38%達成はそれでも厳しいという声が聞こえる。政府がクリーンな電源と強調する原発はいまだ7.7%で、化石燃料低減の目標41%程度の実現可能性は低い。
順調に上昇する欧米の再エネ比率と目標達成に苦しむ日本
一方、欧州は2021年後半からのエネルギー高騰の危機を経て、再エネを急増させている。EU27カ国の平均で再エネ電源比率が2023年に45%に迫っていて、日本の2030年度の目標さえすでに大きく上回る。
さらに日本のハードルは上がる。第6次エネルギー基本計画の後、先進国のCO2削減の目標値が大きく上積みされたのである。昨年2023年に日本が議長国として広島で行われたサミットで、2030年の削減目標が60%(2019年比)と大幅に厳しくなったのだ。
比較対象の2013年度から2019年度の間に日本でも14%の削減が進んでおり、その削減結果を新たな基準とするのだから大変である。換算がやや面倒だが、以下となる。
2030年度の温暖化効果ガスの削減目標:
(旧)2013年度比46%削減→(新)2019年度比60%削減=2013年度比換算66%削減
政府はこれを「約束」ではないと言っているらしいが、いつまでも通るものではないであろう。
第7次エネルギー基本計画の策定に対しては、すでに多くのシンクタンクや環境団体などが提言を始めている。政府の施策に厳しい立場からのものが多く、サミットの「約束」などを基に、たとえば、以下のような提案が行われている。
- 世界自然保護基金(WWF)ジャパン:2035年再エネ電源77%
- 自然エネルギー財団:2035年再エネ電源80%
- 地球環境戦略研究機関(IGES):2035年再エネ電源61%、原発15%、水素4%
かなり厳しい要求に映るが、EUの現状、サミットの「約束」を見るとまったく不思議ではない。また、米国は2035年に脱炭素電源100%を目標に設定した。日本を取り巻く脱炭素の環境は変化し、現実と目標の両方から厳しく日本に迫ってきているのである。
ここまでで、本年度に日本が決めなければならないことと、その策定が難しいということがわかっただろう。
ところで政府はどんな脱炭素の計画を作ろうとしているのであろうか。5月の会議で示された資料を少しのぞいてみたい。
【次ページ】政府の脱炭素計画で急登場、「電気が足らない!」連続コール
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