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  • 2019/07/12 掲載

食品ロス対策は“食育”から?家庭ごみの約37%はまだ食べられる

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まだ食べられるのに捨てられる「食品ロス」。国内では年に643万トンの食品ロスが発生し、352万トンは事業者から、291万トンは家庭から発生する。しかもこの291万トンは、家庭から出る廃棄物全体の36.9%を占める。この状況を受けてか、企業が行う食育支援でも食品ロスがテーマとして扱われるようになってきた。今年の5月31日には通称「食品ロス削減推進法」も公布され「国民運動として」食品ロス問題に取り組むことが明言されたが、この先日本は変わっていけるのだろうか。
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特に家庭からの食品ロスに、“食育”の効果が望まれる
(Photo/Getty Images)


食品ロスは「事業系」ばかりを責められない

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 5月31日、通称「食品ロス削減推進法」が公布された。同法は超党派の議員立法として通常国会に上程され、24日の参議院本会議で「食品ロスの削減の推進に関する法律」として全会一致で可決・成立した。

 公布後6カ月以内に施行されるが、「食品ロス削減の日」である10月30日までに新法が施行される可能性が高い。今年はこの日から徳島市で「第3回食品ロス削減全国大会」が開催される。

 この法律では、政府に対しては食品ロス削減推進の基本方針を定めるよう義務づけ、都道府県、市町村に対しては削減推進計画を策定する努力義務を課す。企業に対しては国や自治体の施策に協力するように求め、消費者に対しては食品の買い方を工夫するなど自主的に削減に取り組むように求めている。そのように、政府、自治体、企業、消費者が一体となった国民運動として、食品ロス問題の解決に取り組むのが立法の趣旨である。

 農林水産省が2019年4月12日に公表した「食品ロス量」の平成28年度(2016年度)推計値によると、国内では年間643万トンの食品ロスが発生し、東京ドーム5杯分に相当する量がある。その中で「事業系」は352万トンで、「家庭系」は291万トンとなっている。5年さかのぼると、食品ロス量全体はほぼ横ばいで推移し、事業系は2012年度の332万トンからやや増え、家庭系は2012年度の312万トンからやや減っている。

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国内の食品ロス量の推移

 農林水産省の平成28年度推計値によると、「食品リサイクル法」で定められた事業系の「食品廃棄物等」は、処分前に脱水や乾燥などで減量させる分が175万トン、再利用される有価物(大豆ミール、ふすまなど)が1023万トン、ごみとして処分する事業系廃棄物が772万トンで、合計1970万トンとなっている。

 その中で、売れ残り、返品、規格外、食べ残しなどで廃棄される「可食部分」の食品ロスは352万トンで、全体の17.9%となっている。事業者は事業者なりに、リサイクルに努力して食品ロス率を下げてきた。

 事業系といえば、製造年月日から賞味期限までの日数が3分の1を切ったらメーカーに返品される小売業の慣習「3分の1ルール」がメディアでやり玉に挙がるなど、とかく食品メーカー、小売、外食など事業系(企業)が敵視されている傾向があるが、家庭の責任も大きい。

 家庭系の廃棄物は国内で789万トンあり、そのうち食事の食べ残し、果物の皮むきや魚をさばいた時などの過剰除去、調理の失敗、冷蔵庫からゴミ捨て場に直行する直接廃棄など、食品ロスになる「可食部分」は291万トンで、廃棄物に占める割合は36.9%になる。家庭の廃棄物の3分の1以上は、食べられるはずなのに捨ててしまう食品ロスというわけだ。

 「レモンなどかんきつ類の皮はマーマレードに」「さばいた魚のかぶと煮をさかなにひれ酒を飲むべし」とまでは言わないが、一般家庭でも食品ロスを減らして生ゴミを減らす努力ができる余地は十分ある。そのあたり、昔の主婦は食べ物をできるだけ捨てないように上手にやってきた。食品ロス低減には「おばあちゃんの知恵」が役に立つかもしれない。

食品ロス対策では「食育」が大きなテーマ

 食品ロスを減らすことは、健康と栄養、食習慣、調理法、食文化、食事のマナー、食糧の生産や輸出入、食の安全・安心など幅広い分野を含んだ「食育」でも、重要なテーマになっている。

 「食育」とは「様々な経験を通じて『食』に関する知識と『食』を選択する力を習得し、健全な食生活を実践することができる人間を育てる」(食育基本法前文)と定義されている。これを国民運動として推進すべく、現在は「第3次食育推進基本計画」(2016年度~2020年度)が実施されている。その5つの重点課題の1つが「食の循環や環境を意識した食育の推進」で、学校給食などを通じ子どもたちに食品ロスの問題を考えさせている。

 6月4日、農林水産省が発表した「平成30年度食育白書」では、第5章で食品ロスの問題と取り組みを取り上げている。たとえば環境省は、消費者が日々発生する食品ロス量を日記形式で記録できる「7日でチャレンジ!食品ロスダイアリー」を配布している。横浜市は食べ残しを減らす取り組みに賛同する飲食店を「食べきり協力店」として登録する制度を実施し、その数は2018年中に800店を超えている。

 2018年10月の農林水産省の「食品ロス削減啓発月間」では、関東ではイトーヨーカ堂、マルエツ、東急ストアや各生協など小売大手が参加した。イオングループのように、食品ロス対策も兼ねて「即食」と称する総菜の店内イートインを推進している企業もある。

 農林水産省は毎年12月に「食育に関する意識調査」を実施し、翌年春にその報告書を公表している。直近の2018年12月の調査分は2019年3月に公表され、それによると、食育に「関心がある」人は38.9%、「どちらかといえば関心がある」人は37.2%で、合わせて76.0%の人が食育に関心を持っていた。この数値は2014年12月の調査を除けば毎年70%以上をキープし、けっこう高い。

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食育に「関心がある」と回答した比率の推移

 女性よりも男性のほうが関心が薄く、年齢が若いほど関心は薄くなるが、食育は「国民的関心事」に近いと言っても、あながち間違いではないだろう。

 この「食育に関する意識調査」では、食育に関心を持つその理由でも、食生活で力を入れたい食育の内容でも、「食品ロス」に関連した項目が上位に食い込んでいる。

 「食育に関心を持つ理由」を尋ねると、26.6%の人が「大量の食べ残しなど食品廃棄物の問題」を挙げた(複数回答)。これは「生活習慣病の増加」「食生活の乱れ」「子どもの心身の健全な発育」に次ぐ第4位だった。

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食育に関心を持つ理由

 また、「普段の食生活で特に力を入れたい食育の内容」を尋ねると、40.5%の人が「食べ残しや食品の廃棄を削減したい」を挙げた(複数回答)。これは「栄養バランスのとれた食生活を実践したい」「食品の安全性について理解したい」に次ぎ、第3位を占める。

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ふだんの食生活で特に力を入れたい食育の内容

 つまり、食育は国民的関心事に近いが、その中でも食品ロスの問題は上位に食い込むような関心事になっている。食品ロス削減推進法でも食育白書でも「国民運動として取り組む」と言っている政府にとって、そんな意識の高まりはうれしい結果だろう。

 次ページからは、その“食育”の現場で、どのように食品ロスが扱われているのか、企業の取り組みを通じて見ていく。

【次ページ】企業の「食育支援」でも食品ロス問題に注目集まる
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