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- 2019/07/26 掲載
みそのマルコメが米空軍の「OODAループ」を組織づくりに取り入れたワケ
マルコメ 青木 時男社長インタビュー
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持続可能な未来に向けて、世界は食のあり方を見直している
みそは長い歴史を持つ発酵食品です。しかし、その味も時代によってトレンドがあるといったら驚かれるでしょうか。ことほどさように、食文化は環境の影響を大きく受けます。6月に出席したカナダ・バンクーバーのグローバル・サミット 2019では、持続可能な未来に向けた提言として「肉を中心とする食生活の見直し」がテーマの1つに挙げられました。
そこで注目を集めているのが、植物性たんぱく質を主原料としたビヨンド・ミートやインポッシブル・フーズといわれる人工肉、代替肉です。前者はビル・ゲイツ氏らが、後者はグーグルがグーグル・ベンチャーズを通じて投資していることでも知られています。日本でもようやく一部のレストランがヴィーガン(純粋菜食主義者)向け、ベジタリアン向けメニューを用意するようになりました。来年開催の東京オリンピックには、世界からヴィーガン、ベジタリアンがやってきていっそう認知度を上げることでしょう。
同じ文脈で今、世界は発酵という技術にも目を向けています。スターバックス コーヒーが発酵飲料を出しましたし、世界一予約の取れないレストランとして知られるデンマーク コペンハーゲン「ノーマ」も『ノーマの発酵ガイド』という書籍を2019年3月に出版しました。実は、そのラボの責任者が一度、お忍びでマルコメの工場を見学に来ました。そのときは私たちも事情がよくわかっていませんでしたが今はわかります。彼らは発酵技術のグローバルスタンダードを狙っているのです。
“原材料”に再着目、第2・第3の矢を放つ
そんな世界の潮流の中、我々も変化を続けています。創業以来、営々とみそをつくってきた当社にとって、糀や大豆は長らく“原材料”でしかありませんでした。見直すきっかけになったのは2011年のことです。大分県の老舗、糀屋本店の浅利妙峰氏の発信から塩こうじブームが始まったのです。化学の力に頼らない、こうじを使った自然由来の食品の数々は、食事の質を気遣う若い女性や小さなお子さんをお持ちの女性の方々の関心を集めました。
そこで我々もこうじに再着目し、開発したのが「プラス糀 糀甘酒」です。原材料は米と米こうじだけ。これが醸し出す自然な甘み、栄養価が高い評価を受けました。甘酒という飲料自体にも脚光が集まり、夏場などは“飲む点滴”と呼ばれて大ヒットしました。
ただその需要に供給が追いついていない状況でしたので今年3月、魚沼醸造という世界最大級の米こうじ、糀甘酒の工場を水の良い新潟県は魚沼に設立しました。投資額は83億円です。この魚沼醸造で良質なこうじ生産にさらに力を入れていきます。
さらに現在、みそ、こうじに続く“第三の矢”として大豆のお肉も手がけています。この大豆のお肉、「ダイズラボ」シリーズを出したのも、我々が大豆の目利きであるのに加えて、先に触れたような、脱・動物性たんぱく質の潮流が日本にやって来ることを直感したからです。
これまでの大豆のお肉というと、ハンバーグのような加工食品に仕立てることが多かったのですが、「ダイズラボ」シリーズは違います。ご家庭でアレンジしやすいよう、まず料理素材として提供し始め、大豆本来の味を生かすべくこだわっています。
【次ページ】イノベーションを生む、マルコメの自律分散型組織とは
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