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  • 2018/07/04 掲載

古い常識は崩壊!いまアイスクリームが熱すぎるワケ

「夏の風物詩」「子供のおやつ」は過去の話

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梅雨も明け、都内では昨日(7月3日)までで早くも9日連続の真夏日を記録するなど、いよいよ冷たいものが恋しい季節がやってきた。その代表的存在が「アイスクリーム」だ。2013年度から5年連続で年間販売金額が史上最高を更新し続け、成長にはずみのついた食品業界の「星」でもある。日本アイスクリーム協会は取材に対し「近年、シニアの需要が大きく伸びている」という。高級化、大人のスイーツ化に新規参入などさまざまな要素があいまって、アイスクリームをめぐる商戦はいま、冷気ならぬホットな湯気が立っている。
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店頭に並ぶアイスクリーム。今、その市場が熱い
(写真:都内にて撮影)

アイスクリームは10年前の1.4倍売れている

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 日本人で初めてアイスクリームを食べたのは、1860年(万延元年)に咸臨丸で渡米した勝海舟や福沢諭吉ら幕府の使節団だったという。それに随行した町田房蔵が1869年(明治2年)5月9日、横浜・馬車道に開いた店で製造・販売を始めた「あいすくりん」が、初の日本製アイスクリームだとされている。それ以来149年。アイスクリームは今や日本人の食生活の中にすっかり定着した。

 アイスクリームが真夏の風物詩だったのは昭和の時代までで、今はスーパーでもコンビニでも一年中売られている。それでもやはり真夏は書き入れ時で、総務省の「家計調査」によると、2017年8月の1世帯当たりの購入金額は1370円で、2月の382円の3.6倍だった。もっとも、2月と8月の差は2013年は4.5倍、2014年4.0倍、2015年4.0倍、2016年3.5倍、2017年3.6倍と、少しずつ縮まっている。

 そもそも「アイスクリーム」とは何か? 食品衛生法にもとづく「乳及び乳製品の成分規格に関する省令」と「食品、添加物等の規格基準」では、「乳成分」と「乳脂肪分」の割合によって次のように分類されている。

アイスクリーム乳成分 15%以上、乳脂肪分 8%以上
アイスミルク乳成分 10%以上、乳脂肪分 3%以上
ラクトアイス乳成分 3%以上、乳脂肪分 不問
氷菓乳成分 3%未満、乳脂肪分 不問


 このうち(狭義の)アイスクリーム、アイスミルク、ラクトアイスの3カテゴリーが一般にイメージされる「アイスクリーム」で、「シャーベット」や「アイスキャンデー」は「氷菓」として別物扱いされている。

 一般社団法人日本アイスクリーム協会は各カテゴリーの販売統計を発表しているが、4カテゴリー全体の販売金額は、2007年度の3706億円から2017年度の5114億円へ、10年で38.0%、年平均で3.8%伸びた。マイナス成長の2009年度、2011年度もそれぞれ-0.3%、-0.1%で、ほぼ横ばいだった。

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アイスクリーム類及び氷菓販売金額と前年度比伸び率の推移

 ハーゲンダッツ(業界第4位)のような海外ブランドを思い浮かべて「輸入が伸びているからだろう」と思うかもしれないが、実際はまったく逆。財務省関税局の「日本貿易統計」によれば、「アイスクリーム類」及び「シャーベット類」の輸入物量は、2007年から2016年までの間にほぼ半減している(49.6%減)。輸入金額も44.6%減った。売上を伸ばした主役は、国産のアイスクリームだった。

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アイスクリーム類及びシャーベット類の輸入物量と輸入金額の推移

 家庭でのアイスクリームの消費も着実に伸びている。総務省は個人消費を調査する「家計調査」のデータをもとに1世帯当たりの年間アイスクリーム支出の「実質金額指数」を算出している。これは年間消費金額から価格上昇分を差し引き、2006年を100.0として指数化したもので、需要の伸びを正確に反映する。

 真夏の暑さには凸凹があったが、2016年までに100を割り込んだ年は一度もなかった。2010年に111.5、2013年に117.7とピークをつけて、2016年は114.4だった。

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1世帯当たりの年間アイスクリーム支出の実質金額指数の推移

 「家計調査」の1世帯当たりのアイスクリームの消費金額も、2013~2017年の4年間で8115円から9047円へ11.5%、年平均で2.9%伸びている。

 これは、夏が猛暑でも冷夏でも、アイスクリームの消費の成長は堅調であることを示している。天候の変動リスクをヘッジする金融商品「天候デリバティブ」の説明で、冷夏で販売減に見舞われる商品として「エアコン」や「プール」と並んで「アイスクリーム」が挙げられることがあるが、この商品について言えば冷夏によるリスクは低下している。

 それを象徴するのが「1994年度超え」だろう。冷害、凶作の1993年夏から一転、1994年夏は養豚場でブタの熱中症死、ゴルフ場で芝生の枯死が相次ぐほど日本列島は過酷な猛暑に襲われた。日本アイスクリーム協会が調査している「アイスクリーム類及び氷菓販売金額」はその1994年度、4296億円の過去最高を記録したが、その後18年間は一度もその記録を更新できなかった。

 ところが2013年度、4330億円をマークして久々に記録を更新すると、それから2017年度まで5年連続で過去最高を更新し、初の5000億円の大台にも乗せている。

 夏が暑くても涼しくても、アイスクリームは売れる。少子高齢化で子どもの数が減っても、アイスクリームはその売上を伸ばし続けている。それは、アイスクリームから「夏の風物詩」「子どものおやつ」というニュアンスが薄れたことを意味している。逆に「冬アイス」「大人のアイス」「高級化」が、最近のアイスクリームの消費トレンドをあらわすキーワードになっている。

「冬アイス」はもはや当たり前

 「冬アイス」は、もうすっかり定着した。地球温暖化のせいというより、マンションのような気密性の高い住まいの普及、エアコンや床暖房の普及で、消費者の間で「冬にアイスを食べる」ことへの抵抗感が薄れている。

 ロッテアイス、江崎グリコに次ぐ業界第3位の森永乳業が2016年10月に調査した「冬アイスに関する意識調査」によると、回答者の98.4%が「冬にアイスクリームを食べたい」と答え、「冬アイス」の定着ぶりが浮き彫りになった。

 特に20~30代で「すごく食べたいと思う」という回答が多い。日本アイスクリーム協会が2017年10月に調査した「アイスクリーム白書2017」でも、「冬アイス」という言葉の認知度は59.6%でも、真冬(1~2月)にアイスクリームを食べているという回答は91.2%に達している。

 冬アイスの普及に少なからず貢献したのがコンビニと冷蔵庫の冷凍室の大型化である。コンビニに行くと、一年中いつでもアイスクリームを売っている。ロッテアイスの主力商品「雪見だいふく」も2017年に通年発売に切り替えた。真冬、カウンターで煮ている「おでん」と一緒にアイスを買って帰る人がいても、違和感はなくなっている。業界も季節による変動が比較的小さいコンビニ販路の開拓に力を入れている。

 コンビニはよく「家の外にある冷蔵庫」と言われるが、家の中にある冷蔵庫のほうも大型化が進み、冷凍室も以前より大きくなっている。その一部を「アイスクリーム専用のスペース」として利用する家庭が増えている。

 家電量販店によると、3~4人家族用の冷凍冷蔵庫の売れ筋は容量500リットル前後の6ドアタイプで、冷凍室の容量は以前は100リットル以下がほとんどだったが、現在は100~150リットルが主流で、製氷室と別に大小2つあるものが多いという。それだけ、冷凍食品などに邪魔されず、アイスクリームを一年中常備しやすくなっている。

【次ページ】「大人アイス」が売れるワケ、日本のアイス消費量は世界で何位?
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